2017年05月01日

小柳枝が“寄席”に帰ってきた! 約一年ぶりの高座で『やかん』


今日は、池袋演芸場 5月上席 昼の部 へ行ってきました。
主任は、桂文治師匠。

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 <本日の番組>

開口一番:(前座) 三遊亭あんぱん 『牛ほめ』
落語:(交互) 桂鷹治 『あくび指南』
バイオリン漫談:(代演) マグナム小林
落語:瀧川鯉朝 『置き泥』
落語:三遊亭遊吉 『人形買い』
漫才:Wモアモア
落語:(代演) 春風亭柳之助 『転失気』
落語:(交互) 春風亭小柳枝 『やかん』

 〜仲入り〜

ギタレレ漫談:ぴろき
上方落語:(交互) 桂文三 『ちりとてちん』
落語:三遊亭笑遊 『看板のピン』
コント:コントD51
落語:(主任) 桂文治 『擬宝珠』



★あんぱん 『牛ほめ』
開口一番は笑遊門下のあんぱんさん。
芸名に触れ、“馬鹿兄弟”の小噺などを経て『牛ほめ』。
大きな声と鯉八さんを思わせる語り調子がトレードマークだ。

★鷹治 『あくび指南』
「よい天気なのに地下二階へようこそ」と挨拶してから、
“寄席のあくび”などのクスグリを挿んだ『あくび指南』。
人物の演じ分けも立派で、聴いていて安心する高座だった。

★マグナム小林
『明日があるさ』で登場し、「新幹線」などのネタを披露する。
続いて『証城寺の狸囃子』や『暴れん坊将軍』を弾き踊り、
最後は客席参加型の『ラデツキー行進曲』で場を盛り上げる。

★鯉朝 『置き泥』
真打披露興行前売券の告知を“余録”付きで行ってから、
「落語をやらないと割をもらえないから」と『置き泥』へ。
「泥棒○○流のヤツらがこっちの協会にやって来てるんだ!」。

★遊吉 『人形買い』
定番の「雨が降ったら雨が降ったで……」の挨拶を済ませ、
流暢な江戸弁が耳心地のよい『人形買い』へ入った。
途中で切り上げたが、古典落語を聴いたという充実感がある。

★Wモアモア
「雷雨になるので早く帰ったほうがいい」と笑わせ、
「あさり」や「傾聴ボランティア」の“雑談”から「妹の結婚式」。
このベテランコンビの時事的な“雑談”をもっと聴いてみたい。

★柳之助 『転失気』
「出番が交代したがお力落としのないよう……」とことわり、
世の中には強情な人間もいるものだということで『転失気』。
“和尚”は真実を知らされた後も「寺のほうでは……」と言い張る。

★小柳枝 『やかん』
緞帳が下がり、板付き、釈台+椅子ありで小柳枝師匠が登場。
『梅が咲いたか』が弾かれ、「待ってました」の掛け声が飛ぶ。
「まさか自分が脳溢血で倒れることになるとは思わなかった。
 約一年ぶりだが落語をやってみる」と十八番の『やかん』へ。
噺に入ると一段と声量を増し、芸歴52年の風格を感じさせる。
言い立てのくだりでは往時を彷彿とさせる語り口が戻っていた。

★ぴろき
「女性問題を抱えている」というツカミで一気に客を引き寄せ、
おなじみの「娘の友人関係」ネタなどで爆笑をもたらす。
「混浴」→「ヌード劇場」→「有料チャンネル」の3連コンボも。

★文三 『ちりとてちん』
「上方枠」の文三師匠、東京の定席への出演は初めてだという。
先代・文枝師匠から寄席のしきたりを聞かされていたのだとか。
本日、池袋に来る前の学校寄席で一緒だった可龍師匠との
「最高級ポリ」ネタで客のハートを掴み、『ちりとてちん』に入る。
お世辞を言う男のキャラクターが“江戸型”よりも抜群に面白い。
“ちりとてちん”が「長崎名物」と設定されたいきさつにも感心した。

★笑遊 『看板のピン』
すれ違いざまのあんぱんさんを軽く押して「あれは俺の弟子」。
笑遊師匠がやると『看板のピン』も笑いがスプラッシュする。
“膝でバタン”がウケるとそれを3回繰り返す、愛すべき芸人魂。

★コントD51
『課外授業ようこそ先輩』(未遂)のコント。
けんじ師匠が杖でファイルを叩くと、客席からどよめきが。
「半農半芸」の兄弟らしく、田植えの所作で客を唸らせていた。

★文治 『擬宝珠』
「小柳枝師匠が口馴れた『やかん』で復帰するはずだったのに、
 柳之助が『転失気』をやったので“知ったかぶりネタ”がついた」。
病気復帰つながりということで、「トリインフルエンザ」「骨折」
「カキ厳禁」などといった自身の病気・事故ネタをマクラに振る。
「『崇徳院』ではない」「幾代太夫でもなければ高尾太夫でもない」
「そろそろ季節だから『千両みかん』?」などのやりとりを経て、
金物を舐めるのが好きな親子の狂気(?)を描く『擬宝珠』を好演。
「カイダン噺はやらない」文治師匠ならではの満々たる高座だった。



──というわけで、本日はゴールデンウィーク前半の池袋演芸場で、
落語ファンが待ちに待った小柳枝師匠の復帰高座に立ち会いました。
もちろん、病気で倒れる前の姿が完全に戻っているわけではないけれど、
それでも私は小柳枝師匠が寄席に帰ってきたことが何よりも嬉しい。
そう思うのは、私には小柳枝師匠への「思い入れ」があるからでしょう。

考えてみれば、寄席──それも定席──というのは不思議なところで、
客の中には「伝統芸能としての古典落語を聴きたい」という客もいれば、
「あの芸人を聴きたい」という客や「友人に連れて来られた」という客、
「落語に興味はないけど割引券をもらったから来た」という客もいる。
どの客も客であり、「正しい客」もなければ「間違った客」もありません。

今日初めて小柳枝師匠を見た客は、以前の小柳枝師匠を知らないから、
もしかすると小柳枝師匠のことを「声の小さなジイさん」とだけ認識し、
特別な魅力を感じることもなく“切り捨て”ているかもしれない。
しかし私は彼らと同じ高座を見ていても、落語に挑む師匠の姿に感激し、
寄席で再び小柳枝師匠に“会えた”ことを無上の幸せと感じていました。

「私は小柳枝ファンであるからそう感じました」というだけの話ですが、
このような「思い入れ」を創る過程のことを人生というのかもしれません
(相変わらず言うことが大袈裟でお恥ずかしい限りですが……)。
私は「落語家・春風亭小柳枝」に思い入れを抱くような人間でよかったし、
これからも寄席でたくさんの「思い入れ」を創っていきたいと思います。
posted at 23:59 | Comment(0) | TB(0) | 落語・笑い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする |
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