2016年08月13日

噺家生活65周年! “蘇生”を繰り返す歌丸の『江島屋怪談』


今日は、国立演芸場 8月中席 へ行ってきました。
主任は、桂歌丸師匠。

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 <本日の番組>

開口一番:(前座) 古今亭今いち 『初天神』
歌謡漫談:東京ボーイズ
落語:(交互) 春風亭柳若 『殿様団子』
落語:(交互) 桂歌助 『代り目』
落語:(交互) 桂歌春 『たがや』
落語:(交互) 春風亭昇太 『リストラの宴』

 〜仲入り〜

座談:歌丸 円楽 歌春 昇太 まねき猫
落語:(交互) 三遊亭円楽 『欠伸指南』
動物ものまね:江戸家まねき猫
落語:(主任) 桂歌丸 『鏡ヶ池操松影より 江島屋怪談』



★今いち 『初天神』
開口一番は今輔門下の今いちさん。
芸名を名乗って笑いを獲り、「今が私のピークです」。
新作風味が随所で滲む『初天神』を飴→団子まで。

★東京ボーイズ
謎かけ(錦織→内村→ゲスの極み→EUなど)を経て、
「海の歌」「長良川の歌」などの自作曲コーナー。
そして、鉄板の『ラブユー東京』『よせばいいのに』
『長崎は今日も〜』『中の島ブルース』で大フィナーレ。

★柳若 『殿様団子』
「座布団の向こうが全員年上のこともある」と話し、
敬老会のマクラを経て『殿様団子』に入る。
柳若版はマジメな表情で狼狽する“町人”が可笑しい。

★歌助 『代り目』
娘の小噺(「キティ」「稲」)で笑いを得ると、
「幸いにも所帯を持てた」という流れから『代り目』。
“女房”は俥賃をそれなりに時間をかけて手渡した。

★歌春 『たがや』
歌丸一門の出番が続く。
「寄席のシルバーシート」「新国劇の掛け声」などの
マクラを経て、当代円楽師匠も登場する『たがや』へ。
三両一分の解説があったり、結構グロテスクだったり。

★昇太 『リストラの宴』
「富山の志の輔」「静岡の昇太」のネタで爆笑を掴み、
「銅メダルだってすごいじゃないか!」と叫ぶ。
どんな仕事も大変ということで、爆笑『リストラの宴』。
時に座布団を飛び出して笑わせ、年齢を感じさせない。

★座談 -歌丸師を囲んで-
下手からまねき猫(司会)、昇太、歌丸、歌春、円楽。
「本日が70代最後の高座。人生最後ではない」(歌春)。
「噺を教えて。亡くなったらDVDで勉強します」(円楽)。
それぞれが温かみのあるブラックジョークを連発する。
壮絶な病歴(S字結腸など)のお話を伺えば伺うほど、
この師匠は「落語の神様」に生かされているのだと痛感。

★円楽 『欠伸指南』
ゲートボールとの関わりを談志師匠のマネを交えて。
習い事も大切ということで、「喧嘩指南」ののち、
間合いも所作も実に達者な『欠伸指南』を聴かせる。
「つまらない芸人が出た時? それだけは教えられない」。

★まねき猫
挨拶代わりに鶏の鳴きマネ(♂・♀)を披露してから、
“猫八ファミリー”の『チキンソング』をアカペラで歌唱。
持ち時間一杯だったが、「猫のさかり声」を押し込んだ。

★歌丸 『鏡ヶ池操松影より 江島屋怪談』
最高体重50kg、現在36kgの歌丸師匠(釈台なし)。
「小太りぐらいがいいが、ものには限度ある。
 さっきの“猫”はどこの“部屋”から来たんだと思った」。
今や通じなくなった言葉として「イカモノ」に触れ、
江戸時代には粗悪品の友禅も売られていたと解説する。
他の演者の『江島屋』とは異なり、前日潭のくだりを
削除した歌丸師匠の“編集”は見事としか言いようがない。
“老婆”は実に怖ろしく、“金兵衛”は実に小心者――。
照明も効果的に働き、気迫満点、極上の怪談噺となった。



――「桂歌丸噺家生活六十五周年記念公演」と冠せられた今席。
本日は、五代目圓楽一門会から円楽師匠がゲスト出演しました。
仲入り後の座談会では、幻に終わった「横浜年越し公演」や
入院時の看護師とのエピソードが歌丸師匠ご本人の口から語られ、
例年4・8月の興行以上に「プレミアム感」のある興行となりました。

わずか10日前までは「固形物を食べられなかった」(歌春師匠)
ことを考えれば、いくらこの興行への思い入れが強いとはいえ、
歌丸師匠の「蘇生」(円楽師匠)は奇跡的だと言わざるを得ません。
満身創痍でありながらますます精力的に高座を勤める師匠は、
「落語の神様」によって生かされている選ばれし存在なのでしょう。

三遊亭圓朝作『江島屋怪談』を語った歌丸師匠の本日の高座は、
勢いのあるものの方がいい。枯れた芸なんぞなりたくない」と
常々述べてこられた歌丸師匠らしい、気迫のこもった高座でした。
――というかここ数年、年を経れば年を経るほどに
歌丸師匠の「圓朝噺」は凄味を増しているような気がしてならない。


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2016年04月16日

大胆な“編集”と緩急ある話芸… 歌丸の『塩原多助 -出世噺-』


今日は、国立演芸場 4月中席 へ行ってきました。
主任は、桂歌丸師匠。

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 <本日の番組>

開口一番:(前座) 桂竹わ 『初天神』
落語:(代演) 瀧川鯉丸 『寄合酒』
コント:コント山口君と竹田君
落語:三遊亭遊雀 『電話の遊び』
漫才:Wモアモア
落語:雷門助六 『代り目』〜あやつり踊り

 〜仲入り〜

落語:(代演) 桂小南治 『ドクトル』
俗曲:桧山うめ吉
落語:(主任) 桂歌丸 『塩原多助 -出世噺-』



★竹わ 『初天神』
開口一番は竹丸門下の竹わさん。
折り目正しく模範的なさっぱりとした高座。

★鯉丸 『寄合酒』
交互出演組の代演。
スーパーマーケットでの営業ネタなどを経て、
噺そのものの可笑しさを勢いよく表現する。

★コント山口君と竹田君
旅館の主(あるじ)と眠れない客のコント。
笑わせどころでしっかりと笑わせ、
観客(というか私?)に満足感をもたらした。

★遊雀 『電話の遊び』
マクラで歌丸師匠をイジり、
噺の中では鯉丸さんとうめ吉さんをイジる。
「一昔前の新作」をここまで面白くできるのは、
遊雀師匠の感覚が研ぎ澄まされているからだろう。

★Wモアモア
おなじみの団体客ヨイショに始まり、
おなじみの家族ネタや「言い間違い」を。
「熊本出身」の箇所で客席がややどよめいた。

★助六 『代り目』〜あやつり踊り
「話芸」とは言いつつも所作を魅せるところが
助六師匠(伝統的な雷門一門)の特徴。
当然のように、あやつり踊り『かっぽれ』で
新旧寄席ファンが入り混じる客席を湧かせる。

★小南治 『ドクトル』
竹丸師匠の代演。
「私は8月中席のほうが得意」と話しつつ、
イレギュラーながらも大入り袋を客席に見せる。
そして、遊雀師匠に負けじと「一昔前の新作」。
噺の可笑しさを超えてキャラクターが爆発した。

★うめ吉
「本日、初めてお目にかかる気がしません」。
『品川甚句』や『縁でこそあれ』、
『お清しゃもじ』などを経て、春の踊り『夜桜』。

★歌丸 『塩原多助 -出世噺-』
うめ吉さんの「年齢」を多少ネタにしてから、
前回(2015年4月)の続きとなる『出世噺』へ。
圓朝作品はサスペンスな展開が定番だが、
この『出世噺』ではむしろ温かい人情が感じられる。
“多助”が出世していく物語としてではなく、
出世(家を再興)したいと苦しむ物語として――。
「若い内は死を考えがち」という地語りは残し、
江戸に来てからのエピソードは大胆に省略するなど、
今回も「編集者」として才気煥発な高座だった。



――というわけで、久々に拝聴した歌丸師匠の高座で
名作『塩原多助一代記』の後半部分を楽しませていただきました。
恨んだり→殺したり→血が出たりの連続となりがちな
三遊亭圓朝作品にしては珍しく、「因果」が絡んでいるとはいえ、
誰も殺されない『出世噺』はだいぶ落ち着いた物語です。

あらすじだけでは「なんでもない話」と処理されかねませんが、
そこは稀代のストーリーテラー・歌丸師匠のこと。
現代に通用する大胆な「編集」と、緩急のある歯切れよい話芸で、
4月中頃、土曜日の客席に豊かな芸術をもたらしていました。
欲を言うならば、歌丸師匠の「圓朝噺」を今後も聴いていたい……。


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2015年12月16日

オトナたちの“寒くて・暖かい”夜 ―小柳枝の『二番煎じ』


今日は、新宿末廣亭 12月中席 夜の部 へ行ってきました。
主任は、春風亭小柳枝師匠。

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 <昼の部>

落語:(主任) 桂文治 『幽霊の辻』


 <夜の部>

開口一番:(前座) 春風亭昇市 『桃太郎』
落語:(交互) 瀧川鯉八 『なぞ』
バイオリン漫談:マグナム小林
落語:(交互) 春風亭小柳 『新聞記事』
落語:三笑亭可龍 『居候』
歌謡漫談:東京ボーイズ
落語:春風亭昇乃進 『シャレ社長』
落語:三遊亭圓丸 『尻餅』
漫才:(代演) ナイツ
落語:三遊亭笑遊 『寝床』
落語:(代演) 桂小南治 『ん廻し』

 〜お仲入り〜

落語:三笑亭夢丸 『のめる』
太神楽曲芸:翁家喜楽・喜乃
落語:春風亭柳好 『胴斬り』
落語:三遊亭圓輔 『強情灸』
俗曲:桧山うめ吉
落語:(主任) 春風亭小柳枝 『二番煎じ』



★昇市 『桃太郎』
「七番弟子だけど昇市」と自己紹介し、『桃太郎』。
「ピーチ・ピーチ」というクスグリは初めて聴いたような。
二ツ目の風格さえ漂う堂々・朗々とした高座で、
こういう前座さんのことをきっと「有望株」と言うのだろう。

★鯉八 『なぞ』
「『鯉八さんは声がいいですね』と褒められたけど、
 帰り道に本屋に寄ったら……」というマクラを経て、
“なぞ”を求める弟とそれに応える兄が主役の奇妙な噺へ。
弟「……女の性ッ」→兄「不正解」という展開には唖然!

★マグナム小林
『明日があるさ』を弾きながら登場。
「救急車」「コンビニ」「新幹線」「赤ちゃん」を経て、
タップ付きで『暴れん坊将軍』と『天国と地獄』。
――タップの音は相変わらず聴いていて気持ちがいい。

★小柳 『新聞記事』
「客の拍手は天ぷらが揚がった音に似ている」
「楽屋の先輩も新聞を読んでいる……スポーツ紙だけど」
というマクラを振ってから、『新聞記事』に入る。
ネタのほうもテンポよく、愉快・軽快な出来栄えだった。

★可龍 『居候』
「落語のもとは小噺」と語り、「飛行機着水」
「不登校・登校拒否」などの小噺で客のハートを掴む。
“居候川柳”を紹介した後は、『湯屋番』の前半部。
「公衆便所の中で突っ立っている」件の説明が可笑しい。

★東京ボーイズ
「ローラ」「テロ」「ヨーロッパ」などを題材にした
“歌う週刊誌”を経て、おなじみの歌唱タイム。
『長崎は今日も雨だった』『中の島ブルース』のネタは
展開も間合いも知っているのに、何度聴いても面白い。

★昇乃進 『シャレ社長』
「旭化成・宗兄弟の“傾き”」ネタ自体というよりも
「このネタは説明が必要」というセルフフォローに感心。
「落語家だから背負ったことがない」というマクラから、
死語がテーマの新作『シャレ社長』に入って笑いを獲る。

★圓丸 『尻餅』
冒頭で帰った客に触れ、「とりあえず記憶に留めました」。
年の暮れネタ『尻餅』は、女房の「はぁ?」という反応、
「こんなことに知恵が〜」という台詞もキマっていた。
サゲは「今度はちんころ餅を作る」というユニークなもの。

★ナイツ
宮田陽・昇先生との出番交替(昼↔夜)。
地方営業風のツカミ(「新宿はいいところ」)で始まり、
「マシャロス」「破局」などの芸能ネタで一年を振り返る。
「安心してください〜」の真相には腹を抱えて笑った。

★笑遊 『寝床』
まだ高座返し中なのに上がり、さっそく『寝床』。
「左の腕は固定ですよ!」と言葉とアクションで強調し、
「がんもどきの製造法」の件で笑いを獲ったのはさすが。
逆ギレした繁蔵(?)が高座上のマイクを振り上げ、
笑遊師匠が座布団から半分飛び出すという大サービスも。

★小南治 『ん廻し』
談幸師匠の代演。
「この時間に駆け足で『寝床』をやる必要があったのか。
 時間が半端。本人は満足でしょうが」と笑わせてから、
文房具(芯やインク)の登場が嬉しい『ん廻し』へ。
この師匠がやると『ん廻し』も刺激的な噺に生まれ変わる。

★夢丸 『のめる』
仲入り中にアナウンスされた落し物の持ち主に触れたり、
「一番面白かった」と言われた時の話を展開したり。
夢丸師匠の『のめる』は、落ち着きがありながら躍動的で、
登場人物のそれぞれが噺の中で「生きていた」。

★喜楽・喜乃
「五階茶碗」→「輪の取り合い」。
「五階茶碗」では普段通りのバランス芸を見せるものの、
「輪の取り合い」で両名の息が合わず、そのまま下がる。
こういう場面に遭遇できるのも寄席のいいところ。

★柳好 『胴斬り』
すっかりベテランとしての風格が出てきた柳好師匠、
今夜はシュール系古典の『胴斬り』で楽しませてくれた。
「この噺には一つ無理がある」の一言もイヤミにならず、
ほのぼのとした健やかな笑いを客席にもたらしていた。

★圓輔 『強情灸』
「おじいちゃんの匂い」と言ってくるお孫さんは偉い。
その後、奥様の話や「強情湯」の小噺を経て『強情灸』。
繰り広げられる江戸弁がいちいちカッコよかったし、
腕に灸を据えて熱がる件もさっぱりしていて、ザ・江戸前。

★うめ吉
「品川甚句」や「秋はうれしや〜冬はうれしや」を経て、
寄席の踊り「京の四季」秋冬ヴァージョンを踊る。

★小柳枝 『二番煎じ』
「待ってました!」の掛け声に応じ、2種類のネタを披露
(「終わった後に……」&「上がった途端に……」)。
「昔と今では『寒さ』のほどが違う」というお話や
江戸の火事、「百・千・万・本組」の解説を語ってから、
寒さと暖かさを一度に楽しめる落語『二番煎じ』に入った。
『二番煎じ』というと後半部ばかりが注目されがちで、
実際、今夜の高座でも「猪鍋」の件は堪らなかったが、
小柳枝師匠は前半の「見廻り」パートも楽しませてくれる。
この噺には、前半では「寒さ」ゆえの言動の楽しさがあり、
後半では「暖かさ」ゆえの楽しさとドラマがあるのだ。
上下関係の会話とも違う、若い衆の馬鹿っ話とも違う、
いい歳をしたオトナたちの「対等」なやり取りに和まされた。



――今年の師走も、末廣亭で小柳枝師匠を聴くことができました。
今夜のネタ『二番煎じ』は、数ある古典落語の中でも珍しいことに、
役人を除く登場人物全員が最後まで敬語で喋り続けるという噺です。
登場人物たちは「縦」ではなく「横」の関係でつながっていて、
酒と猪鍋で暖まっていくうちにお互いの距離感が縮まっていきます。

今夜の末廣亭も、最初のうちは静かだった客席が次第に盛り上がり、
客と演者の精神的な距離感も少しずつ縮まっていきました。
特にナイツの漫才にはすべての客(もちろん私含む)が笑い転げたし、
その他のあらゆる落語家さんや色物の芸人さんの高座からも
持ち時間の中で務めを果たすという演者の心意気が感じられました。

まあ、笑遊師匠の場合は持ち時間を超過していたわけですが(笑)、
それ込みで、今夜の寄席は完璧な流れを紡ぎ出していたと思います。
繰り返し言われているように、「寄席は一期一会」。
すべての演者が和やか・穏やかながらも充実した高座を展開し、
小柳枝師匠が『二番煎じ』で〆た今夜は、至福の「一期一会」でした。
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