2010年07月30日

究極のマジキチ名作 『バード★シット』


今夜は、新宿武蔵野館のレイトショーへ行ってきた。
観てきたのは、
ロバート・アルトマン監督『バード★シット』(1970年)。
今日が上映日最終日である。
日本ではDVD化もされていない“隠れた名作”との評判だったので、
少しワクワクした気持ちで観に行った。

birdshit_01.jpg


ストーリーを簡単にご紹介しよう。
「空を飛ぶ」ことを夢見て、
野球ドームの地下室で密かに「空飛ぶ羽」を製作している青年、
ブルースター・マクラウド(バッド・コート)。
彼には、姉貴的な女性(サリー・ケラーマン)と友達的な女性がおり、
その2人が彼の“夢見る”生活を支えている。
彼は、ある老人の運転手としてアルバイトもしているのだが、
ある日、その老人が「鳥のフン」とともに絞殺されているのがみつかる。
そして、町では「鳥のフン」が付着した状態で
被害者の死体が発見されるという、連続絞殺事件が発生することに……。

こう書くとミステリー映画かサスペンス映画のようだ。
たしかに名刑事気取りの人物が出てきたり、
誰が犯人なのか分からないまま(一応)物語が進行していくので
サスペンス的な要素もあることはあるが、
しかし、この映画のキモは「鳥と人間」の関係という点にある。

まるで鳥のような人間たち。
でも、人間は鳥とは異なる。
どこがどう違うのか。決定的な違いは、ラストシーンで明らかとなる。
この映画では「鳥」という概念を持ち込むことで、
終始、非常に渇いた、不条理でブラックな笑いが展開されている。
アルトマン監督独特の世界観が、観客の想像力を凌駕していく映画だ。
観客を置き去りにしていく映画だ、と言ってもいい。
しかし、観客の心をつかむような不思議な魅力がある作品でもある。
「カルト的名作」の称号にふさわしい作品だ。
陽気だけどどこかおかしい音楽と映像の調和も素晴らしい。

実際、私はこの映画は名作だと思う。
これほど魅力を伝え難い名作もなかなか存在しない。
渇ききったシュールな世界観は、観ていてとても美しいし、
各キャラクターの魅力も抜群なものだ。
そして、通常の映画にはないエキセントリックさ(キ×ガイさ)がある。
無秩序を超えた無秩序の連続で、それなのに本編はダレない。
今回の上映チラシで、滝本誠氏が
「アルトマンの本領は脱線力にある。脱力ではない脱線力だ」
と書いているが、まさにそういうことだろう。

『バード★シット』は、ものすごいエネルギーを持つ映画だ。
だから、観る者にもエネルギーを必要とする。
実際、今夜の上映直後、私は少しフラフラしてしまった。
「観て疲れた」というよりは、心を奪われた感じで――。

同時に、この映画を見てかなり勇気付けられた。
「ああ、ここまで自由にキ×ガイじみていいんだ」と。
日頃、いかに私が整合性とかストーリー性にこだわって、
“まとも”な作品を作ろうとしているか、
“まとも”作品を作らなければならないと思っているか――。
本来、脚本の緻密さとはそういうことではないのだ。
映画は、他者への言い訳のために作るべきではない。
この作品は、そんなことを圧倒的なインパクトで教えてくれる、
究極のコメディ映画にして人間ドラマだった。
個人的には、「鳥のフン」という描写は不快だったけど(笑)。


birdshit_02.jpg


【追記】
新宿武蔵野館では7月30日(金)が上映最終日でしたが、
この作品は今後、全国で順次公開されるそうです。
たとえば、8月7日(土)からは吉祥寺バウスシアターで。
詳しくはこちらをご覧ください。
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2010年07月27日

下北沢、夏の夜。 The SALOVERS @ BASEMENT BAR


今日は、下北沢のライブハウス
「BASEMENT BAR」へ行って、
The SALOVERS」というバンドの演奏を見てきました。



普段、私はライブハウスには行かず、寄席に行くことが多いので、
若い出演者、若いお客、若い雰囲気に圧倒されてしまいます。
しかも今夜のライブは、
私が今まで行ったことのあるライブの中で、一番混んでいた。
アウェーな感じがして、なんだかソワソワしちゃいました。

The SALOVERS は、2番手での出演。
ステージを眺めていて、
「お、このバンドいいな!後でチェックしておこう」と思ったら、
それがThe SALOVERS でした。
素敵なフィーリング。
どうでもいいけど、どのバンドのボーカルも髪型似てるので、
声を聴くまで誰だか判別がつかないです、最近。

さて、今夜The SALOVERS が披露した曲は6曲でした。
1. (不明)
2. (不明 / 俺に過去などない、みたいな歌)
3. China
4. Night in gale
5. サリンジャー
6. 夏の夜

1組目の「Any」というバンドが
MCトークの構成をしっかり練っていたのと対照的に、
The SALOVERS は、ほとんどMCがありませんでした。
ライブハウスに行くと
私なんかはいつも、どうしても台本作家の性として
「MCパートの台本を書きたい!」なんて思ってしまうのですが、
MCがないのもアリなんだな……と思わされました。

無理してしゃべる必要はないのだ。
それよりも、1曲でも多く演奏したい。
みたいな気持ちが伝わってきたのは、気のせいだったでしょうか。
ま、もし私がバンドを組んだなら
出演時間の2分の1は、MCトークに充てると思いますけどね!



The SALOVERS のどこがいいかというのは
以前このブログで書いたような気がするし、
あたしゃ音楽評論家でもないので技術的なことはわからない。
口出し可能領域としては、歌詞ぐらいか。
私はどちらかというと歌詞も重視する性質なので、
曲もよくて、歌詞もよくて、みたいなバンドは最高だと思います。
っていったって、
学生バンドはSanta Coconuts とThe SALOVERS しか知らないけどね。

そんなThe SALOVERS の1stアルバム
C'mon Dresden』は、9月8日(水)発売予定です。
彼らの初期代表曲『サリンジャー』や
閃光ライオット2009で話題を呼んだ『China』も収録されてます。
ちなみに、『夏の夜』は
閃光ライオット2009のCDアルバムに収録されてます。

彼らのどの曲も私は好きです。
好きになったきっかけは、『China』だったかな?
ともかく、去年の夏ぐらいから私が大好きなバンドです。
Santa Coconuts と同様に、今後も応援していきます。

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2010年07月22日

B級アリスの金字塔? 珍作『アリス・イン・ミラーランド』


ここ数か月、毎週TSUTAYAでDVDを借り続けています。
といっても、同じDVDを借り続けているわけでもなく、
AVを借りているわけでもありません。

自宅から最寄りのTSUTAYAは
なぜか「1枚100円キャンペーン」みたいなのを続けていて、
その作戦にまんまと引っかかって私は、
毎週2〜3本、何らかのDVDを借り続けてしまっているのです。



今夜、私が観たのは『アリス・イン・ミラーランド』という映画。
正確には「映画」ではなく、
イギリスの民放テレビ局が制作したテレビ映画なんですけどね。

alice_in_mirrorland.jpg


1998年(もう12年前!)の作品で、
原題は『Alice Through the Looking-Glass』なのですが、
ティム・バートン監督の
アリス・イン・ワンダーランド』に便乗して、
この2010年、この邦題でようやく日本へ輸入されました。

余談ですが、少し前に『電車男』が日本で流行った時、
『Napoleon Dynamite』というコメディー映画が
バス男』という邦題で輸入されたことがありましたが、
今回もまったく同様の「二匹目のドジョウ」パターンです。



私は、昨年(2009年)のSRC秋番発では
『クイーン・ラズベリーの美しき悪趣味な世界』というタイトルで
『不思議の国のアリス』のオマージュ作品を作ったぐらいなので、
当然、ルイス・キャロルの原作(1865年)も
ディズニーアニメ版(1951年)などの映像化作品も大好きです。
チェコのアニメ作家:ヤン・シュヴァンクマイエルが作った
アリス』という長編映画(実写×クレイアニメ)も大好き。
ご多聞に漏れず、私も、『アリス』大好き人間の一人というわけです。

今夜観た『アリス・イン・ミラーランド』はというと、
かなり原作に忠実で、原作への「愛」も伝わってきたので、
とても楽しむことができました。

ただしこの映画、単なる「アリスの実写化」じゃないんです。
まず、物語冒頭。
娘に『不思議の国のアリス』を読み聞かせていたママが、
読み聞かせをしている途中に
鏡を通して「不思議の国」へ行ってしまいます。
ママ役をケイト・ベッキンセール(当時25歳)が演じているのですが、
『不思議の国』へ行き「アリス」となったママ(設定上は7歳)も
ケイト・ベッキンセールが演じているのです。

25歳の女性が7歳の少女役を演じているので
最初はさすがに苦笑いせざるを得ませんでしたが、
見ているうちにだんだん慣れました。
ケイト・ベッキンセールさんはまぁまぁ童顔なんですね……。



先述したように、この映画(テレビ映画)は
『不思議の国のアリス』
『鏡の国のアリス』という原作に忠実なストーリーなので、
終始、シュールな世界観がアリスを取り巻きます。

それに加えて、演出や映像処理も極めてシュール。
例えばハンプティ・ダンプティを初老の俳優が演じているので、
妙なチープさが出ていて、それもまたシュールというか……。
正直、「『アリス』を実写化するのは危険だな」と思いました(笑)。

途中、アリスと登場人物が一対一で10分弱ほど会話するシーンもあり、
「朗読劇かよっ!!」とツッコミを入れたくなりましたが、
のんびりした心持ちで観ることにしたら、気持ちが落ち着きました。
「赤の女王」と「白の女王」を演じた2人の女優さんは、
普通に好い演技をしていたなぁと思います。
脇を固める役者たちの演技力がしっかりしていたので、
突拍子のない脚本(『アリス』を原作にした以上は仕方のないこと)も
さほど気にならないというか、精神的に受け入れ可能でした。



……とはいえ、この映画は基本的には「B級映画」なので、
「『アリス』が好き!」とか、
「ケイト・ベッキンセールが好き!」
という方以外には、いまいちノりきれない作品かもしれない……。
そういう方には、ティム・バートン監督の
『アリス・イン・ワンダーランド』をおすすめします。
アクションシーンが少し余計な気もしますが、
『ワンダーランド』のほうは精密に組み立てられた娯楽映画ですから。

個人的には、私は『ミラーランド』のシュールな世界観、
嘲笑うにも嘲笑えない「B級テイスト」は好きなんですけどね。
でも、この映画を観た人が
amazonレビューに「意味不明」とか書いてたり、
星1つだったりしても、なんだかその気持ちもよく分かります。
『アリス』の実写化作品とはいえ趣向がおかしい、
「マジキチ認定」一歩手前のテレビ映画だといえるでしょう。
逆に、このドラマの内容を完全に理解できた人はアタマがおかしい。

そんなわけで、よく分からないながらも興味深い映画でした。
「『アリス』を実写化しちゃいけない!」
ということを多くの映画制作者のみなさんに思い知らせる、
という側面もありますし(笑)。
「B級臭」という点においては、この『ミラーランド』と
私が書いた『クイーン・ラズベリー』はいいとこ勝負です(笑)。

『アリス・イン・ミラーランド』をレンタルショップで見かけたら、
せめてパッケージだけ眺めてみて下さいませ。
posted at 23:38 | Comment(0) | 映画・TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする |
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