2013年03月22日

優しさとともに、強さはある。 『JAZZ WEEK TOKYO:八代亜紀』


今日は、東急シアターオーブで開かれた
『JAZZ WEEK TOKYO 2013
 八代亜紀 “夜のアルバム”』へ行ってきました。

jazzweektokyo2013_logo.png



 <セットリスト>

01. 『Summertime』
02. 『Fly Me to the Moon』
03. 『Cry Me a River』
04. 『花と小父さん』
05. 『ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー』
06. 『別離(わかれ)

07. 『Smile』 by 日野皓正

08. 『You'd Be So Nice to Come Home To』 with 日野皓正
09. 『雨の慕情』 with 日野皓正

10. 『ただそれだけのこと』
11. 『五木の子守唄〜いそしぎ』
12. 『枯葉』
13. 『ステーションホテル24時』
14. 『Johnny Guitar』

アンコール: 『舟唄』 with 日野皓正



――私が八代亜紀さんの魅力にきちんと気が付いたのは、
実に恥ずかしいことながら、昨年(2012年)、
ユニバーサルミュージックから『夜のアルバム』という
八代さん初となるジャズアルバムがリリースされてからのこと。

これほどの国民的歌手ですから、
さすがにその歌の上手さは存じ上げていたし、
一端に「八代亜紀の出ない『紅白』なんて面白くもなんともない!」
なんてごくごく自然に感じてはいましたが、
まあ、言ってしまえば、それ以上、
「八代亜紀の世界」に私が深入りすることはなかったのですよね。

そんな私でしたが、昨年、『夜のアルバム』を聴いてみて、
もうすっかり“シンガー・八代亜紀”にメロメロになってしまった。
当然、八代さんの歌うジャズだけではなく
これまで歌ってこられた演歌も気になるようになり、
昨年末、テレビ番組で歌われた『人生の贈りもの』(2011年発売)に
私はしみじみと感動させられることになるのです……。


同じテレビ番組で八代さんがおっしゃっていた
「この年齢になると、これからはもう『惚れた腫れた』よりも
 若い世代に向けて『人生』を歌いたいと思うの」的なコメントからは、
私がこのタイミングで“八代亜紀”に出会った意味を感じたなぁ……。



――それでもって、今夜のコンサートですが、
ちょっとやそっとのことじゃ忘れられないような、
私の胸に深く刻み込まれる素敵なコンサートとなりました。

こんなに舞台に聴き入ったのは、
一昨年(2011年)1月に開かれた立川談志師匠の落語会以来。
ここがどこで、いまが何時で、私が誰で……
そんなことを意識する瞬間を持たされないほどの、
実に神々しいライヴ・パフォーマンス。
自分のすべてが舞台に惹き付けられ、
私は一種の放心状態にさせられるのを感じました。

放心状態にさせられていたので、
具体的な感想は特にありません(笑)。
強いて言葉にするのなら、「スゴかった」とか「シビれた」とか
「カッコよかった」とか「ヤバかった」とか、そんな言葉になってしまう。

冒頭からゾクゾクさせられましたが、中でも
『花と小父さん』と『You'd Be So Nice to Come Home To』は、
聴いていて胸がいっぱいになりました。
日野皓正さんとセッションした『雨の慕情 (JAZZ Ver.)』、
『舟唄 (JAZZ Ver.)』も最高にカッコよかった。
『五木の子守唄』(日本の民謡)から『いそしぎ』(ジャズ)に行って、
最後はまた『五木の子守唄』に戻ってくるのなんて、面白すぎ!
音楽に「ジャズ」も「演歌」もないんだ、と感じさせられたなあ。



今月20日に日本コロムビアからリリースされた
Mr. SOMETHING BLUE 〜Aki's Jazzy Selection〜』は
既発曲をセレクトしたアルバムですが、
“シンガー・八代亜紀”の魅力を味わうのにうってつけの一枚。

Mr.SOMETHING BLUE  ~Aki's Jazzy Selection~ / 八代亜紀 (CD - 2013)

『花 <ブーケ> 束』『あの日の昭和がここにある』のような
“八代亜紀”を感じる名曲がジャズアレンジされていほか、
あの大貫妙子さん作詞の『あなたとふたり』が怖ろしいほど美しいです。
『空に星があるように』ではたまらない気持ちにさせられるし、
『Unchained Melody』なんて聴いていて鳥肌が立つほどの出来栄え。

「ジャズ」とか「演歌」とかいうジャンルにこだわることが
いかにもったいないことかを知らせてくれるアルバムですし、
ファン歴激浅の私が申し上げるのもアレですが、
“シンガー・八代亜紀”史上最高のアルバムだと思います。

ちなみに、『Fly Me to the Moon』は
『夜のアルバム』収録ヴァージョンではなくて、
2001年のアルバム『MOOD』に収録されたヴァージョン。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』予告編で使われたヴァージョンです(嘘)。



――というわけで、今夜は、
舞台上の八代亜紀さんに心を奪われた一夜となりました。
ニューヨークでの公演でも、きっと多くの観客を魅了することでしょう。

重たくないのに、チャラくはない。
庶民的なのに、品がある。
優しさとともに、強さが(は)ある。
どんな人の心にも一筋の光を照らしてくれる八代亜紀さんの歌声に、
私ももう少し頑張ってみようかなと思えた、そんな夜でした。

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2013年03月21日

『セレステ∞ジェシー』公開決定! アンディ・サムバーグの正体に迫る


来る5月25日より、日本の映画館で
セレステ∞ジェシー (原題:Celeste And Jesse Forever)』
というアメリカの映画が公開されることになりました。



セレステ(♀)とジェシー(♂)は、誰もが羨む理想的な若夫婦。
二人のあいだには何の問題もありません。
しかし、セレステは「永遠に友達でいるために」と離婚を提案。
離婚後も隣の家同士で暮らしますが、“不自然な離婚”をしてから、
セレステはジェシーの大切さを実感するようになり――
――というのが、映画『セレステ∞ジェシー』の大雑把なあらすじ。

まあ、たしかに面白そうな映画ではあるけれど、
私がこの映画を絶対に無視できない理由は、
設定やストーリーやプロットというよりも、そのキャストにあります。

……セレステ役のラシダ・ジョーンズ?
――まあ、それなりに好きな女優さんではありますが、
私はこの女優さんのファンと自称するほどのレベルではない……。
そうです、私が大好きなのは、ジェシー役のアンディ・サムバーグです!


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……「そんなやつ知らない」というそこのアナタ、
そう、紛れもないア・ナ・タのために私はこの文章を書いています。
『セレステ∞ジェシー』の予告編を見る限り
「期待の若手俳優」「落ち着いた青年俳優」という枕詞が似合いそうな
アンディ・サムバーグの“正体”を、アナタにぜひ知っていただきたい!



結論から申し上げます。
アンディ・サムバーグは、単なる“おバカな下ネタ野郎”です。
もう少しだけ上品に言うなれば、“おバカな下ネタ王子”です。

『セレステ∞ジェシー』の予告編に騙されてはいけません。
たしかに、こういう二枚目
(もしくは二枚目半)的な演技もできてしまうアンディですが、
その“正体”は、米国民的バラエティ番組
『サタデー・ナイト・ライブ』で一躍人気者となった
――しかも、下ネタ満載のミュージックビデオやコントで人気者となった――、
おバカで下品なのにどこかニクめないコメディアンなのです。



アンディ・サムバーグ(Andy Samberg)は、
1978年8月18日、カリフォルニア州バークレーに生まれました。
一度はカリフォルニア大学サンタクルーズ校に入学しますが、
その後、ニューヨーク大学に編入して“実験映画”を専攻します。

2001年、友人のアキヴァ・シェイファー、ヨーマ・タコンヌとともに
3人組のコメディグループ
ザ・ロンリー・アイランド (The Lonely Island)」を結成。
2005年に動画投稿サイト「YouTube」が開設されると、
さっそくそこにお手製コント動画などをアップして、
アメリカのネットユーザーのあいだでちょっとした話題となりました。

そんな折、彼らに目を付けたのが、
天下のNBC『サタデー・ナイト・ライブ』(以下『SNL』)です。
すぐに、3人はグループとして番組にレギュラー出演するようになります
(ただし、アキヴァとヨーマは放送作家としての参加がメインとなり、
 番組にレギュラー“出演”するのはアンディがメインとなりました)。

2007年には、アキヴァ監督、アンディ主演で
ホット・ロッド めざせ!不死身のスタントマン (原題:Hot Rod)』
なんていう、大いに笑えて、元気になれて、
最後ちょっとだけジーンとするという傑作コメディ映画まで作られました
(ちなみに、この映画にはヨーマもアンディの弟役で出演しています)。



この3人組が『SNL』で人気が出たのは、
『SNL』で、自分たちのコーナー『SNL Digital Short』を持ったから。
このコーナーは、YouTubeの動画のように
数分程度のクリップ(中身はコント)が流れるというコーナー。
……まあ、コント番組としては、あって当たり前のコーナーですね。

その中で、ザ・ロンリー・アイランドの魅力が発揮されたのは、
なんといっても“架空のミュージックビデオ”にあります。
曲自体はクールなのに、歌詞が下ネタだったり、
変態的だったり、不謹慎だったり、バカバカしすぎたりするという、
そんな“ミュージックビデオ”です。
しかも、『SNL』という歴史的長寿番組が有す権威(?)が発揮され、
『SNL Digital Short』には大物スターたちが続々とゲスト出演。

こうして、愛嬌のある“下ネタ王子”は、『SNL Digital Short』で
アメリカのお茶の間の人気者となっていったのです。

アンディは、『SNL』出演と並行して、『40男のバージンロード』
『くもりときどきミートボール』『モンスター・ホテル』などの映画にも出演。
これらのメジャー作品では、
主演作の『ホット・ロッド』よりかは抑えめの演技を見せていましたね。

2012年5月、アンディは『SNL』を“卒業”し、
現在は、イギリス・BBC Three のシットコム(コメディドラマ)
『Cuckoo』に、おバカなヒッピー風(?)青年役で“主演”しています。

明らかに活動の幅がワールドワイドに広がり、
「お茶の間で人気の若手コメディアン」から
「アメリカを代表する実力派コメディアン」に進化したアンディ。
このままいけば、ジム・キャリーやアダム・サンドラーのような
押しも押されもせぬ「国際的コメディ俳優」へとなっていくことでしょう。

(以上、日本語版 Wikipedia と重複する箇所が多いですが、
 そのページを執筆したのが他ならぬ私なのでご容赦ください……。)



ザ・ロンリー・アイランドの“架空のミュージックビデオ”については、
white-screen.jp という映像紹介サイトが
だいぶ丁寧に特集を組んでくれています(特集ページはこちら)。

しかし、あの名曲もこの迷曲も紹介されている、というわけではない!
――ということで、これから、ごく簡単に
ザ・ロンリー・アイランドのバカバカしくも素晴らしき
架空のミュージックビデオ(+おバカなコント)の数々をご紹介します。



★"Dick in a Box" featuring Justin Timberlake (2006年)

愛する人からのクリスマスプレゼント。あなたはナニが欲しいですか。
アンディと共に歌っているのはジャスティン・ティンバーレイク。
この曲で、2007年のエミー賞音楽賞歌曲部門を受賞しました(マジ)。



★"Laser Cats! 2" (2007年)

楽曲ではなく、『SNL Digital Short』で放送されたコントです。
猫を武器に、宇宙を守れ!
高校や大学の映画研究会テイストがいかんなく発揮されています。
アンディの相棒となる戦士(?)役を演じているのはビル・ヘイダー。



★"People Getting Punched Right Before Eating" (2007年)

これも楽曲ではなく『SNL Digital Short』で放送されたコント。
文字通り、人々が食事を始めようとすると殴られるというだけの動画です。
でも途中でフェイントが挟まってたり、超展開のオチが付いていたりします。



★"Jizz In My Pants" (2008年)

とても敏感で、とても早漏な男子たちが主人公。
彼らは繊細だから、ちょっとしたことで下着内に射精してしまうのです。
私はこの曲でザ・ロンリー・アイランドを知り、ファンになりました。



★"I'm on a Boat" featuring T-Pain (2009年)

この曲を解説するなら、「ボートはいいね」。
その一言に尽きます。



★"Like a Boss" featuring Seth Rogen (2009年)

この動画を見ると、つくづく「ボスって大変だなあ」と思います。
だって、自分で自分のナニをしゃぶったり、
デボラの机の上に吐いたり、ロシアを爆撃しなくちゃいけないんだよ?
結局、セス・ローゲンさんはボスの苦労を理解してくれたんでしょうかね。



★"Motherlover" featuring Justin Timberlake (2009年)

みんなママが大好き。
というか、ママ世代が大好き。
友達のママと楽しいコトしちゃおう。



★"Cool Guys Don't Look at Explosions" (2009年)

アンディが司会を務めた「MTVムービー・アワード」授賞式で上映。
「映画の中のヒーローは、爆破シーンで振り向かない」。
ウィル・フェレル&J.J.エイブラムスがゲスト出演しています。
攻撃性を抑えつつ風刺精神を発揮するアンディはただものじゃない。



★"Great Day" (2010年)

妙にハイになっている男性。鼻の周りには白い粉が……。
往年のディズニーミュージカルソングを思い起こさせる傑作MV。



★"Shy Ronnie 2: Ronnie and Clyde"
 featuring Rihanna (2010年)


誰だって、リアーナの前で歌えって言われたら照れちゃうよね。
ましてや、銀行強盗しながらラップやれって言われたら恥ずかしいよ……。
リアーナがその場を立ち去ったら、大声で歌っちゃうけどさ。
――そんなシャイな男心を鮮やかに描いた一本。



★"I Just Had Sex" featuring Akon (2010年)

みんなでヤろうぜ!!
セックスって最高だぜ!!
少子化対策にうってつけの一曲。



★"Stumblin'" (2010年)

コケ続け、コケ続け、そしてコケ続ける男の物語。
……物理的な意味で。
一緒にコケ続けているのは、『40歳の童貞男』でおなじみのポール・ラッド。
あのポール・マッカートニー(本人)もゲスト出演しています。



★"The Creep" featuring Nicki Minaj (2011年)

あなたを“ヘンタイさん”の世界にご招待。
男子更衣室のロッカーに隠れてのぞき見しちゃおう。
ご案内役は、悪趣味変態映画の名匠=ジョン・ウォーターズです。



★"Jack Sparrow" featuring Michael Bolton (2011年)

人間誰しも、昨晩見たものに感化されちゃうことがありますよね。
ましてやそれが壮大な海賊男の物語だったら、ね……。



★"3-Way (The Golden Rule)"
 featuring Justin Timberlake and Lady Gaga (2011年)


レディー・ガガが「3」という数字の素晴らしさを教えてくれる、
『セ×ミストリート』的教養にあふれた一曲。



★"Who Am I" (2012年)

『SNL』もザ・ロンリー・アイランドも関係ない、
旅行系企業のコマーシャル動画です。
シリアスっぽい演技もできるところをアピール。



★"100th Short" (2012年)

『SNL Digital Short』放送100回を記念して、
同コーナーに登場したキャラクターたちが総出演!
これぞまさに『SNL Digital Short』の集大成です。
アキヴァがジャスティン・ビーバーの真似(……?)をしていますね。



★"Cuckoo" (2012年 - )

2012年5月に『SNL』を卒業したアンディ。
すぐに英・BBC Three で主演シットコム『Cuckoo』がスタートしました。
髭まで生やしちゃって、大物コメディアンの風格が漂っています。
“アメリカのおバカ”の象徴=アンディですが、
動画からは、UKコメディの世界観に馴染んでいる様子が伝わってきますね。



★"Meet Andy. See his Windows Phone" (2012年)

これまたザ・ロンリー・アイランドとは関係がありませんが、
アンディが出演した「Windows Phone」のTVコマーシャルです。
アメリカではアンディが国民的タレントであるという事実が読み取れます。



★"YOLO"
 featuring Kendrick Lamar & Adam Levine (2013年)


ザ・ロンリー・アイランド、待望の新曲。
「人生は一度きりなんだ、刺激を避けて生きていけ」。
少し大人になったアンディたちが、ティーン世代に
これからの世の中をどう生きていけばよいか教えてくれます。



★"Andy Samberg Monologue" (2013年)

アンディは、独立系映画の祭典である
「第28回インディペンデント・スピリット賞」授賞式で司会を務めました
(ある意味、アンディも“独立系映画出身者”といえますね)。
全体的にかなり皮肉の効いたモノローグとなっております。
まず最初にイジったスターは、悪趣味映画の巨匠=ジョン・ウォーターズ。
過去に共演もしたし(『The Creep』)、尊敬されているのも分かっているから、
イジられた側のジョン・ウォーターズも嬉しそうです。



★"BOTTLECAP (Indie Film Trailer)" (2013年)

「インディペンデント・スピリット」授賞式で上映された架空の映画予告編。
いかにも“独立系映画”っぽい感じで始まり、悲惨(笑)なラストを迎えます。



★"BEAST IT" (2013年)

同じく、第28回インディペンデント・スピリット賞で上映されたコント。
ジャック・ブラック扮する“「ケダモノになれ」男”に翻弄されています。
NBC『レイト・ナイト・ウィズ・コナン・オブライエン』で有名になった、
コメディ系俳優のジャック・マクブレイヤーも本編後半に登場するよ〜。



――この他にもご紹介したい動画は山ほどあるのですが、
いい加減このへんで一旦終わりたいと思います。
私は動画を紹介するためにこの世に生まれた奴隷じゃないので。

さて、ここまで動画をご覧いただいた方々なら、
ザ・ロンリー・アイランドの楽曲、
および アンディ・サムバーグの携わったコント動画が
「箱入り性器」「猫銃」「無差別殴打」「下着内射精」「早漏」
「ボート愛好」「机上排泄」「睾丸切断」「熟女専」「ハリウッド映画揶揄」
「覚醒剤」「強盗時勃起」「セックス礼讃」「永続転倒」「のぞき」
「死姦」「海賊崇拝」「3P」「引きこもり推奨」「希少物破壊」などの
反社会的・反道徳的・非倫理的・超変態的なテーマを
いかに恥ずかしげもなく、真正面から、メインエントランスから
肯定的に描いてきたのか、お分かりいただけたのではないでしょうか
(「ボート愛好」はそれほど変態的ではないかもしれないが)。



ところが! ところが、です。
5月25日に『セレステ∞ジェシー』が日本公開されるにあたり、
これまでアンディ・サムバーグのことを知らなかった日本の女子たちが、
映画本編やら予告編やらを見てしまって
「アンディ・サムバーグってかっこいい!」と思う可能性が出てきました。

ええ、たしかにアンディ・サムバーグはイケメンですよ。
でもね、上記ミュージックビデオを一つでも鑑賞してご覧なさい!
アンディ・サムバーグが、
そして彼が中心となって運営する「ザ・ロンリー・アイランド」が
いかに反道徳的で変態的なのか、
いくらカッコいい欧米白人にメロメロになりやすいア・ナ・タだって、
分からないはずはないでしょう!

『セレステ∞ジェシー』(またはその予告編)を見て
アンディに惚れそうになっている日本の女子たちに警告します。
あなたが好きになりかけているアンディ・サムバーグは、
偽物のアンディ・サムバーグです。それは作られたサムバーグです。

本物のアンディ・サムバーグとは、
不謹慎で、非常識で、しかも下ネタをこよなく愛する、
ただの “変態王子” “下ネタ王子” なのです!
マイク・マイヤーズと比べるとイケメンで、
なんとなく育ちのよさ(らしきもの)が滲み出ているだけ。
Don't be deceived, 騙されないで!

どうか引き続き、ジェームズ・フランコや
アンドリュー・ガーフィールドの追っかけでもやっててください!
『セレステ∞ジェシー』でアンディを好きになったとしたら、
そのピュアなハートは絶対、後で裏切られることになりますから!
――それともアンタ、
好きな男の過去ならどんな過去でも受け入れるような、
そこまでの包容力のある寛容な女性なのか? ……違うだろ!

アンディ・サムバーグは、笑いのためならすぐに脱ぎます。
「変態キャラを演じることが多い」とか
「演じるのが上手い」とかじゃなくて、アンディそのものが変態なんです。
後になって、「『セレステ∞ジェシー』の頃はよかったんだけどねえ……」
みたいな頓珍漢なことを言わないように。
アンディ・サムバーグの“正体”は、そもそも“変態”なんですから。
ファンになるなら、覚悟してファンになってください。
「もう自分は“変態”の男性に魂を売ってしまったんだ」と覚悟して――。



アンディに絶望させられる女子(あるいはゲイ)の発生を防ぐために、
少々キツい物言いをさせていただきました。
私は、もうこれ以上、
ミーハーな女の子(あるいはゲイ)の絶望顔を見たくはないのです。

最後に、一言だけ言わせてください。
アンディ・サムバーグは、
いま、世界で最も面白いコメディアンの一人です。
本当ならこの台詞は、遅くとも3年前には言っていなければいけなかった
(でも、言うきっかけがなくて3年かかっちゃった)。
きっと3年後にも同じ台詞を言えるだろうと思っています。

アンディ・サムバーグ――。
それは、単なる“おバカな下ネタ王子”の名前であると同時に、
いま、世界で最も面白いコメディアンの名前です
(もちろん、「面白さ」などというものは個人の主観にすぎませんが)。



★アンディ・サムバーグ写真館はこちら★
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2013年03月16日

もう“なんでもない噺”とは呼ばせない… 心打つ、馬石版『甲府ぃ』


今日は、鈴本演芸場 3月中席 夜の部へ行ってきました。
『馬石渾身九夜』と題して、隅田川馬石師匠が主任を務めています。

ちなみに、この興行が『――九夜』と名付けられているのは、
18日(月)は馬石師匠が休演するためです(代バネは白酒師匠)。

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 <本日の番組>

開口一番:(前座) 三遊亭多ぼう 『狸の恩返し』
落語:(代演) 柳亭市弥 『牛ほめ』
太神楽曲芸:翁家勝丸
落語:五明楼玉の輔 『生徒の作文』
落語:蜃気楼龍玉 『親子酒』
粋曲:柳家小菊
落語:(代演) 春風亭一之輔 『あくび指南』
落語:五街道雲助 『辰巳の辻占』

 〜お仲入り〜

漫才:ホームラン
講談:(代演) 宝井琴調 『清水次郎長伝 -小政の生い立ち-』
奇術:アサダ二世
落語:(主任) 隅田川馬石 『甲府ぃ』



★多ぼう 『狸の恩返し』
歌る多門下の前座さん=多ぼうさん。
他の落語家さんと比べて、
子狸の可愛さがより際立っていたように感じます。
札が札持ってきちゃうところで、「『狸の恩返し』」とサゲていました。

★市弥 『牛ほめ』
昨年(2012年)二ツ目に昇進した、市也改メ“市弥”さん。
丁寧に『牛ほめ』という噺の面白さを引き出していました。
小金治師匠の「古典落語というものは、教わった通りにやれば
 それで十分に面白くなるものなんだよ」という言葉を思い出します。

★勝丸
「日光は相輪塔」や傘回しなどの太神楽曲芸。
今日はお客さんがたくさんいたので、
“クリスティ”コールもちょこっと発生してました(笑)。

★玉の輔 『生徒の作文』
おなじみの客数ネタ(「普段の寄席は……」)から始まり、
日本人の宗教観念マクラを振ったかと思いきや、
十八番の『生徒の作文』でした。
姉のデートに付いていく小学生男子の作文が一番面白いなあ。

★龍玉 『親子酒』
龍玉師匠の『親子酒』からは、いつも、
大旦那がいかに酒好きなのかが伝わってきます。
熱燗のように、じんわぁーりと。
一本で終えられない人が「あともう一本だけ」と言ったって、
あともう一本で終われるはずがない……。

★小菊
小菊師匠の声は本当に美しい。
「花は口実 お酒は道具 酔ってしまえば出来心」――
――披露される都々逸の数々も、実に楽しい。

★一之輔 『あくび指南』
白酒師匠の代演で一之輔師匠が登場。
「白酒さんは今朝方、息を引き取りました」
というフォローなしのご挨拶の後(素晴らしい!)、
常識人に活躍の場が与えられない落語『あくび指南』へ。
「ウチ、建ててます」のフレーズがキマりにキマってます。
観客の期待はいつだって高いのに、
一之輔師匠は、いつだって期待以上の落語を聴かせてくれる。
21世紀の落語界に一之輔師匠がいてくれてよかった。

★雲助 『辰巳の辻占』
仲入り前は、本日の主任=馬石師匠のお師匠さんである雲助師匠。
雲助師匠の『辰巳の辻占』は何度も聴いているけど、
聴く度に新たな面白さを発見します。
今夜は、なぜかしら、冒頭のゲン公とおじさんの会話が可笑しかった。
ちなみに、完全なる余談ですが、下戸のゲン公が飲んだものを、
雲助師匠は「番茶」、当代(11代目)馬生師匠は「牛乳」でやっています。
演者のセンスだなあ。どっちもそれらしくて好き。

★ホームラン
歌舞伎ネタを中心に、観客バカウケの夜でした。
どうでもいいけど、勘太郎先生の中山服(人民服)姿を見て、
落語芸術協会の真打昇進記者会見(2013年3月12日)
同じような服装で出席した夢丸師匠を思い出してしまった(画像)。

★琴調 『清水次郎長伝 -小政の生い立ち-』
三之助師匠の代演で、琴調先生による『小政の生い立ち』です。
カッコいい、シビれるような講談。
次郎長にもこれまで色んなことがあったんだろうなあ、
と感じさせられるような、そんな一席でした。

★アサダ二世
今夜の手品は、アサダ龍光先生が御前公演したという「パン時計」。
私がこれを見るのは初めてです。
「しょせん手品ですから」と言いつつ、やってることはスゴい。
サッと主任につなぐところなんざ、色物芸人としてカッコよすぎます。

★馬石 『甲府ぃ』
この芝居が「芸術祭新人賞受賞記念」であることに簡単に触れると、
すぐに、ネタ出しされている『甲府ぃ』に入ります。
私はこれまで、『甲府ぃ』という噺は
好きな噺ではあったけど、“なんでもない噺”だと思っていました。
今夜、私のその認識は、馬石師匠によって改められました。
私は、『甲府ぃ』に関しては“鑑賞ポイント”みたいなものを持っていて、
それぞれの演者がそこをどう演じるかによって、
「この人の『甲府ぃ』はいいな」とか
「この人の『甲府ぃ』はちょっと」みたいなことを勝手に判断しています。
以下、憶えている範囲で、
私の“『甲府ぃ』ポイント”を馬石師匠がどう演じていたか、
列挙してみます(当然ネタバレとなっておりますので、ご注意ください)。
@卯の花を盗み食いした善吉のことを、主人は別に咎めない。
 ただし、善吉を殴った金公のことも必要以上には責めない。
A盗み食いが起きた時、「ここ(路上)で話すのはよくないだろうから」と、
 善吉をすぐに豆腐屋(室内)に連れて行き、そこで話を聞く。
B話を聞いた主人は、
 「お腹が減る苦しさは経験した者しか分からない」(大意)と、
 自分と女房が豆腐屋を始めたばかりの時のエピソードを話し出す。
 〈――主人と女房は、若い時分、遠方の出先で金をなくした。
  江戸まで歩いて帰ろうとしたが、あまりにもお腹が空いてしまい、
  帰る途中、海に飛び込み自殺することすら考えた。
  フラフラになって、ある店の軒先に腰を下ろしたところ、
  店から番頭が出てきて「どうしたのか」と尋ねてくる。
  恥ずかしくて「お腹が空いた」とは言えず、
  「お腹が痛い」と言ってしまった。
  それを聞いた番頭は「それは大変だ。
   今、丸薬を持ってくる」と店に引っ込んで行った。
  空腹時に丸薬など飲んだらそれこそ大変、胃が飛び出てしまう。
  どうしようかと思っていると、
  店から番頭が大きな握り飯を持って出てきた。
  その番頭は「さあ、お食べなさい」と言う。
  自分の心の中を見透かされているようで、
  恥ずかしいやら、情けないやらだった。――〉
C「法華」という表現はせず、主人は
 「私も“願かけ”をしたことがある。その縁かもしれないね」と話す。
D金公は、田舎の都合で豆腐屋をやめる(田舎に帰る)。
E善吉とお花は結婚し、しばらくしてから、夫婦で一緒に
 “願ほどき”+甲府のおじおばに会いに行く(と申し出る)。
 「留守の間は隠居した私たち夫婦に店を任せろ」と、主人たちは言う。
F町の女性たちが、旅姿の善吉とお花に「どこに行くのか」と尋ねる。
 善吉「甲府ぃ〜」、続けてお花が「お詣りぃ〜、願ほどき」。
――正直に申し上げて、私はこの馬石版『甲府ぃ』は、
他の『甲府ぃ』なんかとはまったくレベルの違う、
『甲府ぃ』の限界を突破した“最強の一席”であると感じました。
馬石版『甲府ぃ』を聴く前、私は
「馬石師匠の“善吉”はハマり役だろうな」ぐらいには思っていましたが、
この馬石版『甲府ぃ』、そんなものではなかった。
「キャラがニンにハマっている」とか「少し工夫していた」とか
「現代の客向けにアレンジしてた」とかいうレベルではなく、
「噺を一旦壊した上で再構築している!」というほどのものでした。
それはまるで、「『甲府ぃ』に欠けているものはなにか」
「『甲府ぃ』が“なんでもない噺”だと思われている理由はなにか」
という疑問から逆算して導き出した“答え”であるかのよう。
志ん生師匠の型を踏襲した、サゲの演出(F)も素晴らしい。
たしかに、善吉じゃなくてお花さんのほうなら、
シャレで「お詣りぃ〜、願ほどき」って言いそうだもんね
(少なくとも、その下地はF以前で整えていました)。



――とにもかくにも、今夜は
馬石師匠に『甲府ぃ』の面白さを教えてもらった夜となりました。
今夜聴いた馬石版『甲府ぃ』では、
登場人物一人ひとりの“人生の背景”が浮き上がっていました。

とりわけ心を打たれたのが、主人が善吉に
「私も腹を空かせたことがあるから分かる。
 あの苦しみは、腹を空かせたことのある者にしか分からない」
と優しく語りかける、Bの場面。

そうなんだよなあ。
人間、生きてくる中で、
苦しんだり悲しんだりすることは何度もあるはずなのだけど、
いざ自分が苦しみの渦中から抜け出してしまうと、
苦しんでいる人を“上から目線”で審判することがある(人がいる)。
自分だって経験したことがあるはずのことなのにね。
もしくは、ないならないで、静かに想像するぐらいはできるのにね。

そこいくと、
何らかの“当事者性”が人生に深く刻み込まれている人間は強い。
他人の苦しみや悲しみを、「自分の話」として共感することができる。
でもそれは、人生に“中途半端に”刻み込まれているんじゃダメなんだ。
人生に“深く”刻み込まれていないとダメなんだ
(それは、もしかしたら“トラウマ”と呼ばれるものかもしれない)。
本当に苦しい時、人間は中途半端なメッセージでは動きようがないから。



――あったかく、そして、やさしく。
聴く者の心をさらっと癒してくれる馬石師匠の『甲府ぃ』。
この感じ、誰かの落語に似ているなあ、と思ったら、
ほかでもない、馬石師匠の大師匠=先代(10代目)馬生師匠でした。

辛いこと、苦しいこと、理不尽なこと。
色々あった、その全部を引き受けたがゆえの「やさしさ」が、
“馬生”と“馬石”で重なり合った夜――。
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