2011年11月30日

上手くて面白い高座にメロメロ! 馬石師匠の『三軒長屋』


今日は、池袋演芸場で開かれた
「第五回 奮闘馬石の会」へ行ってきました。

funto_baseki_201111.jpg


馬石師匠は、
どんな時も江戸前な古典落語を聴かせてくれる実力派。
私が大好きな落語家さんです。

「奮闘馬石の会」は、
馬石師匠が“大ネタ”に挑む独演会のシリーズで、
前回は7月の公演ということもあり、
怪談噺の『牡丹燈籠』を演じてくれました。
今回のネタ出しは、『三軒長屋』。
客席はたくさんの“馬石ファン”でにぎわっていました。



 <本日の番組>

開口一番:(前座) 古今亭半輔 『たらちね』
落語:隅田川馬石 『時そば』
寄席の踊り:隅田川馬石 『奴さん』『かっぽれ』
落語:隅田川馬石 『三軒長屋(上)』

 〜お仲入り〜

落語:隅田川馬石 『三軒長屋(下)』



★半輔 『たらちね』
開口一番は、古今亭志ん輔門下の前座、半輔さん。
前座さんとは思えないほどの、上手さ、面白さ!
かゆいところに手の届く姿勢に、とても好感度を持ちました。
将来、確実に人気者になると思います!(もうすでに人気者かも?)

★馬石 『時そば』
緑の着物で登場、馬石師匠による『時そば』です。
マクラでは、「“食券の出るそば屋”が自分は好きで、
 今の自分に合っていると思っている」というお話。
名古屋の“食券そば屋”に行った時の爆笑エピソードも聴けました。
『時そば』は、この季節にうってつけの噺ですが、
馬石師匠バージョンは、実に絶品。
余計なところは何もない、伝統的な面白さを、
会話と所作、両面からほぼパーフェクトに演じ切っています。
間違いなく、馬石師匠の十八番の一つだと称えます。

★馬石 寄席の踊り
毎夏、浅草演芸ホールで「住吉踊り」を披露している馬石師匠。
今夜は、赤いステテコを履いて、
『奴さん』と『かっぽれ』を踊ってくれました。
特に、『かっぽれ』での一回りする箇所がお見事!
踊りが上手い落語家さんは、無条件に信用できます。

★馬石 『三軒長屋(上)』
続けて、早着替えで『三軒長屋』の前半。
馬石師匠が大好きだというこの噺、
狭い長屋に三軒の家(@若い衆の喧嘩で毎晩うるさい“頭”の家、
 Aジジイ商人のお妾さんの家、 Bへっぽこ侍の剣道道場)があり、
「頭の家」と「剣道場」に挟まれた「妾の家」が、
両サイドからの騒音に悩まされ――、というストーリーです。
「頭のおかみさん」のチャキチャキの江戸っ子言葉が心地よく、
テンポよく笑いが生まれます。
みるみるうちに噺の世界に引き込まれ、
心地よさと面白さが重なり合う素敵な高座に、メロメロとなりました。
あと、マクラで「三軒長屋の真ん中=新幹線3列シートの真ん中」
という解説をなさっていて、“なるほど”と感心しました。

★馬石 『三軒長屋(下)』
仲入り後は、黒紋付きを羽織って登場した馬石師匠による、
『三軒長屋』の後半部分です。
「A妾の家」のジジイ商人がその場しのぎの嘘をついたことから、
「@頭の家」の頭と、「B剣道場」のへっぽこ侍が動き出します。
そして、ジジイ商人に“反撃”をするのですが、
これがまたユニークな“反撃”で、見ていて本当に面白い!
“『三軒長屋』って、こんなに面白い噺だったのか!”と思いましたが、
それは、馬石師匠がたしかな腕を持っているからなんですよね。
江戸っ子の風情を感じる、実に完成度の高いこの『三軒長屋』に
爆笑しながら、感激しながら、最高のサゲでもって、今夜の会はお開き。



――これまで何度も馬石師匠の高座を観に行っていますが、
僭越ながら、今夜の高座はとりわけ素晴らしいものでした。
先日亡くなった立川談志師匠は
「第一に上手くなければ、面白くはならない」
というようなことをおっしゃっていましたが、
馬石師匠は、身をもってそのことを証明しているかのようです
(上手いから面白い、という面で)。

上手くて、たしかな腕を持っていて、
細かいところにも工夫が施されていて、なにより面白い。
それが馬石師匠です。
「ちょっと持ち上げすぎでは?」と思う人がいるかもしれませんが、
今夜の『三軒長屋』を観たら、そんな言葉じゃ足りないぐらいです。

もちろん、何をもって「上手い」かは
観る者一人ひとりの主観にしか拠らないのですが、
私は、馬石師匠が
“次代の名人”と呼ばれる日が間違いなく来ると確信しています。

ま、これも結局のところは「好き嫌い」なのかもしれませんが……。
でもそれなら、私はこれから先もずっとずっと、
馬石師匠のことを「好き」でいたいと思います。
posted at 23:59 | Comment(0) | TB(0) | 落語・笑い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする |

2011年11月27日

“談志の弟子”の矜持を見せた 「談吉二ツ目披露の会」


今日は、ムーブ町屋で開かれた
「立川談吉 二つ目昇進披露の会」へ行ってきました。

dankiti_2tsume_hirou.jpg

上野広小路亭の「立川流夜席」で前座のころの高座を見て以来、
私は談吉さんのことがかなり気になっていて、
今回の会は、談吉さんの二ツ目昇進を記念しての落語会です。

私が前売りを予約したときは“空席8割”という状況だったそうですが、
“談志効果”もあってか(!?)、当日フタを開けてみると大盛況、
当日券に並ぶお客さんが出るほどの大入り満員ぶりでした。



本日の番組


開口一番(前座):立川春樹 『浮世根問』
落語:立川談修 『宮戸川』
落語:立川キウイ 『悲しみにてやんでい』
落語:立川談笑 『片棒・改の改』

〜お仲入り〜

落語:立川左談次 『町内の若い衆』
落語:立川談吉 『鼠穴』
三本締め:談吉、左談次、キウイ、談笑、談修



★春樹 『浮世根問』
談春門下の前座、春樹さんによる『浮世根問』。
今日のような会の開口一番はプレッシャーがかかりそうなものですが、
春樹さんは落ち着きながら、しっかりと高座をこなしていました。

★談修 『宮戸川』
ご自身の芸名にまつわる談志師匠とのエピソードを語った後、
聴いていてなんとも心地の良い『宮戸川』へ。
この噺は、さわやかな艶やかさがあって大好きです。
談修さんの“半七”は好青年ぶりが際立っており、江戸の空気の中で、
美男美女のラヴ・ロマンス――寄りの笑い話が展開されました。

★キウイ 『悲しみにてやんでい』
「談志 最後の真打ち弟子」となったキウイ師匠。
家元とのエピソードで、いつも以上に客席を盛り上げます。
やっぱり私は、キウイ師匠の高座は大いに笑えるから大好きだなあ。
春風亭昇太師匠から許しを得ての、ネタおろし『悲しみにてやんでい』。
主人公を本日の主役・談吉さんにして、
昇太師匠の新作落語をリメイクです。
途中で談志師匠を登場させるのは、さすが!
程の良い自虐ギャグも含めて、
キウイ師匠の楽しそうな高座姿にこちらも楽しくなります。

★談笑 『片棒・改の改』
マクラでは、「桂南光襲名披露パーティー」楽屋での
“5代目柳家小さん VS 立川談志”奇跡のバトルマッチが語られました。
このお二方は、やはり親子のような関係だったんでしょうね。
そしてネタに入った談笑師匠ですが、今夜の『片棒・改』は一味違う。
なんと、「金・銀・鉄」が、「談笑・志らく・談吉」に!
もちろんお父っつぁんは……、言わずもがなです。
今夜しか見られないであろう、特別バージョンの『片棒・改』。
「落語家に“喪”はない」という談笑イズムの正統性が、
客席の爆笑によってしっかりと裏付けられた夜でした。

★左談次 『町内の若い衆』
仲入り後は、左談次師匠が風格のある飄々さで登場。
話芸に安心感がありながら、
どこか危険な香りのする左談次師匠は、とっても素敵な落語家さんです。
「トリの談吉は、この後『鼠穴』をやるそうです」と前もって宣言、
「この後、本当に『鼠穴』を演ってしまってよいだろうか……」と
楽屋で悩んでいたという談吉さんを、高座から後押しする優しい師匠です。
左談次師匠の『町内の若い衆』は、「えひめ丸」だとか
「100円ショップのダイソー」だとかの固有名詞を織り込みながらも、
これまで見たどの『町内の若い衆』よりも面白くて江戸前なものでした。

★談吉 『鼠穴』
待ってました! 新・二ツ目、談吉さん。
左談次師匠の宣言(?)通り、家元の十八番であった『鼠穴』をかけます。
私は談吉さんの『鼠穴』を聴いて、2度、全身に鳥肌が立ちました。
1度目は、
“鼠穴”への目塗りを怠ったために、すべての蔵が焼け落ちる場面。
2度目は、竹次郎が吉原に娘を売るものの、金を盗まれ首を括る場面
(正確には、「もういいや、もういいよ」と独り言を言う場面)。
談吉さんご自身の持つ誠実さが、ピッタシと竹次郎にハマっていました。
サゲは談吉さんオリジナルかと思いますが、分かりやすくてよかったです。
噺を終えた後は、
最後まで談志師匠のそばにいた弟子だから語れる、壮絶な逸話。
「(俺の最期を)お前だけは見届けてくれよ」という言葉は、
家元が亡くなってまだ一週間も経っていない今、あまりにも重すぎます。
「これから“談志最後の弟子”と称われ続けることになるだろう、
 だが、どんな時も“最後の弟子”としてふさわしい落語家でありたい」
という旨の談吉さんの宣言には、胸を打たれました。
「俺は“談志最後の弟子”だーっ!」という
高座からの叫びにも心揺さぶられ、
最後は師匠方全員そろっての三本締めで、晴れやかに会は終わりました。



――というわけで、談志師匠が亡くなってから
私としては初めて伺う落語会、そして、立川流の会でしたが、
出演された落語家さん全員(春樹さん除く)が家元の思い出を語りながらも、
「あくまでメインは“噺”だよ」と主張するかのごとく、
それぞれのスタイルで
力強くネタをかけていらっしゃったのが、印象的でした。

「談志を偲ぶ」ではなく「師匠、見ててください」という落語会。
師匠が死んだことだけをフィーチャーするのではなく、
そこのニーズに応えながらも、
落語家としての情熱的な部分を見せてもらったような気がします。
そしてこれこそが、
“談志の弟子”としての矜持なのかなあ、とも感じました。

だから、キウイ師匠が新ネタ、それも昇太師匠の新作落語をやったのは、
とても前向きなメッセージだったと思います。
本日の主役・談吉さんの『鼠穴』は
本当に思い入れの詰まったものだったし、
見ている私の心にもストレートに“思い”がぶつかってきました。



家元が死んでも、家元の弟子が死んだわけではないのだ。
家元が死んでも、家元のDNAが、
DNAを表現する絶対的手段としての
“立川流落語”が死んだわけではないのだ。
むしろ、ここから生かせて、活かせていかなければならないのだ。
――そんなことを、この素晴らしい落語家さんたちに感じさせられました。

最後に、談吉さん、二ツ目昇進おめでとうございます。
これからも応援させていただきます!
posted at 23:59 | Comment(2) | TB(0) | 落語・笑い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする |

2011年11月24日

家元の訃報に接して


 ずっと覚悟はしていましたが、訃報を聞いて、用意していた言葉もすべて吹っ飛んでしまいました。
 よく、「“昔の”談志は上手かった」などと言う人もいますが、実際には、師匠の落語は常に進化し続けていたと思います。
 師匠の落語は、観客の知的好奇心を刺激させるものばかりで、中でも私が大好きだったのは『人情八百屋』、『黄金餅』、『らくだ』、『代書屋』、『火事息子』――、ああ、とてもじゃないけど挙げたらキリがない!

 ふと思い出すのは、ちょうど十年前、志ん朝師匠が亡くなった時期に談志師匠が高座でおっしゃっていた言葉――、
 「死んじゃったんだから、『死んでよかった』ということにしてあげないと、しょうがない。なまじ『もったいない』なんて言ったら、出てこなくちゃならない。出てこられりゃいいけど、出てこられないのだし……」(『立川談志プレミアム・ベスト落語CD集 「五貫裁き」』)。

 古今東西、誰よりも落語を愛した方でした。
 不世出の天才落語家であり、芸術家であり、哲学者だった談志師匠のご冥福をお祈りします。

201111211424.jpg
posted at 12:00 | Comment(0) | TB(0) | お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする |
(C) Copyright 2009 - 2017 MITSUYOSHI WATANABE