2011年10月27日

“今が人生で一番素晴らしい” 哲学的で明るいジェリー・ハーマンの世界


ケネディ・センター名誉賞授賞式で披露された
メル・ブルックス トリビュート・メドレー(2009年)に続き、
ジェリー・ハーマン トリビュート・メドレー(2010年)にも
日本語字幕を付けてみました。



ジェリー・ハーマン(1931年生まれ)は、
米国のブロードウェイミュージカル界を代表する作詞・作曲家です。
2010年12月、ケネディ・センター名誉賞を受賞しました。

この動画では、ジェリー・ハーマンの代表曲(のごくごく一部)が
豪華な役者たちの歌とダンスによって展開されています。
相変わらず映像の画質が悪く、私の誤訳や超訳も目立ちますが、
ジェリーの打ち出した世界観は伝わるかと思います。
(あまり画質は向上しませんが、480pでの視聴を推奨しておきます。)



マイアミ大学卒業後の1954年にオフ・ブロードウェイの「レビュー」
(=物語よりも歌やダンスに重きを置いたミニ・ミュージカル集)
『I Feel Wonderful』でデビューしたジェリーは、
1960年、『From A to Z』でブロードウェイに進出します。
翌年には、イスラエルが舞台の『Milk and Horney』を手がけました。

ジェリー・ハーマンの初めての歴史的ヒット作は、
1964年の『Hello, Dolly! (『ハロー・ドーリー!』)』です。
このミュージカルの主演はキャロル・チャニング。
90歳の現在も、「生きる伝説」として精力的に活動しています。

1966年には、映画女優のアンジェラ・ランズベリーを主演に据えて
『Mame (『メイム』)』を上演しました。
これが、ジェリーにとっては2作目の歴史的ヒット作となりました。
ランズベリーは、1991年の映画『美女と野獣』のポット夫人役や
『ジェシカおばさんの事件簿』シリーズのジェシカ役でも有名です。
彼女は、1969年の『Dear World』でもジェリー作品に起用されました。

1974年には映画界を舞台にした作品『Mack & Mabel』を発表し、
1983年には自身3作目の歴史的ヒット作となる
『La Cage aux Folles (『ラ・カージュ・オ・フォール』)』で
この年のトニー賞オリジナル作曲賞を受賞しています。

しかし、1985年にHIVポジティヴと診断されたことをきっかけに
ジェリー・ハーマンは表舞台からフェードアウトしました。
'80年代後半〜'90年代には、彼の名曲メドレー公演も上演され、
CBSのテレビドラマ『Mrs. Santa Claus』(1996年)や
キッズ向け映画『Barney's Great Adventure』(1998年)では
主題歌を作詞・作曲するなどしましたが、
ジェリーが再びミュージカルを制作することは永らくありませんでした。

そんなジェリーが久しぶりに手がけた新作ミュージカルが、
2005年の『Miss Spectacular』です。
主演候補はクリスティーン・バランスキーで、
コーラスガールがラスベガスの一流スターになるまでを描いた物語。
ところが、上演を予定していた劇場が
製作途中で売却されてしまうという最悪のアクシデントに見舞われ、
結局、新作ミュージカル『Miss Spectacular』は
一度も上演されることのないまま“お蔵入り”となってしまいます。

失意の中にあったジェリーを救ったのが、
2010年の『ラ・カージュ・オ・フォール』のリバイバルヒットでした。
ブロードウェイでは過去の名作を再演することが恒常的ですが、
21世紀版『ラ・カージュ』はナンバーに現代風アレンジを施し、
作品の世界観をより力強く、より華やかにすることに成功したのです。

ディズニー/ピクサーの3Dアニメ映画『ウォーリー』(2008年)では、
『ハロー・ドーリー!』の楽曲2曲が使われています。
何でも、この映画の主人公であるウォーリーは、
『ハロー・ドーリー!』が好きな掃除ロボットという設定なんだそうです。



ケネディ・センター名誉賞の「トリビュート・メドレー」では、
ジェリー作品の“2大女優”とでも呼ぶべきキャロル・チャニングと
アンジェラ・ランズベリーが珍しく共演しているほか、
未上演に終わった『Miss Spectacular』に参加するはずだった
クリスティーン・バランスキーが出演しています。
そんな「楽屋裏」な観点からも、この動画を楽しむことはできますね。

ちなみに、この動画内で「02:19〜」から共演している
クリスティーン・バランスキーとクリスティーン・エバーソールは、
別の年に上演された『Mame』で、それぞれ主人公“メイム”を演じました。
この動画では、“2人のメイム”が共演している姿を見ることもできます。

キャロル・チャニングもアンジェラ・ランズベリーも
2人の「クリスティーン」も『ラ・カージュ――』には出演していませんが、
彼女たちが『ラ・カージュ――』の主題歌を歌うフィナーレは
独立しているはずのジェリー作品を横軸でつなぐ大団円のようで、
観ているだけで自然と鳥肌が立ってくる感動的な光景です。

この「トリビュート・メドレー」動画を観ると、
ジェリー・ハーマンという人物がいかに天才であるかがよく分かります。
これほど哲学的で楽観“主義”的な歌詞を、
明るくてなじみやすいメロディーに乗せて表現してしまう――。
とりわけ、今回の「トリビュート・メドレー」動画では
ローラ・ベナンティの『Time Heals Everything』(03:31〜)と
チタ・リヴェラの『I Don't Want To Know』(06:50〜)が圧巻です。

――世の中に「天才的」な人物はそれなりにいるとしても、
「天才」と呼べるほどの人物は一握りほどしかいません。
少なくとも私にとって、ジェリー・ハーマンはその中の一人です。
(もちろん、コメディ作家のメル・ブルックスもその中の一人です!)



Lansbury-Herman-Channing.png
1968年のトニー賞授賞式にて。
左からアンジェラ・ランズベリー、ジェリー・ハーマン、キャロル・チャニング。
1人の天才ソングライターと、彼の作品を代表する2大女優。


Rivera-Lansbury-Channing.png
2010年のケネディ・センター名誉賞授賞式にて。
左からチタ・リヴェラ、アンジェラ・ランズベリー、キャロル・チャニング。
黒、白、赤の衣装は『Mame』(1966年初演)から。
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2011年10月01日

秋を感じる珍しい噺 『さんま火事』を百栄師匠で


今日は、黒門亭で開かれた
春風亭百栄師匠の月例勉強会へ行ってきました。

本日のネタは
ネタおろしの新作落語1本と、珍しい古典落語1本。



新作落語 のほうは、
「寄席演芸学院 初等科」の
3年生・ヒデアキくんが問題行動を起こしたとして、
ヒデアキくんのお母さんが学校の先生に呼び出されるという噺。
噺の中に、実在する色物芸人さんの名前がたくさん登場してきます。

お母さんがモンスター・ペアレントになっていく展開が、
私の大好きな『マザコン調べ』(百栄師匠作)を彷彿とさせました。
でも、それよりはちょっと若そうなお母さんかな?(笑)
個人的には、“上下がふれない子ども”を正当化する母親がツボでした。



休憩後は、古典落語『さんま火事』。
「しわい屋」(しわい=ケチ)の地主を懲らしめてやろうと、
長屋の連中一同&ご隠居さんがいたずらを図る噺です。

「地主の店には蔵があるので、
 蔵が火事になると困るだろう」と考えたご隠居。
しかし、本当に火事を起こしたり、放火しなくても
「火事だー!」と叫んで町民を混乱させたら罪になってしまいます。

そこでご隠居は、長屋の連中一同で七輪を用意し、
50尾もの秋刀魚(さんま)を一斉に焼いて、
たっくさんの煙を長屋中に発生させようと考えました。
これなら、本当に火事を起こさなくても、
地主は大量の黒煙を目にして、火事が起きたと勘違いするはずです。
最後には、混乱する地主を長屋のみんなで見て笑おう、
といういたずら大作戦。

ところが、相手は一癖も二癖もある「しわい屋」。
逆に“してやられてしまう”、という噺でした。

百栄師匠は数年前まで毎年、
秋になるとこの噺を高座にかけていたそうですが、
久しぶりに今日、この噺を演ってみたとのこと。
今まで聴いたこともなかった珍しい噺ですが、
すごく独特の味わいがあって、秋っぽさを感じる楽しい滑稽噺でした。



――百栄師匠の勉強会に行くのはだいぶ久しぶりでしたが、
9月末廣亭・栄枝トリ
「休憩時間中の落語協会事務所」などのマクラを含め、
やっぱり百栄師匠には、百栄師匠にしか出せないカラーがある。
そんなことを感じました。
百栄師匠には、決して他の誰にもマネできない「芸」「笑い」があります。

しかも、ヘンにメジャーな噺ばかりでなく、
今日の『さんま火事』のような、珍しい、けれども埋まらせたくない噺を
百栄流に見せてくれる姿勢が、本当に素晴らしいと思いました。
鼻ほしい』も、百栄師匠の落語会で初めて聴いたなあ……。

これからも、やっぱり百栄師匠の落語は聴き続けていきたい。
少なくとも私にとって、
百栄師匠の落語は、どうしても定期的に「摂取」したくなる落語なのです。
posted at 23:59 | Comment(0) | TB(0) | 落語・笑い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする |
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