2019年02月16日

仲入り前にハプニングも! “いやらしくない”菊丸の『短命』


今日は、鈴本演芸場 2月中席 昼の部 へ行ってきました。
主任は、古今亭菊丸師匠。

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 <本日の番組>

開口一番:(前座) 春風亭きいち 『道具屋』
落語:(交互) 古今亭志ん松 『真田小僧』
ものまね:(代演) 江戸家小猫
落語:(二ツ目昇進) 金原亭駒六改メ 金原亭馬太郎 『鮑のし』
落語:春風亭一之輔 『狸札』
奇術:マギー隆司
落語:桂文楽 『替り目』
落語:五明樓玉の輔 『財前五郎』
漫才:ロケット団
落語:(代演) 柳家小せん 『ふぐ鍋』

 〜仲入り〜

ギター漫談:ペペ桜井
落語:古今亭菊太楼 『長短』
落語:春風亭一朝 『芝居の喧嘩』
落語:(代演) 柳家はん治 『ぼやき酒屋』
紙切り:林家二楽
落語:(主任) 古今亭菊丸 『短命』



★きいち 『道具屋』
開口一番は一之輔門下のきいちさん。
「儲けで“カブ”を買おう。そして“カブ”を漬けよう」。
“強弱”もリズムも快し。いま最も優れた前座だろう。

★志ん松 『真田小僧』
今席で馬太郎さんが二ツ目に昇進すると紹介し、
二ツ目と違い「前座だと寝癖がついていたりする」。
『真田小僧』では父親側が「いくらだ?」と切り出す。

★小猫
やはり馬太郎さんに言及し、鷹→ウグイス→蛙→
羊と山羊→ニワトリ→アルパカ→フクロテナガザル。
トークも絶好調で、超満員の客席を湧かせていた。

★馬太郎 『鮑のし』
黒紋付で登場、やや緊張した面持ちで『鮑のし』。
とぼけた優しさが滲むが、フニャフニャではない。
噺のあとは、鉢巻をあきらめて『かっぽれ』を踊る。

★一之輔 『狸札』
「寄席は好い。『入場料分やれ』と言うのもいない」。
本来は仲入り前の出番だが早めの時間に上がる。
『浦島太郎』『鶴の恩返し』をイジってみせたのち、
扇子と手ぬぐい(茶色)を可愛らしく使って『狸札』。
「お釣りは要らない。もらうと罰が当たる気がする」。

★隆司
ハンカチ→カードの目→ボール&色封筒トランプ。
“小市民”感漂う低姿勢トークがいちいち面白い。
こんなに惹き付ける奇術師は世津子先生以来か。

★文楽 『替り目』
落語の単語は通じないという普段のマクラののち、
“顔芸”をも交えたダイナミックな『替り目』へ。
サゲ付近では“亭主”はさりげなく目を瞑っている。

★玉の輔 『財前五郎』
おなじみの漫談で持ち時間半分を消化してから、
“若林クン”が女性だと気付きにくい『財前五郎』。
とりあえずサゲのスマートなキメ方には救われる。

★ロケット団
四字熟語(「桜田大臣」ほか)で客のハートを掴み、
“嵐”の活動休止や“純烈”、渋谷のハロウィン、
最後は山形弁のネタで観客を爆笑の渦へと包む。

★小せん 『ふぐ鍋』
はん治師匠が仲入り前代演のはずだったが──
「自宅に電話をかけたらはん治師匠が出たそうで、
黒門亭の出番を終えたばかりの私が呼ばれた」。
黒門亭では『盃の殿様』をネタ出ししていたため、
普段はあまり穿かないという袴姿のまま高座へ。
本当に慌てて駆けつけたらしく汗をかいていたが、
それさえ笑いに変えて客席をより一層盛り上げる。
小せん版『ふぐ鍋』は登場人物の関係性が明快で
(「息子の就職の折にはお世話になりました」)、
問題は“旦那”の心持ちなのだと強調されていた。

★ペペ桜井
“セキトリ”の降車駅をなぜか横浜駅と間違えるも、
「季節の変わり目だからね〜!」(というネタ?)。
『ゴッドファーザー 愛のテーマ』が渋格好よかった。

★菊太楼 『長短』
これといったマクラは語らずに『長短』をサゲまで。
気が長い男は饅頭のどちら側を食べるか悩むが、
会話は割とスムーズで、噺は間延びせずすっきり。

★一朝 『芝居の喧嘩』
「噺は途中で終えず、最後までやってもらいたい」。
サゲの類を振ってから、江戸の空気を愉しむ噺へ。
「目の悪いおふくろが……」「それは『たがや』!」。

★はん治 『ぼやき酒屋』
バツが悪そうに「色々と事情がございまして……」。
菊太楼・一朝師匠の時間の短かった理由が判明、
仲入り前代演のはん治師匠が遅れてやってきた。
さすがはベテラン、十八番で“信頼”を取り戻す。
「この店は初めて。『しょうゆデ“ス”』かもしれない」。

★二楽
挨拶代わりに一枚切り上げ、「ブルーインパルス」
→「春を待つ猫」を堅調なおしゃべりとともに。
世の中には紙をもらうのに必死なお客もいるらしく。

★菊丸 『短命』
菊丸師匠の羽織の紐は実は左右で色が異なっている。
「仲間内でやる者は少ないが、自分は前座の時から
『違う色で組み合わせればいいのにな』と思っていた」。
“作業着”(本日は緑)には色気も大切だということで
「後家」の小噺を経て(携帯着信音も笑いに変えつつ)、
“職人”と“ご隠居”の関係性が絶妙な塩梅の『短命』へ。
「ああ、そういうことだと“短命”だと昔から言うな……」。
確かに艶笑噺としての要素を内容に含んでいながら、
菊丸版『短命』の“ご隠居”はちっともいやらしさがない。
あくまでも「どうして分からないのかな」的態度を貫き、
だからこそ二人のやり取りの愉しさが奥深く活きてくる。
もちろん“職人”と女房のやり取りでは大いに笑わせて、
個人的には最も馴染みやすい演出の『短命』であった。



──というわけで本日は、文字どおり“大入り満員”の鈴本演芸場で、
古今亭菊丸師匠の『短命』をしっかりと愉しませていただきました。
ほんと、菊丸師匠の話芸に接すると古典落語をもっと好きになる。
結局は好みだろうが、その充実した高座には毎度惚れ惚れします。

本日は“代演の代演” “遅れてきた代演”といったハプニングもあり、
これこそが寄席の醍醐味だと久しぶりにワクワクもさせられました。
本日のマクラで一之輔師匠もチラッと示唆していたけれども、
その場を(ある意味で“受け身”で)愉しむ余裕を持ちたいものです。
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2019年01月04日

“歌丸愛”を散りばめながら… 円楽“代バネ”の末廣亭初席'19


今日は、新宿末廣亭 正月初席 第二部 へ行ってきました。
代バネは、三遊亭円楽師匠。

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 <本日の番組>

開口一番:(前座) 桂伸び太 『甘酒売り』
落語:(交互) 橘ノ双葉 『魚根問』
落語:(交互) 春風亭柏枝
漫才:(交互) 東京丸・京平
落語:(交互) 三遊亭圓雀 『桃太郎』
落語:(交互) 桂竹丸 『台湾猿』
漫談:(交互) 新山真理 『芸協と落協』
落語:(交互) 桂伸治 『鰻のかぎ賃』
落語:(交互) 三笑亭夢太朗 『酔っ払いの親子』
俗曲:(交互) 桧山うめ吉
落語:三遊亭小遊三 『羽団扇』

 〜仲入り〜

落語:(交互) 三遊亭遊喜 『冷蔵庫の男』
講談:(交互) 神田紫 『山内一豊の妻 -出世の馬揃え-』
落語:(交互) 桂枝太郎 『松山鏡』
紙切り:(交互) 林家花
落語:(交互) 桂富丸 『飛行少年』
落語:(交互) 三笑亭茶楽 『紙入れ』
江戸売り声:(交互) 宮田章司
落語:桂米助 『長嶋茂雄伝』
落語:(交互) 春風亭柳橋 『金明竹』
太神楽曲芸:翁家喜楽・喜乃
落語:(交互・代バネ) 三遊亭円楽 『天国の名人』



★伸び太 『甘酒売り』
今年の正月初席第二部は一階席で開演前から聴けた。
少し変わりダネの芸名だが、「どうぞ笑ってください」。
身体の動きも奇特な、“キャラ立ち”した前座さんである。

★双葉 『魚根問』
今年(2019年)真打ち昇進ということで拍手が起こる。
「披露目、五輪、万博……今年から日本は上り調子に」。
客の“察し”を活かしつつの『やかん』序章=『酒根問』。

★柏枝
黒紋付きで登場し、本日は寄席の踊り『どうぞ叶えて』。
まずは少女の姿で踊ってみせて、次にお婆さんVer.を。
「馬鹿にしているわけではない。玉川スミ師匠仕込み」。

★京丸・京平
京丸先生が昭和 映画スターの物真似を披露していき、
自身のこれまでの半生を一人滔々と語り続ける。
それを笑顔の京平先生が黙って見届け、「お時間です」。

★圓雀 『桃太郎』
昨年(2018年)9月に春馬改メ6代目襲名の圓雀師匠。
やや早口ながらもテンポよく『桃太郎』を押し通す。
客は噺自体の面白さを十分に愉しめている様子だった。

★竹丸 『台湾猿』
本来は二部主任の竹丸師匠。一気に場を盛り上げる。
お弟子さんや昇吾さんとのエピソードで客席を沸かせ、
扇子のハプニングも笑いに替え、最後は「爆笑小噺」。
桂竹丸──間違いなく寄席の現役爆笑王の一人だろう。

★真理 『芸協と落協』
「小遊三師匠の正式な肩書きは公益社団法人……」。
基本的な内容に変化がなくとも常に高座が快調なのは、
真理先生の演芸人としてのセンス、話芸の成せる業だ。

★伸治 『鰻のかぎ賃』
落ち着いた語り口で客を“伸治色”へと染め上げていく。
東久留米ネタに始まり、ケチな人間の仕草あれこれ。
“鰻のかぎ賃”の小噺をビシッとキメて華麗に下がった。

★夢太朗 『酔っ払いの親子』
除夜の鐘撞きで謎かけを頼まれ、「日産前会長と解く」。
続いて、“飛行機での口論”などの酔っ払い小噺集。
夢太朗師匠は鋭い時事ネタを織り込むのが実に佳い。

★うめ吉
『かんたんごはん』のテーマ曲で客の興味を惹き付け、
『箱入り旦那』と『お清しゃもじ』で情緒を編み出す。
お終いは鈴の音が心地よい“獅子”の踊りでおめでたく。

★小遊三 『羽団扇』
元日に見た初夢では「電車でケネディと乗り合わせ」。
「夢は実は毎晩見るものらしい」という前振りを踏まえ、
まさかこの第二部仲入り前で『羽団扇』を聴けるとは!
うれしくありがたい“江戸の風”に吹かれ、酔いしれる。

★遊喜 『冷蔵庫の男』
「話が上手い人と会った。落語がお好きなようで……」。
仲入り明けのまだザワついた客席を徐々に整えていく。
やきもち妬きもいるということで、“冷蔵庫男”の小噺へ。

★紫 『山内一豊の妻 -出世の馬揃え-』
正月の日本髪姿で現れ、客を“和”の世界に惹き込む。
それなりに持ち時間もしっかり確保されていたため、
淡麗・リズミカルに『出世の馬揃え』の巻を語り上げた。

★枝太郎 『松山鏡』
これといった新年の挨拶はなしで、すぐに『松山鏡』へ。
人物をイジる漫談が調和され、内容が充実している。
本日の主任をもネタにし、「今日が最後の高座だッ!」。

★花
挨拶代わりに「芸者」を切って、客からリクエストをとる。
一度やり直し、合計2枚の「円楽師匠」を切り上げた。
途中で私服姿の円楽師匠が“乱入”するハプニングも。

★富丸 『飛行少年』
「初日の出」で客の心を鷲掴みし、漫談を繰り広げる。
飛行機で海外公演に赴くこともあると切り込み、
「飛行少年」「JALそば」などのギャグで笑わせていた。

★茶楽 『紙入れ』
おなじみの自己紹介群を経て、軽妙洒脱な『紙入れ』。
ところどころ省略しているのだが、それを感じさせない。
軽いのに風格があり、現代的だが江戸の空気が滲む。

★章司
『徹子の部屋』出演時のエピソード(?)などを挿みつつ、
安心感のある喋りと“売り声”芸で客を味方につける。
「まだ声が出るから。声が出るうちは寄席に出続ける」。

★米助 『長嶋茂雄伝』
「新国立競技場は間抜け」「マラソン観覧客は間抜け」
などといったネタののち、長嶋茂雄監督の爆笑譚を。
サービス精神にあふれながらも客を“引っ張って”いく。

★柳橋 『金明竹』
“鼻紙”の小噺で客を和ませてから『金明竹』をフルで。
テンポ早め、前半の細部は刈り込み口演していたが、
かえって噺のエッセンスが引き出されていて快かった。

★喜楽・喜乃
「五階茶碗」の一点勝負で、大いに観客を興奮させる。
前列の青年などは食い入るように見つめていたほど。
初席では客席側にもこのような反応があるから楽しい。

★円楽 『天国の名人』
万雷の拍手を浴び、「待たせた覚えはないんですが」。
「腹から『明けましておめでとう』と言ってるのは私だけ」
「とにもかくにも年が明けた。去年は後半がボロボロ。
“横浜のおじいさん”が向こうへ逝き、自分は肺がんに。
医者は『人ごみはよくない』と。だから明日からは■■。
あ、これはツイートしないで!」と、絶好調に笑いを獲る。
昨夏、自分はおそらく先代に“呼ばれ”ていたのだろう、
もしも自分があのまま天国に行っていたらという設定で、
先代圓楽→談志→圓生各師匠を見事に物真似していく。
「『楽太(当代)は“圓楽”の名をむしろ大きくしてくれた』
──これは私が言ってるんじゃない。先代が言ってる」。
圓生師匠の物真似はどうしても最もウケが薄かったが、
痰を切ったり瞼を押さえたりとマニアックで素晴らしい。
「『7代目の“圓生”はお前が継ぎなさい。頼みましたよ』
──これは私が言ってるんじゃない。圓生師匠が……」。
この漫談風創作落語には歌丸師匠も登場するのだが、
その登場のさせ方に円楽師匠の想いを感じさせられた。
最後は「途中で三本締めは間違い。一本締めをします」
と解説しつつも、勢いのまま結局三本締めしていたが、
果たしてこれは観客参加型のネタなのか、天然なのか。



──というわけで、毎年恒例の“初席”に今年も行くことができました。
末廣亭初席第二部は桂歌丸師匠の主任興行として続いてきたもの。
昨年からは竹丸師匠が主任を勤めていますが、今年は事実上、
円楽師匠との交替制とも言えるスタイルを採っているようです
もしかすると来年以降もこのような顔付けになるのかもしれません。

生前の歌丸師匠が長年勤めてきた「末廣亭初席第二部」の主任を、
代バネという形式ではありながらも円楽師匠が“受け継いだ”──。
両者の結び付きを知る者にとって、この事実自体が感動的ですが、
本日の高座は内容的にも“歌丸愛”が散りばめられたものでした。
笑い、愉しみ、心が少し豊かになった気がする、今年の1月4日です。


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2018年10月03日

“趣味と不自由”について、あるいは小三治の『野ざらし』


今日は、鈴本演芸場 10月上席 夜の部 へ行ってきました。
主任は、柳家小三治師匠。

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 <本日の番組>

開口一番:(前座) 林家彦星 『牛ほめ』
落語:(交互) 柳家小はぜ 『狸鯉』
太神楽曲芸:鏡味仙三郎社中
落語:(交互) 柳家小八 『たけのこ』
落語:(代演) 柳家小里ん 『碁泥』
漫才:ホンキートンク
落語:(代演) 古今亭菊太楼 『幇間腹』
落語:(交互) 柳亭燕路 『粗忽の釘』

 〜仲入り〜

紙切り:林家楽一
落語:柳家小ゑん 『下町せんべい』
俗曲:柳家小菊
落語:(主任) 柳家小三治 『野ざらし』



★彦星 『牛ほめ』
開口一番は正雀門下の彦星さん。
“真摯的”だが、決して肩肘張らない語り口である。
最後までリラックスした調子での『牛ほめ』だった。

★小はぜ 『狸鯉』
一転、朗々とした口調で『狸の鯉』を繰り広げる。
“狸”が「こんばんは」と訪ねてくる件から始まり、
板前修業をした“男”が“狸鯉”を捌き損ねてサゲ。

★仙三郎社中
「傘」→「五階茶碗」→「土瓶」→「撥」→「花笠」。
初見の客もちらほらいて、所々で歓声が沸き上がる。
「撥」をソロで披露した仙成さんは声がとても好い。

★小八 『たけのこ』
“弟子”志願の少年、わんこそばの逸話を経て、
「くさかんむりに旬」と書く食材の噺『たけのこ』へ。
特に“侍”と“可内”の会話が喜多八師匠そっくり。

★小里ん 『碁泥』
一朝師匠の代演。
“王なし将棋”→“碁の助言”の小噺から『碁泥』へ。
小さん師匠を彷彿させる古典落語の愉快な世界。
風格のある話芸──、多幸感でいっぱいになった。

★ホンキートンク
コンビ名紹介から入る各ネタ自体は変わらないが、
連想ゲーム的に続々と話題を展開していく新型。
「オープニング漫才」終了後は2人とも上着を脱ぐ。

★菊太楼 『幇間腹』
菊之丞師匠の代演。
「主任も代演なのではないかと心配だろうが……」。
“猫”は鍼を打たれる直前に“若旦那”を引っ掻く。
“一八”のオモテ↔ウラの言動のギャップが楽しい。

★燕路 『粗忽の釘』
粗忽の小噺を経て、『粗忽の釘』を“風呂敷”から。
とにかく"亭主”のキャラクターがニンに合っている。
ひとしきり笑った後に真顔で落ち着こうとしたりと、
燕路師匠ならではの演出もあって感心させられた。

★楽一
挨拶代りに「横綱の土俵入り」を切り上げてから、
「栗拾い」→「秋の空(蜻蛉)」→「中秋の名月」。
独特なコミュニケーション能力(?)の持ち主である。

★小ゑん 『下町せんべい』
「人間国宝の主任時は入場料を『拝観料』と云う」。
“1小ゑん”のマクラで笑いを獲ってから、新作へ。
「効かないから富山──。効くならファイザー製薬」。

★小菊
“寄席のスタンダードナンバー”「蛙ぴょこぴょこ」
→都々逸「会えば短し」→「外へ出たなら」。
唄い終わるや否や拍手が起こり、嬉しそうな様子。

★小三治 『野ざらし』
題すなら、今宵のマクラは「趣味と不自由」について。
「面白いもの── 自分が好きかどうかが大事であって、
 世間の評判、“情報”に惑わされてはいけない」。
「不自由がなくなった世の中── 合曳を使っているが、
 昔はお葬式で正座する人を見るのが楽しかった。
 痺れを工夫して誤魔化すのが人生の縮図だった」。
高校時代の昼休みの話、切手収集の趣味の話など、
ほかにも有り難いお話・お言葉をたくさん頂戴したが、
あえてここに記さず自分の心で消化することにする。
──そんなマクラなわけで、“釣り見物”の小噺を経て、
だいぶ自然な流れで『野ざらし』の世界へ入っていく。
「ご覧じたかァ?」「ツカツカツカツカ!」「骨ゥ?」など、
珠玉のフレーズはどれも実にさりげなく提示される。
そこには衒いも外連もない。ごく自然体の“噺”がある。
「スチャラカチャン!」の笑顔は実に好い笑顔だった。



── というわけで、本日は久々に小三治師匠の高座に接しました。
ちょうど今の私にとって有り難いお言葉の数々を受け取ったので、
忘れてしまわぬよう、帰りの電車の中でスマホにメモした次第です。
「正しいことは一つではない」とか、「古典も毎日が新作」とかとか。

それにしても、今夜の私はなんという幸福な人間だったのだろう──。
それは単に「マクラが面白かった」「貴重なお話を聞けた」とか、
「装飾が削ぎ落とされた古典落語に感動した」とかいうことではなく、
いや、そういうことでも構わないし、事実そうでもあるのだけれど、
夜の上野の帰り道、とにかく私は心から幸せを感じていたのです。

その幸せはきっと、本日の小三治師匠のお話にも通じる話ですが、
自分自身の中身を確かめられたことに拠る幸せなのだと思います。
私は私でしかなく、例えばある時から落語が好きだったりして、
そんな私って、少なくとも絶対に“私”だよね、というお話なのでした。
posted at 23:59 | Comment(0) | 寄席・演芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする |
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