2013年04月04日

ジェイ・レノ再降板! 改めて振り返る『トゥナイト・ショー』“騒動の歴史”


現地時間4月3日、
「アメリカの国民的トーク&バラエティ番組
 『ザ・トゥナイト・ショー』の司会(Host)が
 2014年2月、ジェイ・レノからジミー・ファロンに変更される」
との公式報道がなされました。

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◆ Inside TV による記事 (2013年4月3日)
◆ ガーディアン による記事 (2013年4月3日)



ジミー・ファロンは、
『トゥナイト・ショー』のすぐ後に続けて放送される番組
『レイト・ナイト』の現司会者です。

司会者交代が決定されて、ジェイ・レノとジミー・ファロンは、
「時間帯がつながっている番組」の特性を活かして、
こんなコラボコントを作りました
(内容的には、ジミー・ファロン側が制作したコントです)。




『トゥナイト・ショー』と
『レイト・ナイト』は、どちらも米NBCの深夜トーク&バラエティ番組。

これを無理矢理日本で置き換えると、
『トゥナイト・ショー』のジェイ・レノ=『笑っていいとも』のタモリ、
『レイト・ナイト』のジミー・ファロン=『ごきげんよう』の小堺一機、
ということになります
(番組内容や放送時間などはもちろん異なる)。



従来から、
『レイト・ナイト』の司会者が
『トゥナイト・ショー』の司会に“昇格”することは既定路線なので、
この決定自体は別にそれほど驚くべきことではありません。

ただ、1992年から20年間以上、
国民的番組『トゥナイト・ショー』で司会を務めてきた
ジェイ・レノが番組を降板する、という事実は、
「一つの時代の終わり」を印象付ける重大な事実ではあります。



ジェイ・レノは、これまで常に
「深夜番組スキャンダル」の中心人物であり続けてきました。

今から20年ほど前の1992年、
当時『トゥナイト・ショー』の司会を担当していた
ジョニー・カーソン が番組を降板し、
芸能界から引退することを発表しました。
カーソンは、アメリカの国民的英雄とも称される人物です。

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ジョニー・カーソン

当初、『トゥナイト・ショー』の後任司会者には、
当時『レイト・ナイト』司会を務めていた
デイヴィッド・レターマン というコメディアンが起用されることが
有力視されていました。
今回、ジミー・ファロンが
『トゥナイト・ショー』新司会者に“昇格”すると報道されたように。

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デイヴィッド・レターマン

しかし、『トゥナイト・ショー』(と『レイト・ナイト』)を放送する
テレビ局=NBCは、
レターマンではなく、ジェイ・レノ というコメディアンを
『トゥナイト・ショー』新司会者に抜擢することを発表しました。

たしかに、レノは、
カーソン時代の『トゥナイト・ショー』に
何度もゲスト出演したことのある人物でしたが、
「レノがカーソンの後任司会者になるとは……」と、
当時のアメリカの視聴者たちは驚いたそうです。

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ジェイ・レノ

自分が『トゥナイト・ショー』の
新司会者に起用されると思っていたのに、
そのアテが外れたレターマンは、怒ってNBCを飛び出ます。

引退したカーソンも、
不遇の決定がなされたレターマンには同情的で、
レターマンに「NBCが嫌になったなら、
 他の放送局で番組を始めたらどうだ?」とアドバイスします。

そして、レターマンは、1993年、CBSで
『レイト・ショー』という番組を始めるのです。
放送する時間帯は、なんと『トゥナイト・ショー』の真裏!
NBCとレノに、真正面からケンカを売ったのでした。

ちなみに、レターマンがNBCを去った後、
NBC『レイト・ナイト』の後任司会者には、
レターマンを師と仰ぐコメディアンであり
NBC『サタデー・ナイト・ライブ』のコント作家でもある
コナン・オブライエン が就任しました。

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コナン・オブライエン



――時は流れて、2009年。
相変わらずNBC『トゥナイト・ショー』の司会はジェイ・レノ、
CBS『レイト・ショー』の司会はデイヴィッド・レターマン、
NBC『レイト・ナイト』の司会はコナン・オブライエン――
――だったのですが、NBCの番組編成により、
『トゥナイト・ショー』の司会がジェイ・レノから
コナン・オブライエンに代わることが決定されます。

『トゥナイト・ショー』を降板するレノは、
『トゥナイト・ショー』の一つ前の時間帯に
『ザ・ジェイ・レノ・ショー』という新番組を始めることを決定。
コナンが司会の『レイト・ナイト』後任司会者には、
ジミー・ファロン という若手コメディアンが抜擢されました。

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ジミー・ファロン

1992年の「レノVSレターマン戦争」での苦い経験を活かして、
ジェイ・レノのための新しいトーク&バラエティ番組を始めることで、
誰も追い出さず、何も“騒動”を作らず、
穏健かつ平和的に各番組の指揮権が譲渡されることになったのです。



――ここまで触れずにきましたが、
アメリカのトーク&バラエティ番組は、
司会者が変更すると、丸っ切りの「別番組」となります。
司会者の変更は
単なる番組進行役の変更を意味するのではなく、
内容・スタジオ・指揮系統含め
「番組が生まれ変わること」を意味するのです。
当然、司会者が番組プロデューサーも兼ねており、
司会者の個性を活かした番組が作られることになります。

前任司会者のレノは、まさに「庶民派」といった感じで、
長年に渡り、
親しみやすいキャラクターが視聴者に受け入れられてきました。
かつてレノと争ったレターマンは、
レノと比べるまでもなく「知性派」といった感じで、
風刺や毒舌を武器にジョークを連発するインテリコメディアン。
レノとレターマン、それぞれの“後任”となったコナンは、
もともとはアニメ『ザ・シンプソンズ』の製作者の一人であり、
知性的でありながら、
時に“狂ったようなバカバカしい笑い”を創り出す人物です。

ある意味、コナンの笑いは、
3人の中で最も「独特な芸風」だといえます。



2009年6月、
『トゥナイト・ショー』の司会がレノからコナンに代わりましたが、
司会者が「庶民派」から
「独特な芸風」に代わったことの意味は大きく、
視聴率は少しずつ、レノ時代よりも下がってしまいました。

「視聴率低下……! これじゃイカン!」と考えたNBCは、
『ジェイ・レノ・ショー』の放送時間を深い時間帯にずらして
(=その次の番組『トゥナイト・ショー』の放送開始時間を遅らせて)、
ジェイ・レノを
かつての『トゥナイト・ショー』の“時間帯”に復帰させることで、
レノ時代の『トゥナイト・ショー』視聴者を引き戻そうと計画します。

NBCのこの新編成プランに対して、コナン・オブライエンは
「こんな話は聞いていないぞ!
 伝統ある『トゥナイト・ショー』の放送開始時間を変更するなんて、
 絶対に許されない行為だ!」と大激怒。

NBC側は「アンタの番組の視聴率が低いせいじゃないかよ(失笑)」
といったような、火に油を注ぐような反論をしてしまいます。
実際には、新しく始まった
『ジェイ・レノ・ショー』の視聴率も芳しくなかったのですが……。

ジェイ・レノはジェイ・レノで、
自らが当事者(あるいは“火種”)であるにもかかわらず
「みんな、コナンのことを責めないでやってくれ」などと
“上から目線”の発言をして、視聴者から顰蹙を買います。
この時、レノの宿敵=レターマンは、CBS『レイト・ショー』で
「『コナンのことを責めないでやってくれ』だって?
 ……誰も“コナンのことは”責めてないんだけど?」と、
一連の“騒動”におけるレノの対応を痛烈に批判しました。



コナンとNBC首脳陣による大激戦が交わされた結果、
コナン・オブライエンは
いつぞやのレターマン同様、NBCから飛び出ていくことを決定。
それは、コナンが
『トゥナイト・ショー』の新司会者に就任してから
わずか7か月後、2010年1月のことでした。

『サタデー・ナイト・ライブ』作家時代から数えて
20年近くに渡り馴染んできたNBCを離れるにあたって、
コナンは、自身の『トゥナイト・ショー』最終回で
こんなメッセージを視聴者に語りかけました。

『トゥナイト・ショー』での仕事は、
これまでの仕事の中で最も大変なものでした。
しかし、『トゥナイト・ショー』の司会は
世界で最も素晴らしい仕事だといえます。

私はこの仕事が本当に大好きでした。
最高のスタッフに恵まれました。
コメディアンはみんな、この番組の司会者に憧れます。
そして私は、7か月間、その憧れを実現したのです。

みなさんの愛とともに、私は私の道を歩みました。
後悔はありません。
すべての視聴者のみなさんにお伝えしたい。
私へのたくさんの優しさや思いやりに、
私は感謝してもしきれないということを――。

みなさんにお願いしたいことはたった一つです。
「どうか、シニカルにならないで」。
私は皮肉や冷笑を憎んでいます。
なぜなら、それは最低の行為で、
何物にも結び付かない行為だからです。

誰が何を考えていて、何を得ようとしているのかなんて、
誰にも分かりはしません。
だけど、あなたが一生懸命に働いて、
思いやりを胸に生きるならば、
びっくりするような素晴らしいことは起きるのです。



――NBCから「番組コーナーの著作権はNBCに譲り渡せ」
「今年の9月まで他局での仕事はするな」
などの条件を言い渡された上で、コナンはNBCを去り、
『トゥナイト・ショー』の司会には
なんとジェイ・レノがカムバックしました。

これがテレビドラマだとしたら、
あまりにも稚拙な筋書きだと言わざるを得ません。
一人で悲しみを背負ったコナンは、
この時、本当の意味での“裏切り”を経験したのです。



コナン・オブライエンがスゴいのは、
NBCとの“約束”は守った上で、
すぐに、全米各州を廻るコメディツアーを展開したことです。
「絶望したままでたまるか」
「『可哀想な人』のままでたまるか」という、
コナンの静かな“魂の叫び”が伝わってきました。

静かに闘うコナンには、
NBCやレノへの罵詈雑言――「シニカル」――はありませんでした。
本来ならそれを言っても許される立場であったにもかかわらず、
番組の最後で視聴者に語ったメッセージを、
彼は、自らきちんと守り続けたのです。

コナンが“再起”に全身全霊を賭けていたことは、
その全米コメディツアーのラストで
必ず『I Will Survive』を歌っていたことからも分かります。




全米コメディツアーを終えたコナンは、2010年11月、
米ケーブルテレビ局の
TBS(ターナー・ブロードキャスティング・システム)で
深夜トーク&バラエティ番組『Conan』をスタートします。

この番組はもちろん現在も続いており、
月曜日から金曜日まで、毎日、豪華なゲストを招いています。
『レイト・ナイト』や『トゥナイト・ショー』と比べても遜色ない、
それでいて「コナンの笑い」を自由に発揮できる番組として、
2013年4月現在、とても多くの視聴者に愛されている番組です。

少し遠回りではあったし、
2010年の“騒動”でコナンは酷く傷付いたけど、
TBSという地でコナンが自由な番組を持てたことを考えると、
人生というのは本当に上手くできていると感じますね。
もちろん、それは、今だからこそ振り返って言えることですが。



今回、ジミー・ファロンが
『トゥナイト・ショー』の新司会者に起用されることが発表されて、
多くのアメリカ国民は
コナン・オブライエンがどんなコメントを述べるのかに注目しました。

現地時間4月3日放送のTBS『Conan』では
「あ、そうそう、一応コメントしておくけど」みたいな感じで、
番組の中盤あたりで、コナンがこう発言しました。

ジミーを祝福したい。
これは本当にいいニュースだ。
ジミーはあの番組の司会に適任なんだよ。
彼は素晴らしい仕事をするだろうね。
おめでとう、ジミー!

……これだけ。
ちょっと拍子抜けしちゃうでしょう?
“裏の意味”を読み取ろうと思えば読み取ることはできるけど、
NBCやレノに対する言及は一切なし。
「皮肉」もなければ、「ジョークに利用」することもありません。

もっとも、これは3日時点での番組内でのコメントなので、
もしかしたら今後、NBCやレノに対する
「皮肉」や「ブラックジョーク」が飛び出す可能性はありますが、
私は、その可能性は極めて低いだろうと思っています。
「弊社に向けて皮肉を放ってはならない」という誓約が
コナンとNBCのあいだで交わされているのかどうかは知りませんが、
そんなものがなくても、やはり、
コナンは「皮肉」で他者を攻撃することはないだろうと思うのです。

2010年、『トゥナイト・ショー』のコナン担当最終回で
コナンが「シニカル」に関するメッセージを残してから、
コナンは、笑いのスタイルを
少しずつ「思いやり」を伴うものへと変化させてきました。
誰か他者をネタにする時も、「冷笑する」のではなく
「違いを面白がる」といったスタンスで臨むようになったのです。

結果的に、あの“騒動”が
コナンの人生観を変えたことは間違いないでしょう。



今回のニュースを受けて、
ジェイ・レノの宿敵とでもいうべき
デイヴィッド・レターマンの反応は対照的です。
CBS『レイト・ショー』の冒頭で、早速、
今日、ママから電話があったんだ。
「デイヴィッド!
 アンタはまた『トゥナイト・ショー』の司会になり損なったよ!」って。
レノ氏の長年のお仕事には称賛申し上げたい――。
――彼がまた『トゥナイト・ショー』に復帰しなければの話だけど。
などと、ケンカを売りまくっています。

対するレノも、NBC『トゥナイト・ショー』のモノローグで
今度、レターマンには電話しておくつもりだ。
「次の司会も君じゃないよ」ってね!
と話すなど、負けてはいません。

そう、「犬猿の仲」「宿敵」のこの2人、
実はお互いにお互いをネタにし合っていて、
もはや現実に心から憎しみ合っているわけではないのです。
もっとも、間違っても2人は
「親密」とか「友好的」な関係ではないようですが(笑)。

もしかしたら、レターマンはレターマンで、
自らが国宝級のコメディアンになった今でも
レノにドギツすぎる毒舌を浴びせ続けることで、
NBCやレノをめぐる過去の“騒動”によって
結果的に不遇な人生を歩むことになってしまった人々の
“ガス抜き”をしてくれているのかもしれませんね。



――というわけで、
話があっちに行ったりこっちに行ったりした今夜のブログですが、
『トゥナイト・ショー』の司会者交代報道に便乗して、
私の大好きなコナン・オブライエンの
“I Will Survive”な一面をご紹介させていただきました。

コナンがNBCを出て行ったばかりの時は、
他人事ながら「どうなるんだろう……」と
コナンの将来を心配しましたが、
まるで何事もなかったかのように
TBSで『Conan』という超面白い番組を展開している様子を見ると、
「人生は本当に上手くできているなあ」と感じます。

もっとも、その「人生の選択」は、すべてコナン自身によるものです。
コナンが、コナンの人生を切り拓いたのです。
だからこそ、『トゥナイト・ショー』コナン担当最終回で
コナンが視聴者に語ったメッセージには説得力があります。

ジミー・ファロンの芸風やら
ジミーが『トゥナイト・ショー』の司会になることの意味やら――
――などなどについてはまた今度取り上げることとして、
今夜は(今朝は? 午後は? 夕方は?)、
『Conan』発の企画
「Clueless Gamer」の日本語字幕版(!)をご紹介して
お別れすることといたしましょう。


ダメな時のパトリック・フュジット さんという方が、
この他にもコナンの動画を日本語字幕付きでUPしてくれているようです。
ありがたや、ありがたや〜。

ちなみに、オリジナル版は『Conan』公式サイトで見れるよ!
posted at 23:59 | Comment(0) | TB(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする |
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