2012年07月14日

百栄×(ひねくれた視点+まっとうな“愛”)=百栄『夫婦漫才』


今日は、(社)落語協会2階で行われた
春風亭百栄師匠の月例勉強会へ行ってまいりました。

このブログによると
私が百栄師匠の高座を拝見するのは、昨年10月以来、約9か月ぶり!
大ファンの落語家さんのはずなのに……
いつのまにかこんなにあいだが開いてしまいました。
自覚症状はなかったです。



 <本日の番組>

落語:春風亭百栄 『怪談話しベタ』
落語:春風亭百栄 『馬のす』

 〜お仲入り〜

落語:春風亭百栄 『おさき・甚兵衛 夫婦漫才』



★百栄 『怪談話しベタ』(新作)
2010年4月の独演会 でも拝見した、百栄師匠の新作落語。
学校の男友達が集まって「怖い話」を次々披露していくが、
「怖い話を知っているぜ!」と強がる“青木クン”は
実はあんまり話に自信がないようで……、という物語です。
設定だけ、古典落語『おつとめ』と似ていますね
(『おつとめ』は百栄師匠の持ちネタでもあります)。
一昨年聴いたときは「正直微妙……」と感じましたが、
今日聴いたら細かいところで笑うことができました。

★百栄 『馬のす』(古典)
『怪談話しベタ』に続く、“じれったい系”落語。
昔、圓丈師匠らと一緒に釣りに出かけた
(その帰り道、2人きりの電車内で
 円丈師匠に“新作落語界”入りを誘われたそうな!)
というマクラから、釣りの場面がない釣りの噺『馬のす』へ。
先代文楽師匠の“逃げ噺”とのことですが、私は初めて聴きました。
こういう珍品落語を聴かせてくれるので、百栄師匠は素晴らしい。
百栄師匠は、「(こういった“じれったい系”の噺は)
 いかにお客さんが我慢して聴いてくれるか、だ」と
お話しされていました(笑)。

★百栄 『おさき・甚兵衛 夫婦漫才』(新作・ネタおろし)
休憩後は、ネタおろしの新作落語です。
「おさき・甚兵衛」という“江戸っぽい”夫婦が
お金に困った挙句、「東洋館」で夫婦漫才師デビューするという物語。
漫才の場面は劇中劇(?)みたいな感じですが、
本当は漫才なんかやりたくない
しっかり者の“おさき”が暴走してしまいます。
「お前さん……! お前さん、ちゃんと働いておくれよッ!!」と
舞台上で“おさき”が叫ぶシーンに爆笑。
しかしながら、後半、
ひねくれた視点からのまっとうな“夫婦愛”の物語になっていきます。
「お前さんがいい人になっていくたんびに、
 うちは家財道具がなくなっていくんだよ……。
 頼むから、お前さん、いい人にならないでおくれよ」(大意)
という“おさき”の台詞に、笑いながらも、
なんだか心の奥の変なところがジーンときてしまいました。



――というわけで、
“生高座”としては久しぶりに拝見した百栄師匠でしたが、
やっぱり、百栄師匠の落語は定期的に摂取しておかないと!
おかしな「百栄落語」を長いあいだ聴かないでいると、
逆にアタマがおかしくなってしまいます。

個人的には『馬のす』という珍しい噺を聴けたのがよかったし、
新品の新作落語『夫婦漫才』も
不思議な感覚で楽しませていただきました。
百栄師匠の落語は“視点”こそ異常で歪んでいるのだけど、
実は、人間の“まっとう”な感情を描き出しているんだよなあ。
どうしても、「百栄落語」では“視点”ばかりが目立ってしまうけど。

“非日常”の視点で、“日常”の心情風景を抽出して表現する――。
「百栄師匠の独創性」+「落語という芸能の奥深さ」がなせるワザです。
posted at 23:59 | Comment(0) | TB(0) | 落語・笑い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする |

2012年07月03日

独特な新作&マンガ風味の古典… だから「昇々落語」は面白い!


今日は、なかの芸能小劇場で開かれた
『第四回 昇々ひとり会』へ行ってきました。
(と言いながら、このエントリは数日後に書いております……。)

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昨年(2011年)4月、
二ツ目に昇進した春風亭昇々さんの独演会シリーズ。
今回で通算4回目となりますが、私は、
1回目は日時の都合が悪くて行けず、
2回目は台風の影響で首都圏の鉄道各線が完全ストップしたため行けず、
でも、3回目の前回からは皆勤です(←なんだそりゃ)。
まあ、それ以外の会でも昇々さんの高座を観てはいるのですが……。

今回のゲストは、
2回目のゲストでもあった昔昔亭A太郎さんでした。



 <本日の番組>

落語:春風亭昇々 『お父さん』
落語:昔昔亭A太郎 『不動坊』
落語:春風亭昇々 『友達』

 〜お仲入り〜

落語:春風亭昇々 『ちりとてちん』



★昇々 『お父さん』(新作)
マクラでは、今回の『ひとり会』でも雨が降ってしまったことや、
後輩の柳亭明楽さんにまつわる爆笑エピソードが語られました。
噺のほうはというと――、家の中でいつでもドレス姿の母。
母の服装を注意する息子、
その息子の服装を注意する父親、
その父親の服装を注意する娘、
そして、その娘の服装を注意する母親の一言がサゲ。
噺自体は奇抜な展開というわけではないけど、
楽しく聴くことができました。

★A太郎 『不動坊』
先日転んでケガをしたという最高顧問(桂米丸師匠)イジリ。
A太郎さんが米丸師匠のことを「新作の神様」と称していたのが
まあ本心ではないにしても(笑)、なぜだか嬉しかった。
ネタは、古典落語『不動坊(不動坊火焔)』。
こんな馬鹿げた感想もないのですが、
昇々さんが“お笑い的”な口調だとしたら、
A太郎さんは“落語家的”な口調です。
なので、そういう意味では、古典落語を安心して聴かせてくれます。

★昇々 『友達』(新作)
友達がいない高校生が、お父さんの協力を得て(?)友達を作る噺。
昇々さんの新作落語としては、
生徒と先生』とこの噺が最高です!
もしかしたら、昇々さんは
“学校系”“友達いない系”の新作を作るのが上手いのかもしれない。
いや、絶対そうだ。だって、聴きながら何度も何度も笑ったもの。
マクラでの「住居に恵まれない」エピソードも可笑しかったなあ。

★昇々 『ちりとてちん』
仲入り後は、昇々さんが黒紋付で再登場。
『昇々ひとり会』での昇々さんは、
古典を演る時に黒紋付を着るのですよね〜。
演目は、昨年(2011年)7月の
二ツ目昇進披露落語会」でも拝見した『ちりとてちん』。
あの時、昇々さんの『ちりとてちん』を観て
(この落語家さんは面白い! 応援したい!)と私は思ったのです。
約1年ぶりに見る“昇々版『ちりとてちん』”でしたが、
昇々さんが高座でも語っていたように、
キャラクターのハチャメチャ加減が
昨年のものより格段にパワーアップしていて、
大爆笑の一席に仕上がっていました。



――『ちりとてちん』をサゲた昇々さんが
高座で語ったところによると、
本当はこの日、結果としては間に合わなかったけれども、
ある古典落語を一席ネタ下ろしする予定だったんだとか。

前回の『昇々ひとり会』では
古典落語『お見立て』が初披露されましたが、
これまた面白かったんだよなあ。
こんなこと書くと
“落語通”の方々から嘲笑(わら)われてしまうかもしれないけど、
私は、昇々さんの『お見立て』が、
全落語家中、最も好きな『お見立て』です。



これも昇々さんが高座で語っていたことですが、
昇々さんはお客さんから
「もっと古典をやって!」と言われることも多いらしく、
『ひとり会』での新作と古典の配分をどうしようか
悩むこともあるのだそう。
たしかに、私自身、
昇々さんの新作と古典を(ムリヤリ)天秤にかけると、
相対的には古典のほうが好き……なのかもしれない……。

これまでに聴いた昇々さんの古典落語は
『ちりとてちん』と『初天神』と『お見立て』だけですが、
どれもものすっっごく面白かったし、
“この演者ならではの古典落語”になっていると感じました。
一言でいうなれば「超!マンガチック」な、
明るくて面白くて読後感のよい落語です。
だから、もっともっと昇々さんの古典を聴きたいなあ、
といつも思うのは事実。

でも、それと同時に、昇々さんが「新作落語」というものに対して
並々ならぬ“情熱”を抱いていることも、
なんとなくですが存知上げています。
個人的に、前回の『ひとり会』で観た『生徒と先生』、
そして今回の『友達』は、
“昇々オリジナル”の新作落語として一級品だと思います。
わがままな客で申し訳ありませんが
私は、昇々さんを「新作」でも「古典」でも楽しみたい。

昇々さんの「新作」は、いい意味での(?)気持ち悪さが光っているし、
「古典」は、明るく楽しくマンガ的で
エンターテインメント性に満ちあふれている。
それでいて、昇々さんの落語は
さわやかな“読後感”をもたらしてくれる。
――そんなわけで私は、
新作も古典もひっくるめて「昇々落語」が大好きなのです。

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< P.S. >
今回、私は落語を初めて聴く(!)方をこの会にお誘いしたのですが、
昇々さんの新作落語をとりわけ楽しんでいらっしゃいました。
以前から思っていたのですが((c)矢口真理)、
昇々さんは「落語初心者」の方にもってこいの落語家さんだと思います。
だって、こんなに
明るく、楽しく、分かりやすく落語を“魅せて”くれる――。
それでいて「実際に面白い」という落語家さん、
なかなかそうはいやしませんぜ!
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