2013年02月26日

「奇特な二人」 柳澤愼一 大いに語る、寒空はだか 大いに聞く


今日は、北沢タウンホール スカイサロンで開かれた
『下北沢襤褸糞市 トークライブ「奇特な二人」
 柳澤愼一 大いに語る V.S. 寒空はだか 大いに聞く』
に行ってきました。

kitazawa_yanagisawa_and_hadaka_program.jpg


私がひそかに敬愛してやまない柳澤愼一さん。

福祉活動の“資金稼ぎ”をするために
1950年代からジャズ歌手として進駐軍キャンプを廻り、
俳優として150本以上の映画に出演されました。
テレビドラマ『奥さまは魔女』日本語吹き替え版
“ダーリン”役でおなじみの声優さんでもあります。

近年は犬童一心監督の『メドン・ド・ヒミコ』(2005年)、
三谷幸喜監督の『ザ・マジックアワー』(2008年)にも出演。
そして、2000年に出版された著書
明治・大正スクラッチノイズ』(文芸社、文庫版はウェッジ文庫)が
これまた面白すぎるほど面白い!

あれはたしか小学生か中学生のころだったか……、
“エノケン生誕100周年イベント”で「口ラッパ」を吹く柳澤さんに、
まだ純粋な少年であった私は胸をときめかせたものです。



そんな柳澤愼一さんのお話を
おなじみの寒空はだかさんが大いに聞く、ということで、
これに行かないなんてことはパイのパイのパイというのもの。

第一部では、
ご隠居風の格好で、わざとボケ老人っぽく柳澤さんが登場し、
あまりにも貴重すぎるエピソードの数々を話してくださいました。
箇条書きでいくつか書き留めておくと……、
★北方領土問題はむずかし
★歴史は「点」ではなく「線」で見ないと
★日劇は1日3ステージ、でも午前中は遊びまわる
★『奥さまは魔女』『アイ・ラブ・ルーシー』再放送への不満!
★昭ちゃん(小沢昭一さん)の想い出
★エノケン・志ん生・文楽から愛された
★ボウリング日本代表
★ナンシー梅木はアメリカへ
★三國連太郎&西村晃と… 日活時代の過酷な日々
★『ザ・マジックアワー』で三國の息子・佐藤浩市と共演

休憩を挟んで、第二部。
柳澤さんはご衣裳を洋装にお変えになって、
はだかさんとのデュエット
(『月光値千金』の替え歌)でオープニングを飾り、
その後、いくつか名曲を披露してくださいました。
★『リンゴの木の下で』オリジナル版(恋愛ソング)&日本語版
★神長瞭月の『ハイカラソング』『スカラーソング』『自転車節』
★『すみれの花咲く頃』
★『私の青空(“My Blue Heaven”)』
などなどを、素敵なご解説を交えながら。
エンディングで再び『月光値千金』の替え歌を歌って、本日は終了。



前半のはだかさんとのトークでは、
エノケン(榎本健一)、5代目古今亭志ん生、8代目桂文楽といった
もはや“歴史上の人物”である方々との交流を、
お歴々の物真似をしながら語ってくれたことが印象深かったです。
笑っちゃうしかないほどの、物凄い可愛がられよう。

なにしろ、柳澤さんはエノケンさんから
「お前を二代目に」と指名されたほどのお方ですからねえ。
あの『最後の伝令』のコントにも出演なさっているんですから!
日本喜劇史、アチャラカ史的にも偉大な人物でございます。

それから、バスター・キートンを引き合いに出しての映画論。
箱根駅伝で「自分は『山の神』というより……(以下自粛)」と
話したとかいう大学生ランナーのエピソードも(笑)。

生前、小沢昭一さんは『新潮45』に
「この前、愼ちゃん(柳澤さん)の
 『私の青空』を聴いてブルッちゃったよ」
とお書きになっていたそうですが(ご本人談)、
その『私の青空』を何年かぶりにまた聴けたのも嬉しかったなあ。
やっぱり、柳澤さんの歌声はどこから攻めても素晴らしい。



二枚目にもなれる、三枚目にもなれる。
もちろん“二枚目半”なんてお手の物。
最高にスマートで、抜群に魅力的な柳澤愼一さん。

まだまだ取り組んでいきたいことがあるそうなので
(6月には成城ホールでコンサートを予定しているとのこと!)、
柳澤さんにしか作れないロマンチックで朗らかな“時空間”に、
私も観客の一人として付き合わさせていただければ幸いです。

いやあ、それにしても幸せな夜でした。
「幸せ」っていうのは“時間”と“空間”のことですね、ホントに。




(アレ……、もう一人の本日の主役、
 寒空はだかさんに関しては最後まで触れずじまいに……。
 ――なんだか「ついで」みたいな文章になっちゃいますが、
 本日のトークライブ、
 はだかさんのちょっぴりスタンダップコミックも面白かったし、
 そしてなにより柳澤さんへのリスペクト精神が伝わってきて
 寒空はだかさんはやっぱりイイなあ、と思った次第です。)
posted at 23:59 | Comment(0) | TB(0) | 演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする |

2013年02月21日

さながら“電気風呂”? しあわせと過激さの共存する雲水落語


今日は、日暮里サニーホール コンサートサロンで開かれた
『第278回サニーホール落語会
  雲水独演会』へ行ってきました。
落語立川流所属の上方落語家、立川雲水師匠の独演会です。

unsui_dokuenkai_20130221.jpg


 <本日の番組>

開口一番:(前座) 立川笑二 『出来心』
落語:立川雲水 『代書』

 〜お仲入り〜

落語:立川雲水 『付き馬』



★笑二 『出来心』
最近、その高座に遭遇することが多い笑二さん!
前座さんながら、いつでもセンスの光る笑いを届けてくれます。
こと「笑い」という部分に関して、
個人的にものすごく信頼している落語家さん(の見習い)です。
上手いし、面白いし、これから絶対人気が爆発するだろうなあ。

★雲水 『代書』
雲水師匠の高座は、まずマクラが面白い。
今日も、阪神・淡路大震災発生時の
 “窓ガラスの割れた中学校”をめぐるエピソードやら、
ロシアの隕石の話題やら、
経験談&時事ネタ満載で、大いに笑わせてくれます。
その後、「江戸時代は、意外と『教育格差』がなかったのでは」
「逆にこれからの日本は『字が書けない子ども』が増えるのでは」
という大変に鋭いご指摘の後、作者のハッキリしている落語として、
上方落語の名作『代書』(作:4代目桂米團治)をおかけになりました。
頓珍漢な男とのやり取りにはじまり、
近所の老いた旦那、お隣の国の人などが登場、
最後には旦那のところの丁稚が登場するという「フルヴァージョン」。
いやあ、ボリュームたっぷりの滑稽噺で面白かった。
ちなみに、この落語を『代書屋』として東京に移植したのが、
何を隠そう、雲水師匠のお師匠さんである談志師匠。
そんなことを思うと、余計に感慨深い『代書』でした。

★雲水 『付き馬』
仲入り後は
「私は、演目名は『代書屋』じゃなくて『代書』としています」
という雲水師匠の解説(?)の後、
これまた談志師匠の十八番であった『付き馬』へ。
しかし、そこは上方落語の雄=雲水師匠、
舞台を上方を移しての『付き馬』です。
騙す男は「人生シャレで生きてる」といった感じのキャラクターで、
騙される“若い衆”の生真面目さとの凸凹コンビぶりがおかしかった。
江戸落語『付き馬』のシャレっぽさと、
上方落語でおなじみ“二人組スタイル”の見事なコラボレーション。
素敵なものを見させていただきました。



――というわけで、
とっても楽しく、“しあわせ感”に満ちていた雲水師匠の落語会。

私はもともと上方落語にはあまり馴染みがなかったのだけど、
雲水師匠や笑福亭たまさんのおかげで
上方落語にも興味を持つようになりました。

雲水師匠に関していえば、
とにかくサービス精神いっぱいに、マクラから大いに笑わせてくれる。
噺に入っても、“雲水視点”でユーモアを提供してくれる。
東京の客にも上方落語の面白さを教えてくださる、
素晴らしい落語家さんだと思います。
雲水師匠の高座と出会うことがなかったら、
私は上方落語の面白さには気付くことがなかったかもしれません。

色んなことをしばし忘れて、
観客を“しあわせ感”に浸らせてくれる雲水師匠の高座。
それでいて、
全身にビビッと電流の走るような過激なギャグも飛び出してきますから、
“電気風呂”のような雲水師匠の落語からは目を離せません。
posted at 23:59 | Comment(0) | TB(0) | 落語・笑い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする |

2013年02月20日

明るくて、清潔で、最高に笑える! 「昇々落語」の決定版=『明烏』


今日は、お江戸日本橋亭での
『第20回 さなぎの会』へ行ってきました。

落語芸術協会所属、期待の二ツ目による
ネタ出し&ネタおろしの落語会です。
11代目(当代)桂文治師匠プロデュース。

sanagi_no_kai_201302.png


 <本日の番組>

開口一番:(前座) 雷門音助 『つる』
落語:桂文治 『代り目』
落語:柳家小蝠 『一文笛』

 〜お仲入り〜

落語:三笑亭可女次 『王子の狐』
落語:春風亭昇々 『明烏』



★音助 『つる』
開口一番は、雷門助六門下の前座=音助さんで『つる』。
「つる」の由来を説明し損なう時、
八五郎が完全に無言にならず、
「ンググッ」と発音してしまうところが特徴的だなあ。
助六一門の伝統なのだろうか。

★文治 『代り目』
続いて、この会のプロデューサー=文治師匠が登場。
「近頃の世の中はギスギスしているけど、
 せめて落語はのんびりとありたい」といったお話の後、
クレジットカードの勧誘にまつわるマクラ。
今夜のネタは『代り目(『替り目』)』で、
亭主が実は女房のことを大事に思っている、
という部分の描写が、人情味があって特によかったです。

★小蝠 『一文笛』
マクラで、2代目円歌師匠の
“金時計の中身だけ盗まれた”エピソードを紹介して、
もはや古典となった『一文笛』(作:桂米朝師匠)へ。
『一文笛』は2代目桂春蝶師匠ヴァージョンを聴いたことがあるけど
(実は、私は、上方落語家では2代目春蝶師匠が最も好きなのです)、
小蝠さんの『一文笛』も、優しさの伝わってくる高座で素敵でした
(まあ、春蝶版と小蝠さんのネタおろし版を較べるのは酷ですね)。

★可女次 『王子の狐』
仲入り後は、個人的に注目の可女次さんで『王子の狐』。
可女次さんらしく、ダジャレ満載の『王子の狐』でしたが、
「もう一歩、二歩、奥へと進むダジャレ展開」で、
可女次さん、面目躍如の一席でした。
もうすっかり“可女次さんの噺”になっているといった印象。
面白かったなあ。また聴きたいし、他の噺ももっと聴きたい。

★昇々 『明烏』
本日のトリは、我らが(?)昇々さんです。
しかも、ネタは『明烏』。
実は、昇々さんの高座を何度か拝見するうちに思ったのが、
「昇々さんで『明烏』を聴いてみたいなあ。
 おそらく昇々さんに『明烏』はピッタリだろう」ということ。
そして今夜の、(個人的に)満を持しての『明烏』、
期待通りの、いや、期待以上の『明烏』でした!
時次郎の生真面目っぽさ&弱々しさが
マンガの登場人物のようにポップに表現されているばかりでなく、
“札付きのワル”2人組のキャラも面白おかしく描かれている。
途中、時次郎が泣き出す(+あとの2人は怒る&笑う)シーンは、
まさに“昇々らしさ”全開の演出。“ザ・昇々”。
甘納豆付きでありながら、そこに「大ネタ」という重荷はない。
完全に“昇々ナイズ”されていて、それが見事にハマっている。
「あそこがちょっとなあ」みたいなところが、一切ないのです。
これぞ、私の見たかった「昇々落語」の決定版だと感じました。



――というわけで、小蝠さんの『一文笛』は優しく、
可女次さんの『王子の狐』も面白かったけど、
今夜の“記憶”はなんといっても、昇々さんの『明烏』です。

昇々さんの『明烏』は、明るくて、清潔で、最高に笑える。
昭和の名人=
 8代目桂文楽師匠の十八番であったという重みを感じさせない、
それなのに
見終わった後に爽快な充実感を客にもたらしてくれる、
あまりにも素晴らしい一席でした。

昇々さんが『明烏』をかけるということで
それなりの期待を抱いて見に行ってしまった私ですが、
その期待を遥かに超える高座を見せてくれた昇々さんに、
心から大きな拍手を送りたいです。

『お見立て』やら『初天神』やらを見た時にも感じたことですが、
昇々さんは、古典落語の名作を
昇々さんならではのテイストに染め変えるのがとっても上手い。
しかも、それがいずれの場合にも成功している。
こういう落語家さんは、きっと
「(技術的に)上手い」という評価をされにくいのだろうけど、
私に言わせれば、昇々さんは「上手くて+面白い」落語家です。
「上手くて+面白い」落語家さんであることは
以前から気付いていたし、だからこそ応援していたけど、
いやあ、まさかここまで「上手くて+面白い」とは……、
正直、私は分かってませんでした。

昇々さんの『明烏』は、紛れもない「昇々落語」です。
「『明烏』を昇々さんがやってみた」、なんかではありません。
この落語家にしかできない、この落語家だけの噺になっている。
いやあ〜、昇々版『明烏』を見ちゃったら、
もう他の落語家の『明烏』は見ていられないなあ(←挑発!?)。
――いくらなんでも褒め過ぎだとお思いでしょうが、
はっきり言って、これでも言葉が足りないくらいなんですよ。
posted at 23:59 | Comment(0) | TB(0) | 落語・笑い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする |
(C) Copyright 2009 - 2017 MITSUYOSHI WATANABE