2014年11月05日

桂小金治こそが、私にとっての「名人」だった




 桂小金治師匠が亡くなったとの報せが届きました。

 川島雄三監督作品の常連俳優だった時代はもとより、『アフタヌーンショー』や『それは秘密です』といったテレビ番組さえもリアルタイムでは知らない私にとって、桂小金治師匠は「落語界の名人」でした。

 初めて小金治師匠の落語を聴いた時の衝撃は今でも忘れられません。『三方一両損』を聴いて、「かつて人気だったというこのタレントはこんなに落語が上手だったのか」、否、「こんなに噺の上手い落語家がいたのか」と驚きました。チャキチャキの江戸弁で繰り広げられるその高座を拝聴して、「小金治師匠の古典落語を聴いてしまったら、もう他の噺家の古典落語は聴けないな」と思ったほどです。

 それからというもの、なかなか眠りに就けない時や心が荒ぶ時には、CDで小金治師匠の落語を聴きながら眠るようになりました(まるでモーツァルト代わり)。小金治師匠の落語CDは現在のところ2枚しかリリースされていませんが(ソニーミュージック/CURELLE RECORDS)、どちらのCDも小金治師匠の魅力を余すところなく伝えています。

 昭和の「落語黄金期」を知らない青き落語好きである私にすれば、小金治師匠こそが同時代を生きる唯一の「名人」でした。たしかに俺は志ん生にも文楽にも間に合わなかったが、小金治には間に合った。あの『大工調べ』の啖呵を俺は生で聴いたんだぞ――。これが、昭和にタイムスリップすることはできないが現代の若手を追うだけの落語ファンにはなれない、私なりの《誇り》だったのです。

 もちろん、小金治師匠のことを「名人」だと捉えているのは私だけではありません。落語評論家としても右の出る者はいない立川談志師匠(2011年没)も、「江戸の風」を持つ落語家として、志ん生・文楽・圓生・三木助・小さんといった昭和の大名人と小金治師匠を並び称しています。そのことはこのブログでも過去に触れた次第です(2011年5月21日)。

 「桂小金治よりも上手い落語家はいない」と広言してしまうほどまでに、私はその話芸に惚れまくりました。小金治師匠こそは、私が間に合った最初で最後の「名人」だったのです。小金治師匠に対する私の評価を他の落語ファンらがどう思うかは知りません。重要なことはただ一つ、小金治師匠の落語に出会えたことは私にとっての財産だということだけです。

 桂小金治師匠のご冥福をお祈りします。
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2014年10月26日

DVD&ブルーレイで楽しもう! 不滅のメル・ブルックス映画13本


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20世紀フォックススタジオに「メル・ブルックス通り」が完成(2014年10月)


「近年再評価されているメル・ブルックス作品だけど、
 一体どの作品から観ればいいのかよく分からない……」。
そんなあなたのために、メル先生の映画作品をまとめてみました。

全作制覇を試みるも良し、お気に入りの一本を観返すも良し。
DVD/ブルーレイソフトご鑑賞の一助となれば幸いです。
(一部DVD化されていない作品もございますのでご注意ください。)


 <監督・脚本作品>

1. 『プロデューサーズ』(1968年版) [DVD]
出演:ゼロ・モステル、ジーン・ワイルダー、ケネス・マース
▼最低ミュージカル『ヒトラーの春』で大儲け!? 悪徳と友情が交錯する!



2. 『メル・ブルックスの命がけ!イス取り大合戦』(1970年) [VHSのみ]
出演:ロン・ムーディ、フランク・ランジェラ、ドム・デルイーズ
▼没落貴族&ペテン師がお宝を探し求め… 哀愁誘うドタバタ悲喜劇



3. 『ブレージングサドル』(1974年) [DVD/BD]
出演:クリーヴォン・リトル、ジーン・ワイルダー、ハーヴェイ・コーマン
▼保守的な町に黒人保安官がやって来た! 世紀のハチャメチャ西部劇



4. 『ヤング・フランケンシュタイン』(1974年) [DVD/BD]
出演:ジーン・ワイルダー、ピーター・ボイル、マデリーン・カーン
▼フランケンシュタイン博士の孫が怪物を復活… 笑いと恐怖の核融合だ!



5. 『メル・ブルックスのサイレント・ムービー』(1976年) [DVD]
出演:メル・ブルックス、マーティ・フェルドマン、ドム・デルイーズ
▼豪華ハリウッドスター競演! 無声喜劇のギャグがカラーで甦る!



6. 『メル・ブルックス 新サイコ』(1977年) [DVD]
出演:メル・ブルックス、マデリーン・カーン、クロリス・リーチマン
▼巨匠ヒッチコックに愛を込めて… 笑いすぎによるめまいに注意!



7. 『メル・ブルックス 珍説世界史PARTI』(1981年) [DVD/BD]
出演:メル・ブルックス、ドム・デルイーズ、マデリーン・カーン
▼史実はこんなに面白かった! 世界史の裏側を暴く歴史絵巻



8. 『スペースボール』(1987年) [DVD/BD]
出演:ビル・プルマン、ジョン・キャンディ、リック・モラニス
▼宇宙の平和は俺が守る! SFX満載のおバカ版『スター・ウォーズ』



9. 『メル・ブルックス 逆転人生』(1991年) [DVD]
出演:メル・ブルックス、レスリー・アン・ウォーレン、ジェフリー・タンバー
▼大富豪がホームレスに転落!? それでも“人生は捨てたもんじゃない”



10. 『ロビン・フッド 伝説のタイツ男』(1993年) [VHSのみ]
出演:ケイリー・エルウィス、リチャード・ルイス、エイミー・ヤスベック
▼打ち倒せ暴君! 解き放て貞操帯! 愛と勇気と下ネタの冒険活劇



11. 『レスリー・ニールセンのドラキュラ』(1995年) [VHSのみ]
出演:レスリー・ニールセン、メル・ブルックス、ピーター・マクニコル
▼パロディ映画W巨頭が初タッグ! 迷えるドラキュラを成敗せよ!




 <特筆作品>

12. 『メル・ブルックスの大脱走』(1983年) [DVD]
監督:アラン・ジョンソン / 製作:メル・ブルックス
出演:メル・ブルックス、アン・バンクロフト、チャールズ・ダーニング
▼ルビッチの名作をリメイク… ナチスに立ち向かった一座の物語



13. 『プロデューサーズ』(2005年版) [DVD/BD]
監督:スーザン・ストローマン / 脚本・作詞・作曲:メル・ブルックス
出演:ネイサン・レイン、マシュー・ブロデリック、ユマ・サーマン
▼M・ブルックス初監督作を完全ミュージカル化! ゲイのヒトラーが踊る!




メル・ブルックスとその作品に興味を持った方には、
手前味噌ながら、ぜひこちらのエントリもお読みいただきたい。
私の神様、メル・ブルックス(2011年6月16日)

あなたの Mel Brooks Life が実り豊かなものとなりますように……
シュワルツと共にあらんことを!
May The Schwartz Be With You!
── 『スペースボール』(1987年)
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2014年09月05日

“下ネタの女王”よ、永遠なれ ―追悼:ジョーン・リヴァース


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Joan Rivers: 1933-2014


毒舌スタンダップコメディアンの先駆者であり、
多くの人に呆れられながらも愛された
ジョーン・リヴァース(Joan Rivers)がこの世を去りました。

彼女の人生は実に波乱に満ちたものでした。
辛口コメディアンであるという「ハンディ」を差し引いても、
彼女ほど他人に迷惑をかけ続けた人物はそうそういないでしょう。

ハリウッドセレブを、権力者を、テレビ局を、制作会社を、
劇場を、スタッフを、客を、芸人仲間を、家族を、
そして自分自身を激しく攻撃し、からかい続けた81年の生涯でした。



私が彼女を尊敬しているのは、彼女が
「他人に迷惑をかけるキャラクター」を演じていたからではなく、
ナチュラルに他人に迷惑をかけ続けていたからです
(……なんて書くとよっぽどの悪人のように思われるだろうけど。)

自分の意志や欲望に正直に生きた彼女は、
いわば、「ありのままの姿」を世間に曝け出し続けた
「下ネタの女王」だったと言えます。
彼女がトラブルメーカーの役を担わされたのは歴史の必然でした。

私が彼女の存在を知ったのがいつだったかは憶えていません。
しかし、彼女が私にとってのアイドルであり、お手本であり、
反面教師であり、尊敬する存在であったことだけは確かな事実です。
私は彼女の存在に励まされ、感化され、勇気付けられてきたのです。

彼女は、死を選ぶよりも「生き地獄」を選ぶほうが大変であること、
そして、「生き地獄」の中で生きることは
たしかに大変ではあるが、見方を変えれば面白くもなることを、
その波乱万丈の生涯を通して私に教えてくれました。
もしも彼女の存在を知らないままだったら、私は、
「不幸」や「不運」をネガティヴに捉えたままだったかもしれません。



ジョーン・リヴァースという人間の実像については、
全米で話題になった『Joan Rivers: A Piece of Work』(2010年)
というドキュメンタリー映画を観るとよく理解できます。
YouTubeで日本語字幕版がリリースされているので
(『ジョアン・リバース 〜75歳の女下ネタ芸人 カムバックへの戦い!〜』)、
笑いに関心を持つ人にはぜひ観ていただきたいです。

全編のレンタル・購入はこちらから



ジョーンは先月28日、声帯手術を受けている最中に呼吸停止し、
近くのマウントサイナイ病院に緊急搬送されました。
以後、生命維持装置につながれて生命を保っていましたが、
二度と意識を取り戻すことはなく、4日にこの世を去りました。

トラブルメーカーだった彼女らしい最期だとも言えますが、
一つだけ彼女らしくなかったのは、息を吹き返して舞台に復帰し、
今度の災難をスタンダップコメディのネタにしなかったことです。
彼女にはカムバックしてもらい、声帯手術の執刀医を、
そして、昏睡状態になった自分自身を笑い者にしてほしかった。
(もちろん、そんなことを故人の死後に願うのはルール違反ですが。)

彼女を愛する者の特権として、いつでも過激だったコメディアン、
ジョーン・リヴァースに別れの言葉を吐かせてください。
「あの日、声帯手術を受けていたというのは嘘で、
 本当は999回目の整形手術を受けていたんでしょう?」。
笑いと現実と愛のために生きた一人の女性に、感謝を込めて――。


★ジョーン・リヴァース 動画&写真館はこちら★
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