2015年08月15日

「歌丸の圓朝噺」の集大成? 鬼気迫る熱演、『怪談乳房榎』


今日は、国立演芸場 8月中席 へ行ってきました。
主任は、桂歌丸師匠。

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 <本日の番組>

開口一番:(前座) 雷門音助 『道灌』
落語:(交互) 三遊亭遊里 『道具屋』
落語:(代演) 春風亭柳好 『壺算』
歌謡漫談:東京ボーイズ
落語:桂歌助 『都々逸親子』
落語:雷門助六 『こり相撲』〜踊り『かっぽれ』

 〜お仲入り〜

落語:桂小南治 『四人癖』
音曲:松乃家扇鶴
落語:(主任) 桂歌丸 『怪談乳房榎』



★音助 『道灌』
開口一番は助六門下の音助さん。
爽やかなルックス、安定した語り口、
それでいて、早くもこの人ならではの存在感もある。
卓越した「総合力」を持つ前座さんの一人だ。
サゲは「暗ぇから提灯借りに来た」(「角が」なし)。

★遊里 『道具屋』
音助さんの前職や噺家の学歴に触れてから、
“与太郎”の初仕事を描いた噺『道具屋』へ。
遊雀師匠の高座のようなメリハリのある高座を展開し、
老若男女すべての観客に立ち向かっていった。

★柳好 『壺算』
文治師匠の代演。
本日が終戦記念日であることに一言だけ触れ、
師匠・柳昇にとって皇室は特別な存在だったと語る。
秋篠宮殿下を前にしての「御前落語」のエピソードや
沖縄の「幻の泡盛」にまつわるネタで客の心を掴み、
この噺特有のクドさが抜けた、馴染みやすい『壺算』を。

★東京ボーイズ
「なぞかけ問答」→「AKB」→『ふるさと』合唱
→『静かな湖畔』輪唱、そして『かわいいあの娘』で〆る。
会場をより一層「楽しい」雰囲気に盛り上げた。

★歌助 『都々逸親子』
『鶴の恩返し』や『浦島太郎』の小噺版を紹介。
「勉強机に向かう子どもは微笑ましい」ということで、
やけに色っぽい“息子”が活躍する『都々逸親子』へ。
今席唯一の「歌丸門下」として高座上での役目を果たす。

★助六 『こり相撲』〜あやつり踊り『かっぽれ』
おなじみの「ビトン」ネタなどを済ませ、
相撲場の客席でのあれやこれやを描く『こり相撲』。
その後、これまたおなじみのあやつり踊りを披露し、
夏休みの客席から拍手や歓声を受けていた。
踊りを終え、無言で去る助六師匠の後ろ姿はカッコいい。

★小南治 『四人癖』
今年も、本日分までの「大入り袋」を客に見せ、
この定番マクラを知る客たちから大きな拍手を浴びる。
「これが私にとっての『あやつり踊り』のようなもの」。
『四人癖』は小南治師匠のニンに合った噺で、
登場人物のエキセントリックな部分が強調されていた。

★扇鶴
扇鶴先生のキャラを知らない客からはどよめきが(笑)。
「去年の今夜は知らない同士」などの都々逸を歌い、
絶妙な風情を残して楽屋へ帰っていく。
これもまた、私にはカッコいいと思える「芸人の後ろ姿」。

★歌丸 『怪談乳房榎』
『中の舞』の出囃子、板付き・釈台付きで登場。
入院中に医師から「体重40kgになれ」と命令されたことや
今度は「50kgになれ」と言われるだろうことを語った後、
本来は三部作の『怪談乳房榎』を今日は一度で、と紹介する。
――絵師・重信の妻と関係を持った浪人の弟子・浪江は、
不倫だけでは飽き足らず、「主張」先で重信の殺害を企む。
重信の使用人・正介を巻き込み、重信を殺害するのだが……。
途中、照明は変転し、客を驚かせるようなハメモノも入る。
これまで何度も歌丸師匠の「圓朝噺」を拝聴してきたが、
本日の『怪談乳房榎』はこれまでになく鬼気迫る熱演だった。



――いくら名編集者・歌丸師匠が構成し直したとはいえ、
三遊亭圓朝作『怪談乳房榎』は、本日の型でも約1時間の長編。
退院したばかりで病み上がりの歌丸師匠にとっては、
決して安易に語ることのできるような噺ではなかったはずです。

ところが、本日の歌丸師匠の『怪談乳房榎』は、
人間の「弱さ」「愚かさ」、そして「苦しさ」を完全に網羅し、
長講と感じさせないほどの娯楽性と芸術性に満ちていました。
もしかしたらこれが「歌丸の圓朝噺」の集大成なのかもしれない
――と思わせられるような、鬼気迫る熱演にして「名演」でした。

歌丸師匠が今月(8月)11日にこの興行で復帰した際、
NHKニュースは、歌丸師匠が「“熟練”の話芸で客を惹き付けた」
などと報じていましたが、冗談言っちゃいけない。
この興行で、歌丸師匠は“気迫”あふれる高座を展開しています。

今から4年前、『東京かわら版』のインタビューで
師匠本人が語っていた通りの「勢いのある」高座です。曰く――
 やっぱり大病すると人間ガクっと来ますよね。ガクっと来ると芸までガクっとなっちゃうんですよ。よく「枯れた芸」って言うじゃないですか。アタシはどんどん新芽を伸ばし、葉を付け、花を咲かせ、実を持たせる。そういう勢いのあるものの方がいい。枯れた芸なんぞなりたくないですよ。枯れたもの見たってそんなの面白くもなんともない。枯れた植木見たって面白くもなんともねぇもん。
(『東京かわら版』平成23年10月号 「今月のインタビュー 桂歌丸」 p.10)

あまり大袈裟なことを言うつもりはありませんが、
私がこの時代に生まれたこと、この日本に生まれたこと、
「落語」という芸能を楽しむ人間として育ったこと、
そして歌丸師匠のこの『怪談乳房榎』を拝聴したということ――。
そのすべてが私の誇りであり、何物にも代え難い「財産」です。


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