2018年01月03日

これぞ落語のエッセンス! “さらっと上手い”小遊三の『浮世床』


今日は、新宿末廣亭 正月初席 第二部 へ行ってきました。
仲入り前は、三遊亭小遊三師匠。

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 <第二部>

(途中から)
落語:(交互) 三遊亭遊馬
紙切り:林家今丸
講談:(交互) 神田紅 『母里太兵衛』
落語:(交互) 三遊亭春馬 『読書の時間』
コント:(交互) チャーリーカンパニー
落語:(交互) 三笑亭可楽 『イスラムの世界』
漫才:(代演) ナイツ
奇術:(交互) 山上兄弟
落語:(代演) 春風亭昇太 『看板のピン』
落語:三遊亭小遊三 『浮世床』
(途中まで)



★遊馬
整理券310番台のため翔丸さんには間に合わず。
遊馬師匠の高座の途中で入場し、2階席へ上がる。

★今丸
本来ならば花さんとのコンビ出演のはずなのだが、
何らかの事情のため今丸師匠がソロで登場。
今年の干支である「犬」を切り、「客の横顔」で〆る。

★紅 『母里太兵衛』
最近の郷里の若者は「黒田節」を知らないと嘆き、
正月の定番ネタ『母里太兵衛』黒田節由来の一席。
普段よりも短い時間で客の集中を作り上げていた。

★春馬 『読書の時間』
マクラはそこそこに、6代目文枝作『読書の時間』。
初席に集った老若男女の客を万遍なく笑わせ、
教室でのやり取りでサゲる(「エロエロ日記だ!」)。

★チャーリーカンパニー
「安売り鮮魚店」のコントで客のハートを鷲掴み。
やはり初席の客は大いに笑い、過剰なほどに喜ぶ。
ハケる際の菊池先生のトボけた顔が洒落ていた。

★可楽 『イスラムの世界』
引退宣言”も束の間、可楽師匠は高座に上がる。
前座に手を取られて登場し、客を警戒させるも、
いざ喋り始めると笑いと感心をかっさらっていく。
「100歳まで続ければ誰でも人間国宝になれる。
 小三治は上手い。私も50代の頃は上手かった」。
カフィーヤを被るくだりでは大拍手が巻き起こった。

★翔丸
NHK総合テレビの番組で中継があるということで、
翔丸さんが時間調整のための前説役として再登場。
スタンダップコメディ的に自身の小噺で場を繋ぎ、
終盤には昇太師匠が高座に顔を出すハプニングも。

★ナイツ
内海桂子師匠をテーマ(?)とする「将棋」のネタ。
短い時間で伏線を回収していく安定の高座だが、
伏線部もギャグが詰まっているので勢いを感じる。

★山上兄弟
初っ端から「てじなーにゃ」を連発して盛り上げる。
「紐」→「犬のぬいぐるみ」→「ティースくん」。
暁之進さんが普段以上によく動き、トークしていた。

★昇太 『看板のピン』
「すごい拍手でしょ? 事前に頼んでおいたんです」。
初詣のマクラを経て、博打噺の名作『看板のピン』へ。
昇太師匠は若い衆のキャラがニンにハマっているが
(このネタは『マサコ』の古典版であるとさえ感じる)、
“隠居”の凄み方もユニークなので噺に奥行きがある。

★小遊三 『浮世床』
「ここからは中継がない。あってもなくてもよい時間」と
突っぱねながらも、江戸前の古典をしっかり聴かせる。
『浮世床』を「海老床」→「囲碁・将棋」→「本」まで。
物語性ゼロの“なんてことのない”ネタでありながらも、
これこそが落語のエッセンス(本質)だと思わせられる。
小遊三師匠ならではの“さらっと上手い”高座であった。



──というわけで、新しく始まった本年も、例年のように友人を連れ、
末廣亭の初席(の途中から途中まで)を愉しむことができました。
毎年この「第二部」では歌丸師匠が主任を勤めているのですが、
昨年からは交互出演となり、今年は全日休演が決定しました()。
歌丸師匠の一日も早い(かつ確かなる)快復を願ってやみません。

本日の公演については、可楽師匠の元気な姿にも満悦しましたが、
やはり小遊三師匠の『浮世床』の素晴らしさが思い出されます。
まさか『浮世床』を聴いて感動させられるとは思ってもみなかった。
若手の落語家が挿み込むような奇抜なクスグリがあるわけでも、
「江戸の風」を吹かせてやるという主張性があるわけでもないのに、
そこでは落語の本質を現す“軽い”話芸が繰り広げられていました。


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2017年12月09日

“イスラム頭巾”を被りながら… 9代目可楽 “最後”の高座


今日は、国立演芸場 12月上席 へ行ってきました。
主任は、三笑亭可楽師匠。

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 <本日の番組>

開口一番:(前座) 三遊亭馬ん長 『つる』
落語:(交互) 瀧川鯉斗 『紙入れ』
落語:(交互) 三笑亭可風 『浮世床 -夢-』
落語:(代演) 三笑亭夢花 『四人癖』
漫才:東京丸・京平
落語:雷門助六 『六郷駕籠』

 〜仲入り〜

コント:コント青年団
落語:三笑亭可龍 『四段目』
奇術:松旭斎小天華
落語:(主任) 三笑亭可楽 『イスラムの世界』



★馬ん長 『つる』
開口一番は圓馬門下の馬ん長さん。
声が大きくてよく通る。間はベテランのようにゆったりと。
「池上彰」はともかくとして、「沖合といったらナンパだろ」
「ヘイ!婆さん」など初めて耳にするクスグリも多かった。

★鯉斗 『紙入れ』
「義眼の男」「3人の狩人」の小噺で客を“テイスティング”。
おかみさんが艶っぽく、新吉は終始震えているなど、
鯉斗版『紙入れ』は登場人物のキャラクターが立っている。
「それだとただ逃げただけになる。これが俺の誠意だ!」。

★可風 『浮世床 -夢-』
師匠から「芸人は売れるかゴミかだ」と言われたと語り、
「今日はそんな師匠に教わったわけでも何でもない噺を」。
可風師匠の『浮世床』はとにかくテンポが端麗である。
「小便の余りで『後輩をビール瓶で殴っては〜』と書いた」。

★夢花 『四人癖』
圓丸師匠の代演かつ出番交替(⇔可龍師匠)。
米丸師匠が『徹子の部屋』に出演した際の様子を紹介し、
「米丸師匠の生の高座は早めに聴きに行ってください!」。
「999円」など“痒いところに手が届く”クスグリが心嬉しい。

★京丸・京平
オレンジのスーツ&ネクタイで登場の京丸先生、
「盛り上がらないなあ。昨日の客のほうがよかったなあ」。
「50万円を拾って交番に届けた」というネタのあと、
おなじみの「新婚旅行」→「お殿様の東京観光」で締める。

★助六 『六郷駕籠』
「歌丸師匠と自分が向かい合わせで着替えたら鏡のよう」
「高知行の機内で円楽さんに会った」というマクラを経て、
一般的には『蜘蛛駕籠』の前半部とされる『六郷駕籠』へ。
“達者”と評するにふさわしい、安心感のある高座だった。

★コント青年団
クイツキはコント青年団の「四菱銀行員と中小企業社長」。
「消費者金融が貸してくれないから仕方なくここに来た」
「『陸王』ならすぐ貸してくれるのに!」などギャグが豊富で、
一瞬たりとも客の集中を途切れさせない。

★可龍 『四段目』
学校寄席(「佐々木ィ」)のマクラで客の笑いを獲ったのち、
ある意味では師走のネタだと称える『四段目』に入る。
可龍師匠は芝居の再現の件をしっかりと魅せてくれるので、
その“本格さ”との落差により、終盤の展開も素直に笑える。

★小天華
鮮やかな照明を浴びながら次々とマジックを披露していく。
「リング」→「紐」→トークコーナーで「紐で首絞め」講座。
「下からマイクが出るのにはタネも仕掛けもありません」。
カラフルな紐の滝を見せ、終わりに孔雀のスカーフを現す。

★可楽 『イスラムの世界』
板付き、黒紋付姿で登場。傍らにはペットボトルの水が。
「(小天華は)ずいぶん誤魔化したね。歳も誤魔化してる」。
「明日で引退する。間違えるので落語はやらない」と話し、
「アメリカと南アフリカ以外は仕事で行った」という思い出話へ。
各国の「ありがとう」を言い立て(十数個はあっただろうか)、
米大統領による“エルサレム首都認定”のニュースに触れる。
イスラム教のカフィーヤと付け髭を着用して拍手を得るが、
「こんなのは芸でもなんでもないんだから拍手はいらない」。
先日亡くなった染之助師匠から教わった篠笛を吹いたのち、
「昔はもっと上手く吹けたんだけどな」と強がってみせる。
「能や狂言は鎌倉時代から続くが、落語はせいぜい250年。
“古典”ではなく“旧作”落語と呼ぶべき」との論には納得。
そして、江戸落語は初代可楽が発祥だという歴史を紹介し、
「さっき上がった可龍を10代目可楽にすることに決めている。
本人が嫌なら駄目だが、嫌とは言わないだろう」と宣言した。
「明日で落語家を廃業」と何度か強調していた可楽師匠だが、
その間合いや言葉選びは的確で、客席を大いに沸かした。



──というわけで、今年も残すところあと3週間となり、寒さが厳しくなる中、
本日は我が敬愛する可楽師匠の主任興行を愉しむことができました。
可楽師匠はこの芝居をもって落語家を「廃業」すると説明していましたが、
傍らの水を飲む際に「これは酒じゃありませんから」と笑いを獲ったり、
客の反応を察知してワードを選ぶなど、依然として“現役感”は強いまま。

「若手の頃には“赤線”に通った。今の若いのはそれができないから……」
という話をできるのは今日の寄席では可楽師匠ぐらいなものだし、
私などは可楽師匠が高座に座っていてくれるだけでいいと思うのですが、
師匠が引退を匂わす理由は「落語ができなくなった」ためなのでしょうから、
「いてくれるだけで」というのは私の我が侭にすぎないのかもしれません。

可楽師匠の高座が本当にこの芝居で“見納め”“聴き納め”になるのかは
私には分かりませんが(実際にはそうならないだろうと思っていますが)、
いずれにせよ、意地っ張りで強がりで(少なくともそういうスタイルで)、
それでいて観客に対してとても親切な可楽師匠のことが私は大好きです。
結局のところ、私は落語というよりも落語家を聴きに行っているのですね。


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 <追記>
12月中旬現在、可楽師匠は池袋演芸場の12月中席、
新宿末廣亭の正月初席、国立演芸場の正月初席に顔付けされています。
私たちはどうやら来年も可楽師匠の高座を拝見することができそうです!
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2017年08月13日

81歳の誕生日企画も! “脂がノる”歌丸の『お露新三郎 出逢い』


今日は、国立演芸場 8月中席 へ行ってきました。
主任は、桂歌丸師匠。

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 <本日の番組>

開口一番:(前座) 三遊亭遊七 『道灌』
落語:(交互) 桂夏丸 『代書屋』
落語:(交互) 三遊亭遊雀 『堪忍袋』
落語:(交互) 桂文治 『源平盛衰記 -木曽義仲-』
コント:コント山口君と竹田君
落語:(交互) 三遊亭円楽 『読書の時間』

 〜仲入り〜

落語:(交互) 桂小南治 『ドクトル』
動物ものまね:江戸家まねき猫
落語:(主任) 桂歌丸 『語り直して牡丹灯籠 -お露新三郎 出逢い-』



★遊七 『道灌』
開口一番は遊之介門下の遊七さん。
女性ならではの温かみある口調で『道灌』を乗り切る。
サゲに至るまでの言葉の畳みかけがスルッとしていた。

★夏丸 『代書屋』
最近声をかけられるようになったというマクラを経て、
ケン×ッキーフライドチキンの名も飛び出す『代書屋』。
「異常性行為のCD販売? DVDならまだ分かるが……」。
鉦が鳴らされる中、『高校三年生』を三番まで歌った。

★遊雀 『堪忍袋』
先ほど袖で鉦を鳴らしたのは円楽師匠だとネタばらし。
「それにしても夏丸ちゃんも強情だったね」と言うと、
今度は夏丸さんが遊雀師匠めがけて袖から鐘を鳴らす。
“ハプニング”後は、爆笑必至の『堪忍袋』をサゲまで。

★文治 『源平盛衰記 -木曽義仲-』
先代文治師匠の十八番に触れてから『源平盛衰記』へ。
新宿、池袋、浅草、そして国立の客層を分析(?)し、
「湯島天神」や「シンドウ3(さん)」などのネタを炸裂する。
「ワニガメは『ダーウィンが来た!』によく出てくる動物」。

★コント山口君と竹田君
先日、『クイズ!脳ベルSHOW』で優勝した山口さん。
本日は「お義父さん」のコントで会場に爆笑をもたらす。
「ホテルに泊まっておいて一線を越えないのは不自然」
「国会議員と市会議員? 県会議員の立場はどうなる?」。

★円楽 『読書の時間』
今年6月に「客員」として晴れて芸協入りした円楽師匠。
本日の午前中はドラマ『桂歌丸』の収録に臨んだという。
「私は昭和のスター役で、小遊三さんは清掃員役だった」。
歌丸師匠の“臨死体験”の話を経て、活字離れに触れ、
『笑点』メンバーの本名も登場の『読書の時間』(文枝作)。
円楽師匠の「オゥ!?」の発声はユニーク&ユーモラスで、
「早退するか?」という教師の台詞もニンにハマっていた。

★小南治 『ドクトル』
小南治師匠の今席の出番は昨年までと違って交互だが、
とりあえず今年の分は「今日の大入り袋」として披露する。
3代目小南を襲名することに触れてから『ドクトル』へ。
「……これもお客さんの『協力』が必要かな?」と繰り返す。

★まねき猫
NHKに「マネキネコ」の意味を勘違いされてしまった!
「ネットの一部で……ごく一部で話題になっております」。
馬と鹿の鳴きまね、初代猫八師匠のレコード紹介を経て、
40年前の名曲『チキンソング』をアカペラで歌い上げる。

★歌丸 『語り直して牡丹灯籠 -お露新三郎 出逢い-』
「1月から6月まで入退院を繰り返した。息を吸えないのは辛い。
入院中は看護師に冗談を言うもんじゃないと思った」と笑わせ、
「筋も人物も入り組んでいる」とことわってから『お露新三郎』。
美しい日本語と明瞭な口跡でシリアスな物語を展開させつつ、
「あいつ、円楽みたいな顔をしているぞ……きっと大悪人だな」
「蕎麦のおつゆもお露に見えた」などのクスグリを適度に挿む。
難解な圓朝噺に心血を注いできた歌丸師匠だからこそ可能な、
長編噺における緊張と緩和の絶妙なバランスのとり方である。
「(濡れ場を)事細かに語りたいところだが、ここ国立演芸場は
警察署と裁判所に挟まれているので……ご想像にお任せする」
というフレーズを言わせたら、歌丸師匠の右に出る者はいない。

★お誕生日企画
降りた緞帳が再び上がり、マイクを持ったまねき猫先生以下、
出演者総出で歌丸師匠のお誕生日(8月14日)をお祝いする。
「明日は休演なので、今年の誕生日企画はないと思っていた」。
東京ボーイズ先生の伴奏で『ハッピーバースデートゥーユー』。
短パン姿の円楽師匠が不謹慎なギャグで場を和ませたのち、
歌丸師匠が「来年までもつか……」とボヤきつつも、抱負を語る。
「『笑点』の司会は卒業したが、落語はこれからもやり続ける。
特に国立の高座は勤めたい。来年4月は『小間物屋政談』を」。
「東京ボーイズさんは出番もないのに、ありがとうございます」。



―― というわけで、今年の8月も歌丸師匠の“圓朝噺”を愉しめました。
酸素チューブを付けてはいるものの、歌丸師匠は相変わらずカッコよく、
少なくとも高座では昨年までと何も変わらない“気迫”を放っています。
しかもそれに加えて、向かうところ敵なしの“余裕”までもが感じられる。
演目を未だにグレードアップさせ続けている歌丸師匠はやっぱりスゴい。

途中で鳴り物が入るものの(今席では舟を漕ぐくだりで演奏されました)、
『お露新三郎』の一篇はそれほどまで劇的な“怪談噺”ではありません。
だからこそ語り部としての演者の腕前が如実に問われることになりますが、
歌丸師匠は観客を惹きつけてやまない充実の高座を提供してくれました。
まさに歌丸師匠こそは、“いま”、最高に脂がノッている落語家なのです。


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