2016年05月11日

なぜ「ベージュ色」は好かれないのか ―ケーシックの大統領選(6)


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▲ 選挙パンフレットにサインするケーシック (2016年3月18日)


 米大統領選の共和党指名争いに参戦していたオハイオ州知事のジョン・ケーシックは、5月4日、指名争いからの撤退を表明しました(詳しくはこちら)。

 すでに撤退した人物の選挙運動を振り返ったところで読者など皆無でしょうが、「故きを温ねて新しきを知る」ということわざもあることだし、もしかしたら世の中には1人や2人は物好きがいるかもしれません。
 というわけで今回は、3月15日のオハイオ州予備選(詳しくはこちら)で勝利した後、ケーシックの選挙戦にどのような出来事が発生していたのか、時系列に沿って回想してみることにします。

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 ◆マイク・レヴィットの支持表明


 3月16日、元ユタ州知事で元保健福祉長官(ジョージ・W・ブッシュ政権)のマイケル・レヴィットがケーシックへの支持を表明しました。
 レヴィットは妻・ジャッキーとの連名の声明の中で、「ケーシック知事はオハイオ州予備選で決定的かつ重大な勝利を収めた。私はケーシック知事とは昔から親交があるが、彼は人々をまとめて物事を実現させていく人物だ。彼ならば本選でヒラリー・クリントンに勝つことができる」と語りました
 かつてレヴィットはミット・ロムニーの陣営で顧問を務めています。2012年大統領選の共和党候補であるロムニーはユタ州が地元で、ユタ州党員集会の投票権を有する党主流派の代表格です。レヴィットがケーシックへの支持を表明したことは、3月22日のユタ州党員集会を控えて、党内の「ロムニー派」がケーシックに接近したことを意味しているように思われました。


 ◆ジム・インホフェの支持表明

 3月16日、オクラホマ州選出の連邦上院議員ジム・インホフェがケーシックへの支持を表明しました。ケーシックの地元・オハイオ州選出のロブ・ポートマンに続き、ケーシックへの支持を表明した現職の上院議員はこれで2人目となります。
 インホフェは1987年から連邦下院議員を4期務め、1994年からは連邦上院選に連続で5回当選しているベテラン議員です。支持表明に際して、インホフェは「大統領選はこれで3名の争いとなったが、ケーシックこそが私の見込んだ男だ。下院議員時代のケーシックは連邦予算の均衡化を導いた。また、軍事委員会の一員としてロナルド・レーガン大統領の国防政策に大きな貢献を果たした」との声明を発表しました


 ◆フロントランナーの「脅迫」


 3月16日、トランプが「もし私が共和党の大統領候補に指名されなかったら、私の支持者によって暴動が起こるだろう」と発言しました。
 もしトランプが指名争いで過半数の代議員を獲得できなかった場合、7月に開催される共和党大会では「ブローカード・コンベンション」と呼ばれる決選投票が実施されます。トランプの代議員数が伸び悩み、クルーズとケーシックが代議員数を着実に上積みすることで、決選投票が現実のものとなる可能性がありました。
 すでに自身の対話集会で暴力沙汰が起きていたトランプとしては、「私が指名されなければ暴動が起こる」発言で共和党内の反トランプ勢力を牽制したつもりだったのでしょうが、この発言はトランプ支持者以外からは顰蹙を買うことになります。ケーシックも、Twitter上で「真のリーダーは暴力ではなく平和的な議論を導くものだ。リーダーシップには責任が伴う」とトランプを批判しました


 ◆「ブローカード・コンベンション」の現実味

 実際にこの時期、党大会での決選投票は現実視され始めていました。共和党内でも「決選投票になれば、穏健派で『クリントンに勝てる候補』であるケーシックが指名されるのではないか」という見方が広まっていました
 もっとも、3月19日時点の獲得代議員数はトランプが673名、クルーズが410名、ケーシックが143名。ケーシックの代議員数はクルーズにも遠く及びません。決選投票で大統領候補が決まることになるとしても、代議員数で3位の候補が1位・2位の候補を押しのけて指名を得るのはバツの悪い展開です。
 元連邦下院議員のトーマス・ピートライ(共和党)も、「指名争いの序盤では保守強硬派のクルーズ氏が支持を得やすい州や、発言力が強い参加者に引っ張られてしまう党員集会を開く州が多かった。この後は西部の州に広がり、秘密投票を行う予備選の州が増えてくる。ケーシック氏が党大会までに、現在2位につけているクルーズ氏を上回る代議員を得られる可能性はあると思う」と観測し、2位であることが指名を得るための「安定条件」であることを示唆していました


 ◆ヒラリーに勝てそうな唯一の候補


 3月17日、ケーシックのスーパーPAC(特別政治活動委員会)が新たなテレビコマーシャルを公開します。オハイオ州予備選での勝利に触れた上で、ケーシックこそが民主党のヒラリー・クリントンに勝てる唯一の候補だと強調する内容です。
 ケーシックがクリントンの好敵手であることは昨年(2015年)から指摘され(詳しくはこちら)、今年に入ってからもケーシックは度々そのことをアピールしてきました。過激な発言を連発するドナルド・トランプ、保守色の濃厚なテッド・クルーズといった「クセのある」候補とは異なり、ケーシックは「唯一クリントンに勝てそうな共和党候補」として一般的に認知されてきたのです。


 ◆ボブ・ベネットの支持表明

 3月17日、ユタ州選出の前連邦上院議員ボブ・ベネットがケーシックへの支持を表明しました。
 ベネットは声明の中で「私はジョン・F・ケネディ政権の時代から歴代大統領と付き合いがあるが、現在ではケーシックが唯一実力のある大統領候補だ。彼は保守主義と良識的なアイディアに基づき実績を上げてきた」と述べています
 1993年から3期連続で上院議員を務めたベネットは2010年の改選にも出馬を目指していましたが、共和党内の超保守派による「ティーパーティー旋風」に呑み込まれ、共和党内の上院予備選で敗北しました。この時ベネットを打ち負かし、本選でも勝利を収めたティーパーティー系議員のマイク・リーは、大統領選の共和党指名争いではテッド・クルーズを支援しています。
 ケーシックの知己であり、党内では穏健派とされるベネットがケーシックを支持することは不思議なことではありません。しかし、クルーズと競合するケーシックを支持した背景には、「敵の敵は味方」という政界の論理も働いているのでしょう。


 ◆ミット・ロムニーの「戦略投票」


 3月22日のユタ州予備選を4日後に控えた3月18日、反トランプ派の代表格であるミット・ロムニーが「私はユタ州党員集会でクルーズに投票する。ケーシックに投票することはトランプを利する可能性が高い」と宣言しました。ユタ州での世論調査では1位がトランプ、2位がクルーズで、ケーシックがトランプを打ち負かすことは考えられませんでした。
 ロムニーはオハイオ州ではケーシックの対話集会に参加し、「ケーシックには他の候補と違って真の実績がある。アメリカは彼を頼っている」と演説しています(詳しくはこちら)。
 オハイオ州ではケーシックのことを「相棒」と呼んでいたロムニーが、ユタ州ではケーシックを「見捨て」てクルーズへの投票を呼びかける――。本音ではロムニーも、党内の「嫌われ者」であるクルーズを支援したくなどないはずです。なりふり構わぬロムニーの「戦略投票」キャンペーンからは、「トランプには絶対に過半数をとらせたくない」という強い想いが伝わってきます。


 ◆ロムニーを皮肉るコマーシャル


 ロムニーが「クルーズに投票する」と発表した直後、ケーシック陣営はあるコマーシャルを公開しました。
 そのコマーシャルはわずか4日前、オハイオ州予備選前日の3月14日に撮影されたものです。コマーシャルの最後には「偉大な州の偉大な知事、ジョン・ケーシック!」と叫ぶロムニーの音声と、「3月22日の(ユタ州)党員集会ではケーシックに投票を」との字幕が映し出されます。
 これは言わずもがな、オハイオ州でケーシックを応援しておきながらユタ州ではクルーズへの投票を呼びかけたロムニーを皮肉るコマーシャルです。いささか意地の悪い趣向といえますが、コマーシャル自体は明るい仕上がりとなっています。映像や音声にしてもロムニーの演説を再利用しているだけで、ロムニーを直接的に非難しているわけではありません。すべてはロムニーの「自業自得」です。


 ◆「退屈であることは美しい」

 3月21日、アリゾナ州の大手地元紙アリゾナ・リパブリック紙がケーシックへの支持を表明しました。ケーシックはこの大統領選で35紙以上から支持を集め、共和党内では文句なしに「最も新聞社から支持される候補」となっています。
 アリゾナ・リパブリック紙は社説の中でケーシックを「ベージュ色」に喩え、「人々を怯えさせる言説は決してキュートなものではない。政治においては退屈であることこそが美しい」と主張しました
 アリゾナ・リパブリック紙の主張は、政治をエンターテインメント化するトランプの手法を批判している点では他紙の社説と共通しています。しかし同紙はケーシックが地味な候補であることをあえて強調した上で、「ベージュ色」の政治こそが望ましいとの観点から積極的にケーシックを推しました。他の候補よりはマシという理由でケーシックへの消極的な支持を表明してきた他紙とは異なり、アリゾナ・リパブリック紙は一つの政治哲学に基づく前向きな論説を展開したのです。


 ◆判事の死と共和党の反発


 時は前後して2月13日、連邦最高裁判事のアントニン・スカリアが滞在先のテキサス州で急逝しました。睡眠中に亡くなったとみられています。
 合衆国大統領バラク・オバマはさっそく後任人事に取りかかりましたが、最高裁判事を任命するためには上院の承諾が必要です。
 上院で多数を占める共和党の議員たちは「残り任期1年を切った不人気の大統領が新判事を指名するべきではない」として反発し、ケーシックも「新しい判事は新しい大統領の下で選ばれるべきだ」とコメントしていました。共和党にしてみれば、保守派かつ共和党寄りだったスカリアの後任として「オバマ色」の濃いリベラルな人物が指名されることへの警戒感があったのでしょう。


 ◆「ガーランドと面会すべきだ」


 大統領と上院共和党の緊張状態が続く中、3月16日、オバマは、連邦巡回控訴裁裁判長のメリック・ガーランドを新判事に指名すると発表します。
 NBCニュースの世論調査(3月17日〜18日)の結果、アメリカ国民の61%がガーランドの判事就任を支持していることが判明すると、ケーシックは一転して「共和党の上院議員たちはガーランドと面会すべきだ」と主張し始めました。また、自身が大統領に就任した暁には、後任の判事にガーランドを指名することを検討するとも発言しました。
 オバマの支持率とは比べ物にならないほど、米国では「決められない議会」への不信感が定着しています。その後ケーシックは「新しい大統領の下で新しい判事が選ばれるべき」とする姿勢に変化はないと釈明していますが、実際には共和党員のみならず民主党員からの支持も模索し、国民一般を意識してこのような発言をしたのかもしれません。


 ◆副大統領候補になる可能性は


 3月19日、ケーシックはMSNBCの報道番組『ザ・クリス・マシューズ・ショー』に出演し、「どんなことがあってもトランプと手を組むことはない。可能性はゼロだ。あり得ない」と断言しました。
 この指名争いに立候補した当初から、ケーシックは「ランニングメイト(副大統領候補)狙いなのではないか」と噂されてきました。そのことをこれまで幾度となくニュースキャスターから質問され、その度にケーシックは自らが副大統領候補になる意思がないことを明言しています。
 とはいえスイングステート(民主・共和両党の勢力が伯仲する州)の州知事であり、党内では穏健派とされるケーシックは、共和党員以外からは支持率が低いトランプの弱点をカバーできる存在です。本選を想定したあらゆる世論調査でトランプの支持率がクリントンの支持率に劣っているのとは対照的に、ケーシックの支持率はあらゆる世論調査でクリントンに優っています。トランプにとって、ケーシックは最良のランニングメイト候補の一人なのです。


 ◆後援者は「反トランプ」勢力

 しかし選挙戦が長期化するにつれ、ケーシックが対立候補のランニングメイトに就く可能性は激しく低下しました。いくらケーシックが他候補の批判を行わない「ポジティブ・キャンペーン」を標榜しているからといって、他候補との差異を有権者に示すことができなければ選挙運動は継続できません。
 ましてやケーシックはこれまでトランプの言動に異議を唱え、旧ジェブ・ブッシュ支援者をはじめとする反トランプ勢力から支援を受けてきました。トランプがロムニーを「彼は本当にモルモン教徒なのか」と攻撃した件についても、3月20日に「私なら他人の信仰を問うような真似はしない」と苦言を呈しています。もしもケーシックがトランプの副大統領候補に就くことがあれば、ケーシックの倫理観が疑われるばかりか、共和党内の分裂はさらに激化しかねません。


 ◆リンゼー・グラムが支持した候補


 3月17日、サウスカロライナ州選出の連邦上院議員リンゼー・グラムがクルーズへの支持を表明しました。
 グラムは昨年6月指名争いに名乗りを上げるも、予備選開始を待たずして撤退し、ジェブ・ブッシュの応援団に回るも、ブッシュが撤退するとマルコ・ルビオへの支持に転じた人物です。そのルビオも撤退した今、グラムは「反トランプ」の一点のみで、上院共和党の「嫌われ者」クルーズを支持することに決めたのです。
 かつてグラムは、トランプが指名されることとクルーズが指名されることの違いは「射殺されるか、毒を飲んで自殺するか」の違いでしかないと語っていました。「もし上院議会の廊下でクルーズが殺されて、上院議会で裁判が開かれても、誰も犯人を有罪にしないだろう」という過激なジョークまで飛ばしています


 ◆「反トランプ」一本化の試み


 政策面や人間関係で考えるならば、同じ「反トランプ」でも、グラムはクルーズではなくケーシックを支持するべきでしょう。しかし、グラムにはケーシックを支持できない理由がありました。3月20日、CBSの報道番組に出演したグラムは、ケーシックではなくクルーズへの支持を表明した複雑な胸中を語っています
 「私はケーシックが最も望ましい共和党候補だと考えている。でも、彼が党大会で指名されるとは思わない。今年は『アウトサイダーの年』だからね」「もしジョンが『勝てる候補』なら、私だって彼についているよ。でも、我々は『クルーズかケーシックか』を選ばなければならない」。
 ロムニーやグラムらはトランプに指名を得させないために涙ぐましい努力を重ねてきましたが、「反トランプ」候補を一本化する試みが逆効果に終わっていることに気付いていません。彼らは「トランプがよくない理由」を熱弁してきましたが、「ルビオがよい理由」や「クルーズがよい理由」は最後まで語りませんでした。


 ◆「私は党大会に進むだろう」


 3月20日、CNNの報道番組『ステート・オブ・ザ・ユニオン』に出演したケーシックは、「私は党大会に進むだろう」と語りました。党大会の決選投票で指名を得たいと考えていることを明確に示したのです。
 そして、「代議員たちは党大会で2つのことを考える。一つ目は『本選で勝てるのは誰か』だ。リンゼー・グラムは『可能性が最も高いのはケーシックだ』と話していた。二つ目は『大統領として実際に働けるのは誰か』だ」と話し、自分こそが指名を得るべき候補であると訴えました
 グラムの発言を引き合いに出したのは、「ケーシックではトランプに勝てないから」という理由でクルーズへの支持を表明したグラムへの意趣返しでしょう。ケーシックとしては、共和党予備選という「コップの中の争い」から、クリントンとの対決となる本選へと共和党員の意識を向けさせたかったのです。


 ◆ヒラリーには勝てそうだけれど

CNN/ORC 本選想定支持率 (3月17日〜20日調査)
クリントン(53%) トランプ(41%)
クリントン(48%) クルーズ(48%)
クリントン(45%) ケーシック(51%)

 本選で「クリントンに勝てる候補」であるケーシックは、皮肉にも、党指名争いでは「トランプにもクルーズにも勝てない」候補でした。
 そこで「反トランプ」候補の一本化を図った共和党主流派は、ルビオやクルーズといった比較的「強い」候補を支持する一方で、党内で最も「弱い」ケーシックには露骨に撤退を要求してきました。ケーシックは、ルビオが参戦中の時期には「反トランプ票をルビオに一本化したいからお前は撤退しろ」と迫られ、ルビオの撤退後は「クルーズに一本化したいからお前は撤退しろ」と迫られていたのです。


 ◆ケーシック、「撤退圧力」に怒る


 絶え間ない「撤退圧力」によほど不満が鬱積していたのでしょう。
 3月21日、CNNで放送されている朝の情報番組『ニュー・デイ』に出演したケーシックは、「私は本選でクリントンに勝てる唯一の候補なんだよ? そんな私が選挙戦から撤退しなければならないなんてふざけてる。代議員たちは党大会で私を指名候補に選ぶはずだ」と語り、珍しく感情を露わにしました。
 ケーシックへの撤退を求めていたのは党主流派の一部だけではありません。3月21日に発表されたCNNの世論調査によると、共和党員の70%が「ケーシックは撤退すべきだ」と答えています


 ◆「なぜケーシックは好かれないのか」

 それにしてもケーシックはなぜ、本選で「クリントンに勝てる」はずの候補だというのに、共和党内では支持率が低迷しているのでしょうか。
 ニューヨーク・タイムズ紙は3月21日、『なぜ共和党のエスタブリッシュメントはケーシックのことを好きではないのか』というコラムを掲載しました。このコラムでは、オハイオ州知事としてのケーシックが移民問題や福祉政策でいかに「穏健」すぎるかが解説されています。
 中でも印象的なのは、オハイオ州のメディケイド(低所得者向けの公的医療保険制度)をめぐる逸話です。2013年、共和党所属のオハイオ州下院議長ビル・バチェルダーは、メディケイド拡大案を成立させることに難色を示していました。「小さな政府」を党是とする共和党の政治家としては自然な対応です。
 しかし、州知事のケーシックは「あなたが死んで天国へ行ったとき、聖ペトロは『どれほど行政府を小さくしたか』とはお尋ねにならないだろう。『貧しい人々に何をしたか』とお尋ねになるはずだ。我々はそのときに良い答えを示せなければならない」とバチェルダーに語りかけ、メディケイド拡大案を押し通しました


 ◆「オバマケア」の支持者?

 共和党員でありながら社会保障の拡張に積極的なケーシックの姿勢は、多くの共和党員にとって違和感のあるものでしょう。ティーパーティー運動の参加者にとっては、違和感を通り越して憤怒を覚える姿勢かもしれません。ケーシックが「オバマケア」(オバマ政権による国民皆保険制度)の支持者だと揶揄されてきた理由もここにあります。
 とはいえ、これはケーシックが「共和党内で」支持率が低い理由の一つにすぎません。本選で最も「強い」はずの候補が共和党内では最も「弱い」という事実からも分かるように、共和党内の多数意見と「アメリカ国民」の多数意見は乖離しています。今度の大統領選そのものを乗り切れたとしても、共和党は上院選で議席を維持し、国民政党としてその地位を保つことができるでしょうか。


 ◆若者向けキャンペーンが始動


 3月22日、「ホット・ディベート・ガイ」ことグレゴリー・カルーソが、ケーシック選対青年委員会(Young People for Kasich)の委員長に就任しました
 グレゴリー・カルーソは現在24歳、カリフォルニア州ロサンゼルスで生まれ育った共和党員です。昨年9月に開催された共和党候補のテレビ討論会で司会者の真後ろに座っていたところ、「イケメンすぎる観客」として注目を浴びました(詳しくはこちら)。テレビ討論会後、カーリー・フィオリーナ陣営とケーシック陣営はこの青年にそれぞれ接触を試み、支持を求めています
 両陣営がこの青年に接触したのは、彼が話題の人物だったからだけではありません。彼を味方につければ、彼の父親である資産家リック・カルーソの「財布」も手に入れられると考えたからです。ケーシック陣営は見事、3月2日にグレゴリーからの支持を獲得し、3月31日にはリックからも支援を取り付けました
 選対の青年委員長に就任すると、グレゴリー・カルーソはさっそくTwitterアカウント(@KasichYouth→@Youth4Principle)を開設して、お洒落なイメージ画像を少しずつ投稿し始めました。



 ――本当は撤退表明まで一気に振り返るつもりだったのですが、ここまでの文章が思いの外長くなってしまったので、今回は2016年3月分でまとめを切り上げることにします。4月分・5月分(「5月分」といっても、ケーシックは5月4日にはもう撤退を表明したのですが……)については、次回、「ケーシックの大統領選」シリーズ第7回としてご紹介することにしましょう。需要の有無は横に置くとして。

 なお、今回は各州予備選・党員集会の結果には触れませんでした。ケーシックは、3月15日に実施された地元・オハイオ州での予備選(詳しくはこちら)以外で勝利を飾っておらず、少なくとも開票結果に関して特筆すべき「ドラマ」が発生しなかったからです。得票率や順位は後日改めて「資料」としてこのブログに掲載する予定なので、何卒ご了承くださいませ。


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