2013年04月20日

歌丸が聴かせる! ホラーサスペンスの名作『鰍沢』


今日は、国立演芸場 4月中席 へ行ってきました。
主任は、桂歌丸会長。

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 <本日の番組>

開口一番:(前座) 瀧川鯉毛 『まんじゅう怖い』
落語:桂文治 『転失気』
コント:コント青年団
落語:(交互) 春風亭柳若 『壺算』
曲芸:ボンボンブラザース
落語:瀧川鯉昇 『二番煎じ』

 〜お仲入り〜

落語:(代演) 三遊亭遊雀 『四段目』
俗曲:桧山うめ吉
落語:(主任) 桂歌丸 『鰍沢』



★鯉毛 『まんじゅう怖い』
なんとも不思議な前座さん!
途中、『セ×ミストリート』の
“エルモ”を彷彿とさせる声色になったり、
一人芝居っぽい喋りになったり。
今後の動向(?)がちょっと気になる……。

★文治 『転失気』
本来はもっと深い時間帯でのご出演なのですが、
「早く来たもので」とこの時間帯に登場。
いつも思うけど、
文治師匠の出番変更エクスキューズは乙だよね。
表情でも体の動きでも笑わせる『転失気』。
サゲは……、なんだったっけ……。

★コント青年団
「日本史の高校教師と生徒」のコント。
相変わらず面白いです。
きちんと設定そのもので笑わせてくれるし、
寄席のコント師にありがちな
“笑えないアドリブもどき”もほとんどない。
ますます好きになっちゃいました。

★柳若 『壺算』
学校寄席でもらった感想文などをマクラに、
伸びやかで愉快な『壺算』。
空間を自分のものにすることがお上手というか、
まだ二ツ目になられたばかりなのに“聴かせる”、
客を“満足させる”落語家さんだと感じました。

★ボンボンブラザース
「グラスを積み重ねたやつの高さを
 どんどん高くしていって
 客席に落ちるか落ちないか
 ハラハラドキドキさせる曲芸」(……長い!)が最高。
オチも最高。さすがはベテラン。

★鯉昇 『二番煎じ』
「熱演はしません」宣言の後は、
「寒さが戻ってまいりました」と『二番煎じ』
(本日の東京は小雨が降っていて寒かったのです)。
猪鍋の匂いが客席に伝わってくるような、
お酒の温かさが肌に伝わってくるような、
実に贅沢な一席でした。
素面と酔っ払いの“瞬間切り替え”もお見事。

★遊雀 『四段目』
末廣亭夜トリ中の遊雀師匠が代演で登場。
“貞吉”の妄想が楽しい『四段目』です。
“貞吉”が切腹しようとしていると思い込んだ“旦那”が
「どうして番頭さんは止めに入らなかったの!
 どうしてお清は私に隠れて差し入れに行かないの!」と
“逆ギレ”する場面は素晴らしい。
これだから落語は素晴らしいのであります。

★うめ吉
字余り都々逸などを披露し、踊り『夜桜』で〆る。

★歌丸 『鰍沢』
4月11日〜15日は『中村仲蔵』、
16日〜20日は『鰍沢』をネタ出ししてのこの興行。
やはり、歌丸師匠は
ホラーサスペンス系の噺が上手いです。
“旅人”が崖っ縁へと追い詰められ
“お熊”に鉄砲で狙われる場面もスリル満載ですが、
その少し前、“お熊の亭主”が、誤って
“毒入り玉子酒”を呑んでしまう場面がとりわけ怖ろしい。
「今までお前さんも散々悪いことをしてきただろう。
 呑んでしまったものはしょうがない。
 これはその罰だと思うしかないね」(大意)って……。
鉄砲より人間のほうがよっぽどホラーだよ……。
そして、歌丸師匠は、こういった「人間の黒さ」
「人間の冷たさ」を描くのが抜群に上手ときたもんだ!
歌丸師匠の『鰍沢』――、完成度があまりにも高く、
ゾクゾクしながら聴き入ってしまいました。



――というわけで、本日は、
歌丸師匠の『鰍沢』を初めて生で聴くことができて、
大満足いたしました。

クライマックスシーンはもちろんのこと、
“お熊”の家で、“旅人”が
“お熊”と吉原での想い出話をする場面も美しく、
つまりは全編通じて美しく、
美しさの上に怖さが乗っかったりもしていて、
今日の高座は期待以上のものだったなあ。

いくらこの5日間口演し続けているからといって、
あれほどの完成度でもって
『鰍沢』を聴かせることができる歌丸会長はスゴい。
雪山の奥深くという閉鎖空間の中で
次第に追い詰められていく“旅人”の恐怖が、
客席の私にも伝わってきましたよ!

「“枯れた芸”なんぞなりたくない」と語る歌丸師匠らしく、
迫力のある高座が展開された土曜日の夕方――。


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2013年04月18日

“分かりやすさ”の価値 『喬太郎・花緑 二人会』


今日は、関内ホール 大ホール で開かれた
『よこはま寄席
 柳家喬太郎・柳家花緑 二人会』へ行ってきました。

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 <本日の番組>

開口一番:(前座) 柳家フラワー 『元犬』
落語:柳家花緑 『野ざらし』
落語:柳家喬太郎 『花筏』

 〜お仲入り〜

落語:柳家喬太郎 『紙入れ』
落語:柳家花緑 『妾馬』



★フラワー 『元犬』
花緑師匠のお弟子さん。
丁寧な語り口に親しみを抱きました。
どうでもいいけど、白い犬飼いたい〜。

★花緑 『野ざらし』
この二人会は昼の部もあったらしく、
“夜の部”のお客さん向けに
“昼の落語”と“夜の落語”の違いを解説。
一気に会場内が和やかな雰囲気になります。
師匠であり祖父である5代目小さん師匠のエピソードも。
ネタのほうは十八番の『野ざらし』で、
八五郎は“スマートなクレイジー”って感じ。
その“八五郎像”が花緑師匠にハマっていた。

★喬太郎 『花筏』
開口一番、「少し咳込んでいいですか」。
しばらく咳込んでから、
「心配そうな目で見てもらえて嬉しいです」。
喬太郎師匠の『花筏』は
いずれのパートも緻密度と完成度が高くて、
もちろん“喬太郎流”のクスグリもあって。
こんなに満足感のある『花筏』はなかなか珍しい。
やっぱり、ものすごく上手いし、ものすごく面白い。

★喬太郎 『紙入れ』
仲入り後は再び喬太郎師匠で、『紙入れ』。
“おかみさん”の言持ち悪さ!(笑)
なんといってもコレに尽きます。
喬太郎師匠にしか出せないイヤらしい視線と、
妙に艶っぽい仕草と喋り。
“喬太郎カラー”が見事に発揮された一席でした。

★花緑 『妾馬』
マクラでは、
喬太郎版『紙入れ』での“おかみさん”を
「あんなオバさん、いますよね」とイジります。
そして、こちらも花緑師匠十八番の『妾馬』。
前半でたっぷり笑わせて、
後半でちょっぴり感動させる。
この“ちょっぴり”というところがミソで、
「やりすぎ」にならないところで抑えるところが
花緑師匠のさすがのバランス感覚だと感じます。
「死んでしまって会えないのも辛い。
 でも、生きていて会えないのも辛い……」
という台詞が、お客さんの涙腺を刺激してました。



――というわけで、
当代の人気者の二人会を
横浜の地で大いに楽しませていただきました。

花緑師匠も喬太郎師匠も
“上手くて面白い”落語家さんですが、
それに+αしていうならば、
花緑師匠には“清潔さ”“分かりやすさ”、
喬太郎師匠には“奇妙さ”が伴っています。
そして、それが落語を“より面白く”しています。

本日、とりわけ心動かされたのは、
これまであまり聴く機会のなかった花緑師匠の高座。
“分かりやすさ”と書くと
「それは初心者向きだよ」と馬鹿にする
“落語通”もいるでしょうが、
私は“分かりやすさ”こそ
“上手くて面白い落語”の大前提であると考えます。
初心者が楽しめる落語をやれない芸人に、
「名人芸」も「至芸」もできないと思うのです。

現代の観客に対して
常に“分かりやすくて面白い”古典落語を届ける
花緑・喬太郎両師匠の姿勢は素晴らしいし、
「古典落語」の面白さを確信しているからこそ
その姿勢を貫けるのだろうと感じました。


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2013年04月16日

“善性”滲む遊史郎『お見立て』 VS 遊雀の芸術的“総まとめ”


今日は、新宿末廣亭 4月中席 夜の部 へ行ってきました。

『一門の胸を借りる10日間』と題されたこの興行では、
遊雀師匠が主任を務め、
小遊三一門の落語家さんたちが日替りでゲスト出演。
それぞれ一席ずつ長講を勤めています。

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 <昼の部>

(途中から)
奇術:北見伸・スティファニー
落語:(主任) 昔昔亭桃太郎 『春雨宿』



 <夜の部>

開口一番:(前座) 三遊亭遊かり 『道灌』
太神楽曲芸:(代演) 翁家喜楽・喜乃
落語:古今亭今輔 『ワルの条件』
落語:三遊亭夢花 『武助馬』
ギタレレ漫談:ぴろき
落語:桂竹丸 『西郷隆盛』
落語:桂小南治 『宮戸川』
俗曲:松乃家扇鶴
落語:(代演) 春風亭柳橋 『金明竹』
講談:神田松鯉 『荒木又右衛門 -奉書試合-』

 〜お仲入り〜

落語:三笑亭可龍 『宗論』
落語:(日替り) 三遊亭遊史郎 『お見立て』
曲独楽:やなぎ南玉
落語:(主任) 三遊亭遊雀 『蛙茶番』



★伸・スティファニー
昼の部の最後のほうに間に合いました!
私が末廣亭に入った時には、
ポップなミュージック(?)とともに
スティファニーさんが華麗なるステージを展開していました。
その後、伸先生が登場して、“棒一本で空中浮遊”マジック。

★桃太郎『春雨宿』
昼の部の主任は、おなじみ桃太郎師匠です。
「こんにちは」という脱力系のご挨拶に始まり
(「こんにちは」って……、町内会の会合じゃないんだから……)、
テッパンの小噺集を経て『春雨宿』へ。
大暴れする“ケメコさん”に観客爆笑。

★遊かり 『道灌』
昼の部から夜の部まで残るお客さんも
たくさんいらっしゃったように見受けられました。
夜の部開口一番は、主任=遊雀師匠のお弟子さん、遊かりさん。
隠居さんが噴き出して笑いながら話す場面が多かったけど、
あれは意識されてのことなのかな。

★喜楽・喜乃
二ツ目さんの交互出演を飛ばして、喜楽・喜乃師匠の曲芸。
生卵を使った技を見せてくれました。スゴい!

★今輔 『ワルの条件』
クイズ番組に出演した時のエピソードをマクラに、
客席を暖めていきます。
やっぱり、あの番組は
クイズ番組というよりバラエティ・ショーだったのね……。
『ワルの条件』という新作落語は、
ショボいワルたち(“チーム・オクトパス”)の真面目さが笑えます。

★夢花 『武助馬』
開口一番(自主的「待ってました!」)の時点で好印象を抱き、
都内各寄席、
国立演芸場食堂などのマクラで面白さを確信しました。
噺のほうでも確かなる腕の持ち主ぶりを発揮。
サービス精神と実力が上手い具合に組み合わさっていたなあ。

★ぴろき
おなじみのネタから、個人的には初めて聴くネタまで。
途中入場のお客さんも、和やかにイジる。
今夜のぴろきさんには、めちゃくちゃ笑わせられました。

★竹丸 『西郷隆盛伝』
芸能人のエピソードを中心とする漫談と、
『西郷隆盛伝』を中盤ぐらいまで。

★小南治 『宮戸川』
本日から5日間、
小南治師匠は池袋演芸場夜の部で主任を務めるということで、
「これから一緒に池袋へ行こう」と、客を堂々と誘惑します(笑)。
主任の遊雀師匠のこともイジっておりました。
『宮戸川』は「久しぶりにやるネタ」とのこと。
マクラでは「講談のサゲ」「陽子先生の艶っぽさ」を振っておいて、
バカバカしさと色っぽさが絡み合った素敵な一席でした。

★扇鶴
穏やか〜に、相撲甚句などを披露。
「もう一曲だけよろしいでしょうか……?」と、
どこまでも低姿勢な扇鶴先生なのでした。

★柳橋 『金明竹』
右紋師匠の代演で柳橋師匠が登場です。
ネタは『金明竹』の後半の部分。
それが屋外での会話なのか、屋内での会話なのか、
場面設定にやや凝っていたような……。

★松鯉 『荒木又右衛門 -奉書試合-』
仲入り前は、
主任=遊雀師匠たっての希望で、講談の松鯉先生。
ビシッと聴かせる! スパッと楽しませる!
伝統の秘技「真剣白刃取り」が炸裂する場面では、
息を殺して聴き入りました。
なんとも贅沢な時間です。

★可龍 『宗論』
食い付きは可龍師匠。可愛らしいピンクの羽織で登場です。
ネタは、キリスト教に見事に感化された若旦那が、
終始冷静な大旦那を前に暴走し続ける『宗論』でした。
軽やかで華やかで(着物のためだけではない)、面白かった!

★遊史郎 『お見立て』
『一門の胸を借りる10日間』、今夜のゲストは遊史郎師匠。
遊史郎師匠の『お見立て』は、登場キャラ3名
(“喜瀬川”、“木兵衛”、“喜助”)に共感できる。
私はこれまで、『お見立て』という噺は、
嘘や騙しのまかり通る“吉原”だからこそ通用する、
各人物の薄汚さを前面に押し出した噺のように感じられて、
人物に共感できるのはそこだけかなあ、と思ってきました。
ところが、遊史郎師匠の『お見立て』は、それぞれの人物に
“まともに話せる感”が滲み出ていて、素直に楽しめる。
各人物の善性のようなものが優しい語り口で表現されるので、
「花魁も(木兵衛に)会ってあげればいいのになあ……」という
“喜助”の独り言が効いていて、聴いている私も思わず、
「その通りだよ」って心の中でうなずいてしまいました(笑)。

★南玉
曲ごまの南玉先生は、盛り上げるべきところで盛り上げ、
引き締めるべきところで引き締め、
その腕前には本当に惚れ惚れします。
高座を所狭しと使った「糸渡し」――、すばらしい。

★遊雀 『蛙茶番』
マクラでは可龍師匠の着物や小南治師匠の“池袋”マクラに触れ、
「寄席」というリレーの“アンカー”として堂々たるまとめっぷり。
“まとめ作業”はマクラでのことに留まりません。
普段からして遊雀師匠の落語は面白いのに、
今夜は“アンカー”として、
今夜登場した落語の世界の人物たちを
これでもかこれでもかと『蛙茶番』の中に取り込みます。
“馬の脚”(『武助馬』)は出てくる、
“真剣白刃取り”(『荒木又右衛門 -奉書試合-』)は出てくる、
“キリスト教徒”(『宗論』)も
“木兵衛と喜助”(『お見立て』)も出てくる。
芸術的とでもいうべきあまりに見事なネタへの取り込み様なので、
事前に共演者と談合して作ったんじゃないかと疑ってしまうほど。
トリネタでこんなことをやられたら、
浅い時間帯から寄席に駆け付けようと思っちゃうよね!
もちろん、この趣向に依存することはなく、
『蛙茶番』という噺そのものでも、観客を爆笑の渦に叩き込む。
期待をよい意味で裏切る、「さすが」を超えた一席でした。



――というわけで、本日は、
遊史郎師匠をゲストに迎えて
遊雀師匠が主任として実に見事な“総まとめ”をする、
特別な興行に立ち会うことができました。

「寄席は“リレー”」といったことはよく耳にしますが、
その最終走者(“アンカー”)として、
これまでの出演者の労をねぎらうがごとく
パロディ精神全開で芸術性の高い高座を構築し、
結果、客席を爆笑させる遊雀師匠のスタイルには、
ただただ恐れおののくばかりです。
やっぱり、遊雀師匠はタダモノじゃない!

今夜のゲスト=遊史郎師匠の『お見立て』も
登場人物の人間らしさが健やかに表現されていて、
素直に楽しむことができました。
この『お見立て』に出会わなかったら、私にとって、
『お見立て』は“なんとなく嫌な噺”のままだったろうなあ。
ちょっとやそっとのことじゃ忘れられそうにありません。



キャラクターがデフォルメされた攻撃的な笑いも
嫌いなわけではないけれど、
やっぱりどこかで、共感できる部分、落ち着ける部分、
総じて「人間らしさ」が含まれていないと、
少なくとも私の場合は、「落語」を素直には楽しみにくい。

「人間の業」とかとはまた少し別の領域の話として、
一種の“性善説”に基づいていないと
「落語」は面白くならないような気がします
(少なくとも個人的には)。
“善性”と“邪性”のバランスはいつも難しいのだけれど……。



――寄席ならではの趣向で、
普段以上の爆笑高座を展開した遊雀師匠。
この芸術的な“総まとめ”は寄席でしか見られない!
今後とも、遊雀師匠が主任を勤める“寄席”に期待します。
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